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腐男子は倫理観に欠ける

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アルファ同士の闘争で肋骨にヒビ。その上、レスキュー隊からスタンガン銃を食らったラケールだが、今日ようやく退院の運びとなった。

「いやぁ、アルフレート兄上と腹違いの兄弟かもしれないって知った時は、流石に参ったよ。でも、『愛』さえあれば全てが許される。それが『腐の沼』だと思うんだよね、僕は。ねえ、ラケールもそう思うでしょ?」

オメガ専用病棟に入院していた僕だが、一週間の療養を終えてラケールより先に退院した。なので、僕はまだ傷が完全に癒えぬ、偽『運命の番』の為に退院準備を手伝いに来ていた。

僕って何気に健気だ。

「『フノヌマ』?いや、ルチアの事だから『腐の沼』だな!やはり俺たちは、運命の番だ。『腐の沼』が理解できるこの不思議!」

「さすが、偽物の『運命の番』!」

「そこは、真実の『運命の番』だろうが!つうか、腹違いの兄弟疑惑が浮上して、なに平然としている!?ルチア、正気に戻れ。お前の考え方は、完全に世間から逸脱しているから!くそ、お前を退院させた医者は、やぶ医者に違いない。もう少し入院して静養すべきだ。至高の病室を俺が用意する。勿論、入院費は俺が全て持つ!何故なら、運命の番だから!」

「何言ってるの、ラケール?僕は見ての通り正気だよ?でも、上位オメガの僕は完全にヒートをなめていたな。一週間も続くヒートを初体験して、下位オメガの苦しみを少しだけ理解できた。上位オメガの僕でも社会進出が難しいのに、下位オメガが苦労するわけだ。ぼくはオメガ支援団体に、多額の寄付をするつもり。ラケールも寄付に協力してよ」

僕が上目遣いでラケールを見つめると、何故か彼は憐れみの表情を浮かべていた。その表情は止めてくれ!

「常識的な発言をしても、ルチアの『腐の沼』発言が全てを台無しにしているぞ。その事に何故気がつかない、ルチア?オメガ支援団体への寄付には異存はない。だが、その代わりに、ルチアは再入院してくれ。性的倫理観が以前から欠如しているとは思っていたが、これ程とは思わなかった。認知行動療法による改善を望む。『運命の番』として、ルチアが心配過ぎる!」

「もう!せっかく退院の手伝いに来たのに、感謝の言葉さえないとは。ラケールこそ、世間の常識から外れてるよ。兄上とのこれからの関係について、相談に乗ってもらうつもりだったのに・・ラケールの意地悪。う、ううっ」

うそ泣きをしてみた。

「幼馴染にうそ泣きが通じると思っているのか、ルチア。しかし、頭ごなしにルチアを否定したことは謝る。そうか、ルチアは『運命の番』の俺を頼りにしているわけだな!アルフレートとは別れるべきだとは思うが、ルチアの相談には乗る。で、アルフレートの反応はどうなっている?」

流石、幼馴染!僕のうそ泣きを見破るとは。だけど、アルフレート兄上の事を話そうとすると胸が痛くなって、本当に泣きようになる。

「学生寮では・・あんなにも荒々しく甘く抱いて、僕に『愛している』と何度も言ってくれたのに。今はすごくよそよそしくて。アルフレート兄上の気持ちがどこにあるのか、僕には分からないんだ。すごく辛い。慰めて、ラケール」

「すげー、慰めたくない!なにその甘いお話。俺の心がズタズタになる。慰めたりするかよ。ん?えっ、まて!泣くことないだろ。しかも、本気で泣くとかありかよ。あー、もう!」

ラケールが泣き出した僕を抱き締めてくれた。僕もラケールに抱きつく。

「そんな優柔不断な奴とは別れろ、ルチア」
「簡単に言わないで、ラケール」
「とにかく、その・・相談にはのる」
「ありがとう、ラケール」

僕だって、一応は世間一般の倫理観は持ってる。だけど、感情がそれを凌駕するのだから困っているんだ。


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