34 / 47
sideルーカス
18.
しおりを挟む
イライラしながら朝になるのを待った。
ギルドの開門時間となるより早くノアの部屋を訪れて………。
俺は愕然とした。
手を掛けた扉は何の抵抗もなく開き、その先には寒々しい空間が広がっていた。
備え付けの家具以外は何もなくて、そこは正に空き家の状態だったのだ。
何で………?
ふらりと室内を歩く。
どこにも気配がない。
ノアが……いない。
いつからこの状態なのか、ノアの匂いすら薄くなっていた。
俺を切り捨てたのか…………っ!!
沸々と湧き上がる激情。
これは……だってこれは、昨日今日の準備じゃない。
ノアは意図して、俺に全てを隠し旅立って行ったのだ。
この街から。
―――そして、俺からも………。
思わず拳を叩き付けたテーブルが、バキバキと音を立てて砕け散る。
木片が頬を掠って切り傷を作り、僅かに血を滲ませた。
グイッと親指で血を拭う。
ペロリと血を舐めとり、俺はうっそりと顔を上げた。
―――俺から逃げられると思うなよ、ノア。
何としても探し出す。俺から逃げた償いはして貰うぞ。
それでも戻りたくないと、離れたいんだと願うなら……。
―――喰ってやる…………っ!
□■□■□■□
ツカツカとギルドのカウンターに近寄ると、ノアが受けたクエストを尋ねた。
情報開示に制限がかかっているクエストだったらしく、受け付け嬢は『お答えできません』と規定通りの返事をするだけ。
俺は殺さんばかりの勢いで睨みつけた。
Sランクの威圧を受ければ、冒険者でもない相手がどうなるか………。
そんな事に配慮なんてできる訳がない。
ガタガタ震える受け付け嬢を背後に押しやって庇ったのは、ギルマスだった。
「落ち着け、ルーカス!」
「……煩い…っ!さっさと情報を出せっ!!」
唸る様に声を絞り出す。
ヒィッとギルマスの背後にいる女が悲鳴を漏らした。
「クッソっ!番関連かよ!!」
俺の睨みを受けて、ギルマスはギリッと歯軋りをした。
「だからあれ程拗らせるなと……っ!!ルーカス!威圧を引っ込めろ!情報は渡す、落ち着けっ!!」
「ギルマスっ!?ダメですよっ、あのクエスト情報制限かかってます!」
「煩い!ギルドマスターの権限だ!早く持ってこい!Sランクの獣人が発狂してみろ!下手したら街が半壊するぞっ!!」
秘書官の静止に、ギルマスは怒鳴り返す。
ハッと秘書官は視線を此方に向けると、ゴクリと喉を鳴らした。
慌てて受理済のクエスト一覧を探す。
その僅かな時間ももどかしく、焼き付ける様な焦燥感と苛立ちが湧き上がり体内で蠢き、残忍な衝動に襲われる。
ミシミシっとカウンターが悲鳴を上げ始めた。
秘書官が1枚の紙をファイルから取り出して、ギルマスに渡す。それに視線を流した後、ギルマスは努めて静かな声で伝えてきた。
「ルーカス、ノアのクエストの終着点は北門から出て3つ隣の街だ」
それを聞いて俺は踵を返した。
「待てよ、ルー。終着点まではたいして高い山がない。その分ルートが幾つかあるぞ」
顔だけ振り向く俺を見据え、ギルマスは続けた。
「ノアが出立したのは5時間前。早便の事務作業開始時間に荷物を受け取っていった」
そして――――。
「ルーカス。ノアを殺すなよ。この街に連れて帰って来い」
ジロリとギルマスを睨むと、俺はもう振り返る事なくギルドを後にした。
急ぎ部屋に戻り、荷物を纏める。
遠征は慣れたものだ。苛立っていても身体が覚えていて、準備が滞る事はない。
ふと、手が止まる。
ノアは、何を思いながら出立の準備をしたんだろう。
俺に何一つ相談さえせずに。
相談もしてもらえない関係だったのか?
お前にとって、俺は何なんだったろう。
グッと唇を噛み締めると、荷物を担ぎ足早に部屋を出た。
ギルドの開門時間となるより早くノアの部屋を訪れて………。
俺は愕然とした。
手を掛けた扉は何の抵抗もなく開き、その先には寒々しい空間が広がっていた。
備え付けの家具以外は何もなくて、そこは正に空き家の状態だったのだ。
何で………?
ふらりと室内を歩く。
どこにも気配がない。
ノアが……いない。
いつからこの状態なのか、ノアの匂いすら薄くなっていた。
俺を切り捨てたのか…………っ!!
沸々と湧き上がる激情。
これは……だってこれは、昨日今日の準備じゃない。
ノアは意図して、俺に全てを隠し旅立って行ったのだ。
この街から。
―――そして、俺からも………。
思わず拳を叩き付けたテーブルが、バキバキと音を立てて砕け散る。
木片が頬を掠って切り傷を作り、僅かに血を滲ませた。
グイッと親指で血を拭う。
ペロリと血を舐めとり、俺はうっそりと顔を上げた。
―――俺から逃げられると思うなよ、ノア。
何としても探し出す。俺から逃げた償いはして貰うぞ。
それでも戻りたくないと、離れたいんだと願うなら……。
―――喰ってやる…………っ!
