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第3章
第29話
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とりあえず、文化祭で決めた事は良いんだけども……。
「うーん……」
私が色々な青春を送ってみるとという目的は一応出来ている筈だ……特に、絵本の能力のお陰で。とりあえず、色々使ってみて思うのは失敗かも、と思う様な選択肢をあえて選んでみる事とか、もし失敗していなかったらどうなっていたのかとか。
まさにイフ、もしもの選択肢を絵本の能力で実行できているという形にはなる。……リスクは承知ではあるんだけど、そのリスクが具体的に何なのかまでは把握できていない。けれど、そんな私でもなんとなくわかるものがある。
「絵本のページが……埋まってきたなあ」
私はパラパラと絵本をめくる。そこに描かれているページはまさに、私が体験してきた出来事を映した絵ばかりだ。これは、最初にほぼ事故のような形で時間移動したあの公園のページからそうなんだけど、そこから少しずつ小さい選択肢から大きい選択肢に至るまで様々な形で活用されてきた。
けれど、そんな絵本のページがそろそろマックス……つまりは空白だったページが少なくなってきて完全に埋まりそうなのだ。
「となると、新しい選択肢は選べないって事だよね……」
これ自体は別に問題はない。ある意味、私はこの絵本を使って一番やりたかったのは『様々な青春を謳歌する』という体験そのもの。
ここまで、色々な選択肢を試してみた。藍春とのトラブル回避から、失敗した体験を違う選択肢で選んでみたり……西城との会話をそれとなく増やしていける様な方向に持っていったり。
私が違う選択肢を選ぶ事で、前とは全く違う出来事になる。まさに、私が一番知りたかったもしも違う選択肢を選んでいたらどうなっていたんだろうというものを肌身で感じられるものだったなあ、というのが私の感想だ。
けど、ページが埋まるって事はこれ以上使えるって訳でもないし、多分使い過ぎているのかも……と思う。
「まあ、使えなくなった所でもねぇ……」
私は絵本のページを閉じると通学カバンの中にしまう。
珍しく、リリーは今日はちょっと一緒に帰る余裕ないから先に帰るわ、と言ってそのまま帰ってしまったから一人で教室に残っていた。もちろん、他の友達と少し会話したりする事もあったけど他の子も帰っていった。
……まあ、午後五時前にもなったら皆帰るわな~と考えながら、私も流石に帰宅しようと通学カバンを持って教室を出ていく。最後の一人なので、鍵を締めて職員室に……。
「あれ、北野さんまだ居たんだ」
「えっ……東谷?」
教室を出るとまさかの人物と邂逅する。
「東谷、まだ帰ってなかったんだ……」
「いやあそれはこっちの台詞だよ」
厳密に言えばお互い様なんだけどね……まさか、廊下でばったりと東谷に遭遇するだなんて私は予想だにしなかった。
東谷は何してこんな遅くまで……とは言っても、そんなわざわざ言う様な奴じゃないか。
「あ、ちなみに教室はこれから私が戸締まりするので閉まります。何か用事あるなら鍵渡すけど」
「おっと、それは大丈夫。ホラ、カバンもあるし」
そう言って通学カバンを見せびらかす東谷。東谷が持っている通学カバンはぶらりぶらりと少し揺れている。
「そかそか。じゃあ心置きなく教室を締めて、職員室まで鍵を持っていくわ」
「そうかい……じゃあ僕も一緒に行こうかな」
「えっ」
何故そんな提案を? 今までこんな事無かったような……。
「何々? そこまで嫌な事?」
「あ、ううんそんな嫌だって訳じゃ。ただ意外だなって……東谷、こういうこと言うイメージ無かったし」
私はストレートに感想を伝える。……一応、悪口にはなっていない筈だ。
けれど、東谷は一瞬動きが固まる。何なら少しだけ目が見開いている様な……? けれど、それは一瞬で元通り。東谷は微笑を浮かべると。
「そっか、確かに僕は人付き合いでこういう誘いとかしていなかったかもね」
そう、何処か遠くを見るように言った。まるで、独り言の様にも思える様な言い回しに、私は何処か感じられた。
「うーん……」
私が色々な青春を送ってみるとという目的は一応出来ている筈だ……特に、絵本の能力のお陰で。とりあえず、色々使ってみて思うのは失敗かも、と思う様な選択肢をあえて選んでみる事とか、もし失敗していなかったらどうなっていたのかとか。
まさにイフ、もしもの選択肢を絵本の能力で実行できているという形にはなる。……リスクは承知ではあるんだけど、そのリスクが具体的に何なのかまでは把握できていない。けれど、そんな私でもなんとなくわかるものがある。
「絵本のページが……埋まってきたなあ」
私はパラパラと絵本をめくる。そこに描かれているページはまさに、私が体験してきた出来事を映した絵ばかりだ。これは、最初にほぼ事故のような形で時間移動したあの公園のページからそうなんだけど、そこから少しずつ小さい選択肢から大きい選択肢に至るまで様々な形で活用されてきた。
けれど、そんな絵本のページがそろそろマックス……つまりは空白だったページが少なくなってきて完全に埋まりそうなのだ。
「となると、新しい選択肢は選べないって事だよね……」
これ自体は別に問題はない。ある意味、私はこの絵本を使って一番やりたかったのは『様々な青春を謳歌する』という体験そのもの。
ここまで、色々な選択肢を試してみた。藍春とのトラブル回避から、失敗した体験を違う選択肢で選んでみたり……西城との会話をそれとなく増やしていける様な方向に持っていったり。
私が違う選択肢を選ぶ事で、前とは全く違う出来事になる。まさに、私が一番知りたかったもしも違う選択肢を選んでいたらどうなっていたんだろうというものを肌身で感じられるものだったなあ、というのが私の感想だ。
けど、ページが埋まるって事はこれ以上使えるって訳でもないし、多分使い過ぎているのかも……と思う。
「まあ、使えなくなった所でもねぇ……」
私は絵本のページを閉じると通学カバンの中にしまう。
珍しく、リリーは今日はちょっと一緒に帰る余裕ないから先に帰るわ、と言ってそのまま帰ってしまったから一人で教室に残っていた。もちろん、他の友達と少し会話したりする事もあったけど他の子も帰っていった。
……まあ、午後五時前にもなったら皆帰るわな~と考えながら、私も流石に帰宅しようと通学カバンを持って教室を出ていく。最後の一人なので、鍵を締めて職員室に……。
「あれ、北野さんまだ居たんだ」
「えっ……東谷?」
教室を出るとまさかの人物と邂逅する。
「東谷、まだ帰ってなかったんだ……」
「いやあそれはこっちの台詞だよ」
厳密に言えばお互い様なんだけどね……まさか、廊下でばったりと東谷に遭遇するだなんて私は予想だにしなかった。
東谷は何してこんな遅くまで……とは言っても、そんなわざわざ言う様な奴じゃないか。
「あ、ちなみに教室はこれから私が戸締まりするので閉まります。何か用事あるなら鍵渡すけど」
「おっと、それは大丈夫。ホラ、カバンもあるし」
そう言って通学カバンを見せびらかす東谷。東谷が持っている通学カバンはぶらりぶらりと少し揺れている。
「そかそか。じゃあ心置きなく教室を締めて、職員室まで鍵を持っていくわ」
「そうかい……じゃあ僕も一緒に行こうかな」
「えっ」
何故そんな提案を? 今までこんな事無かったような……。
「何々? そこまで嫌な事?」
「あ、ううんそんな嫌だって訳じゃ。ただ意外だなって……東谷、こういうこと言うイメージ無かったし」
私はストレートに感想を伝える。……一応、悪口にはなっていない筈だ。
けれど、東谷は一瞬動きが固まる。何なら少しだけ目が見開いている様な……? けれど、それは一瞬で元通り。東谷は微笑を浮かべると。
「そっか、確かに僕は人付き合いでこういう誘いとかしていなかったかもね」
そう、何処か遠くを見るように言った。まるで、独り言の様にも思える様な言い回しに、私は何処か感じられた。
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