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Aクラス
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◆◆◆◆◆
「遅刻しそう。急ごう、ラケール」
「Aクラスは成績重視だから、多少遅刻しても先生は大目に見てくれるさ」
学生寮を共に出たラケールが気楽に言うが、僕としては切実な問題だ。
「次期当主の座を奪われて、僕は一時期成績が落ちたんだよ。その時に、先生からクラス落ちの話があってあせったの!また成績は持ち直しているけど、油断できないからね」
王立学園のクラスは、成績により決まる。僕とラケールは、Aクラスである。学年では、Aクラスが最も優秀なクラスだ。
「Aクラスを死守している僕の苦労を、知って欲しいな。上位アルファばかりのAクラスで、上位オメガの僕はクラス落ちしない為に色々苦労しているんだよ?時には、先生にも色目を使って赤点を免れているのだから!」
僕の言葉に、ラケールが驚いて見つめてきた。
「先生に色目って、冗談だろ?」
「いや、いや、マジですよ」
「そこまで、することないだろ!Bクラスだって、アルファ性ばかりだ。クラス落ちしても、誰もルチアを馬鹿にしたりしない。それより、オメガ性のルチアが、Aクラスを維持していることを不審に思って、悪い噂が流れてる。教師達に、体を差し出して成績を維持しているとか・・色々と噂が流れてる」
「おー、そんな噂が流れてたの?まあ、体は売ってないけど、色目は使ってるから・・あながち、的はずれの噂でもないね」
僕の言葉に、ラケールが苦い表情を浮かべる。そして、苦しげに呟いた。
「Aクラスにルチアの兄貴がいるから、クラス落ちしないように、必死になっているのか?」
「さて、どうだろうね?」
「ルチア!」
そうなんだよね。アルフレート兄上とは、同じ年齢だったりする。義理の兄弟で、同じ年齢、生まれ月は僕が先。なのに、父上からは、上位アルファ性のアルフレートを、『兄上』と呼ぶようにオメガ性の僕は強要された。
正直、同じ年齢の男を『兄上』と呼ばねばならないことに、僕は腹をたてている。
なのに、アルフレート兄上と同じクラスであることを、嬉しいと感じている自分がいる。兄上に、僕の存在を認めて欲しい。そう感じている自分がいて・・少し惨めだったりする。
「とにかく、遅刻したくない!だけど、アルファ性ほど運動能力に長けてないから、クラスまで全速力で走るには、ラケールの支えが必要だよ。『運命の番』さん、僕と手を繋いで」
「オメガ性は体が弱い。全速力なんてやめろ。教師が何か言ってきたら、俺が適当に言いくるめるから。だが、『運命の番』として、ルチアをエスコートはさせてくれ」
「オメガ性が病弱だとは思わないけどなあ」
「病弱だよ。俺は心配だ」
前世が、死にかけ病弱男子だったから、オメガ性が病弱とされていることにピンとこない。だけど、ラケールの気遣いを無駄にしたくない。
「ラケール、ではエスコートして」
「ああ、ルチア」
ラケールの差し出した手に、自らの手を重ねる。触れあう指先に熱が帯びる。互いに、ちょっと視線をそらしながら教室に向かった。
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「遅刻しそう。急ごう、ラケール」
「Aクラスは成績重視だから、多少遅刻しても先生は大目に見てくれるさ」
学生寮を共に出たラケールが気楽に言うが、僕としては切実な問題だ。
「次期当主の座を奪われて、僕は一時期成績が落ちたんだよ。その時に、先生からクラス落ちの話があってあせったの!また成績は持ち直しているけど、油断できないからね」
王立学園のクラスは、成績により決まる。僕とラケールは、Aクラスである。学年では、Aクラスが最も優秀なクラスだ。
「Aクラスを死守している僕の苦労を、知って欲しいな。上位アルファばかりのAクラスで、上位オメガの僕はクラス落ちしない為に色々苦労しているんだよ?時には、先生にも色目を使って赤点を免れているのだから!」
僕の言葉に、ラケールが驚いて見つめてきた。
「先生に色目って、冗談だろ?」
「いや、いや、マジですよ」
「そこまで、することないだろ!Bクラスだって、アルファ性ばかりだ。クラス落ちしても、誰もルチアを馬鹿にしたりしない。それより、オメガ性のルチアが、Aクラスを維持していることを不審に思って、悪い噂が流れてる。教師達に、体を差し出して成績を維持しているとか・・色々と噂が流れてる」
「おー、そんな噂が流れてたの?まあ、体は売ってないけど、色目は使ってるから・・あながち、的はずれの噂でもないね」
僕の言葉に、ラケールが苦い表情を浮かべる。そして、苦しげに呟いた。
「Aクラスにルチアの兄貴がいるから、クラス落ちしないように、必死になっているのか?」
「さて、どうだろうね?」
「ルチア!」
そうなんだよね。アルフレート兄上とは、同じ年齢だったりする。義理の兄弟で、同じ年齢、生まれ月は僕が先。なのに、父上からは、上位アルファ性のアルフレートを、『兄上』と呼ぶようにオメガ性の僕は強要された。
正直、同じ年齢の男を『兄上』と呼ばねばならないことに、僕は腹をたてている。
なのに、アルフレート兄上と同じクラスであることを、嬉しいと感じている自分がいる。兄上に、僕の存在を認めて欲しい。そう感じている自分がいて・・少し惨めだったりする。
「とにかく、遅刻したくない!だけど、アルファ性ほど運動能力に長けてないから、クラスまで全速力で走るには、ラケールの支えが必要だよ。『運命の番』さん、僕と手を繋いで」
「オメガ性は体が弱い。全速力なんてやめろ。教師が何か言ってきたら、俺が適当に言いくるめるから。だが、『運命の番』として、ルチアをエスコートはさせてくれ」
「オメガ性が病弱だとは思わないけどなあ」
「病弱だよ。俺は心配だ」
前世が、死にかけ病弱男子だったから、オメガ性が病弱とされていることにピンとこない。だけど、ラケールの気遣いを無駄にしたくない。
「ラケール、ではエスコートして」
「ああ、ルチア」
ラケールの差し出した手に、自らの手を重ねる。触れあう指先に熱が帯びる。互いに、ちょっと視線をそらしながら教室に向かった。
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