□■□■□■□
ツカツカとギルドのカウンターに近寄ると、ノアが受けたクエストを尋ねた。
情報開示に制限がかかっているクエストだったらしく、受け付け嬢は『お答えできません』と規定通りの返事をするだけ。
俺は殺さんばかりの勢いで睨みつけた。
Sランクの威圧を受ければ、冒険者でもない相手がどうなるか………。
そんな事に配慮なんてできる訳がない。
ガタガタ震える受け付け嬢を背後に押しやって庇ったのは、ギルマスだった。
「落ち着け、ルーカス!」
「……煩い…っ!さっさと情報を出せっ!!」
唸る様に声を絞り出す。
ヒィッとギルマスの背後にいる女が悲鳴を漏らした。
「クッソっ!番関連かよ!!」
俺の睨みを受けて、ギルマスはギリッと歯軋りをした。
「だからあれ程拗らせるなと……っ!!ルーカス!威圧を引っ込めろ!情報は渡す、落ち着けっ!!」
「ギルマスっ!?ダメですよっ、あのクエスト情報制限かかってます!」
「煩い!ギルドマスターの権限だ!早く持ってこい!Sランクの獣人が発狂してみろ!下手したら街が半壊するぞっ!!」
秘書官の静止に、ギルマスは怒鳴り返す。
ハッと秘書官は視線を此方に向けると、ゴクリと喉を鳴らした。
慌てて受理済のクエスト一覧を探す。
その僅かな時間ももどかしく、焼き付ける様な焦燥感と苛立ちが湧き上がり体内で蠢き、残忍な衝動に襲われる。
ミシミシっとカウンターが悲鳴を上げ始めた。
秘書官が1枚の紙をファイルから取り出して、ギルマスに渡す。それに視線を流した後、ギルマスは努めて静かな声で伝えてきた。
「ルーカス、ノアのクエストの終着点は北門から出て3つ隣の街だ」
それを聞いて俺は踵を返した。
「待てよ、ルー。終着点まではたいして高い山がない。その分ルートが幾つかあるぞ」
顔だけ振り向く俺を見据え、ギルマスは続けた。
「ノアが出立したのは5時間前。早便の事務作業開始時間に荷物を受け取っていった」
そして――――。
「ルーカス。ノアを殺すなよ。この街に連れて帰って来い」
ジロリとギルマスを睨むと、俺はもう振り返る事なくギルドを後にした。
急ぎ部屋に戻り、荷物を纏める。
遠征は慣れたものだ。苛立っていても身体が覚えていて、準備が滞る事はない。
ふと、手が止まる。
ノアは、何を思いながら出立の準備をしたんだろう。
俺に何一つ相談さえせずに。
相談もしてもらえない関係だったのか?
お前にとって、俺は何なんだったろう。
グッと唇を噛み締めると、荷物を担ぎ足早に部屋を出た。
290
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ぼくの婚約者を『運命の番』だと言うひとが現れたのですが、婚約者は変わらずぼくを溺愛しています。
夏笆(なつは)
BL
公爵令息のウォルターは、第一王子アリスターの婚約者。
ふたりの婚約は、ウォルターが生まれた際、3歳だったアリスターが『うぉるがぼくのはんりょだ』と望んだことに起因している。
そうして生まれてすぐアリスターの婚約者となったウォルターも、やがて18歳。
初めての発情期を迎えようかという年齢になった。
これまで、大切にウォルターを慈しみ、その身体を拓いて来たアリスターは、やがて来るその日を心待ちにしている。
しかし、そんな幸せな日々に一石を投じるかのように、アリスターの運命の番を名乗る男爵令息が現れる。
男性しか存在しない、オメガバースの世界です。
改定前のものが、小説家になろうに掲載してあります。
※蔑視する内容を含みます。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
隠れオメガの整備士は自由になりたい。なのに暴走する最強騎士を身体を張って止めたら、運命の番だとバレて過保護な専属契約を結ばされました
水凪しおん
BL
※オメガバース設定。激しい戦闘描写や、執着攻めによるマーキング描写、軽度の性的な接触の描写がありますので、15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
汚染された惑星を浄化する生体兵器『機装(ギア)』。
その搭乗者は優れた能力を持つ『アルファ』に限られ、彼らの精神を安定させる鎮静剤として『オメガ』が存在する世界。
整備士のエリアンは、オメガであることを隠し、ベータと偽って軍の最前線で働いていた。
オメガは道具のように扱われるこの社会で、自由を守るための必死の嘘だった。
だがある日、軍最強のエリートパイロット・クレイドの機装が暴走する事故に遭遇する。
死を覚悟して止めに入ったエリアンだったが、暴走する機体はなぜか彼にだけ反応し、沈静化した。
それは、隠していたオメガのフェロモンが、クレイドと強烈な『共鳴』を起こした瞬間だった。
「見つけた。俺の対になる存在を」
正体がバレたと戦慄するエリアンに対し、冷徹なはずのクレイドが向けたのは、処罰ではなく執着に満ちた熱い視線で……?
孤独なエリート騎士×身分を隠した健気な整備士。
星の命運と本能が交錯する、近未来SFオメガバース!
転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています
柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。
酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。
性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。
そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。
離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。
姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。
冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟
今度こそ、本当の恋をしよう。
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる