番が欲しいアイツと、実らない恋をした俺の話。

飛鷹

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sideルーカス

18.

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イライラしながら朝になるのを待った。 
ギルドの開門時間となるより早くノアの部屋を訪れて………。


俺は愕然とした。


手を掛けた扉は何の抵抗もなく開き、その先には寒々しい空間が広がっていた。
備え付けの家具以外は何もなくて、そこは正に空き家の状態だったのだ。

何で………?

ふらりと室内を歩く。
どこにも気配がない。

ノアが……いない。

いつからこの状態なのか、ノアの匂いすら薄くなっていた。

俺を切り捨てたのか…………っ!!

沸々と湧き上がる激情。
これは……だってこれは、昨日今日の準備じゃない。
ノアは意図して、俺に全てを隠し旅立って行ったのだ。

この街から。
―――そして、俺からも………。

思わず拳を叩き付けたテーブルが、バキバキと音を立てて砕け散る。
木片が頬を掠って切り傷を作り、僅かに血を滲ませた。
グイッと親指で血を拭う。
ペロリと血を舐めとり、俺はうっそりと顔を上げた。

―――俺から逃げられると思うなよ、ノア。

何としても探し出す。俺から逃げた償いはして貰うぞ。
それでも戻りたくないと、離れたいんだと願うなら……。

―――喰ってやる…………っ!

□■□■□■□

ツカツカとギルドのカウンターに近寄ると、ノアが受けたクエストを尋ねた。
情報開示に制限がかかっているクエストだったらしく、受け付け嬢は『お答えできません』と規定通りの返事をするだけ。
俺は殺さんばかりの勢いで睨みつけた。
Sランクの威圧を受ければ、冒険者でもない相手がどうなるか………。
そんな事に配慮なんてできる訳がない。
ガタガタ震える受け付け嬢を背後に押しやって庇ったのは、ギルマスだった。

「落ち着け、ルーカス!」

「……煩い…っ!さっさと情報を出せっ!!」

唸る様に声を絞り出す。
ヒィッとギルマスの背後にいる女が悲鳴を漏らした。

「クッソっ!番関連かよ!!」

俺の睨みを受けて、ギルマスはギリッと歯軋りをした。

「だからあれ程拗らせるなと……っ!!ルーカス!威圧を引っ込めろ!情報は渡す、落ち着けっ!!」

「ギルマスっ!?ダメですよっ、あのクエスト情報制限かかってます!」

「煩い!ギルドマスターの権限だ!早く持ってこい!Sランクの獣人が発狂してみろ!下手したら街が半壊するぞっ!!」

秘書官の静止に、ギルマスは怒鳴り返す。
ハッと秘書官は視線を此方に向けると、ゴクリと喉を鳴らした。
慌てて受理済のクエスト一覧を探す。
その僅かな時間ももどかしく、焼き付ける様な焦燥感と苛立ちが湧き上がり体内で蠢き、残忍な衝動に襲われる。

ミシミシっとカウンターが悲鳴を上げ始めた。
秘書官が1枚の紙をファイルから取り出して、ギルマスに渡す。それに視線を流した後、ギルマスは努めて静かな声で伝えてきた。

「ルーカス、ノアのクエストの終着点は北門から出て3つ隣の街だ」

それを聞いて俺はきびすを返した。

「待てよ、ルー。終着点まではたいして高い山がない。その分ルートが幾つかあるぞ」

顔だけ振り向く俺を見据え、ギルマスは続けた。

「ノアが出立したのは5時間前。早便の事務作業開始時間に荷物を受け取っていった」

そして――――。

「ルーカス。ノアを殺すなよ。この街に連れて帰って来い」

ジロリとギルマスを睨むと、俺はもう振り返る事なくギルドを後にした。
急ぎ部屋に戻り、荷物を纏める。
遠征は慣れたものだ。苛立っていても身体が覚えていて、準備が滞る事はない。

ふと、手が止まる。
ノアは、何を思いながら出立の準備をしたんだろう。
俺に何一つ相談さえせずに。
相談もしてもらえない関係だったのか?

お前にとって、俺は何なんだったろう。


グッと唇を噛み締めると、荷物を担ぎ足早に部屋を出た。


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