深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット

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落下のち爆発

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「ぎゃぁぁぁああああああ!!!!」

 落ちてます、俺は今、落ちてます。猛スピードで、自由落下に落ちてます。裏迷宮への縦穴の中は俺の叫び声で満ちてます。

 落ちゆく中、急に視界が明るくなった。

「あっ」

 穴を抜けたんだ。気付けば地中とは思えない空に俺は浮かんで、いや落ちていた。

 くそっ、最悪のルートだ。本来のルートなら地面に着地できる高さに出るはずだったのに、この高さなら爆発するよりも先に落下死しちまう。

「死っ……」

 迫り来る緑の地面によって、つい脳内で浮かんでしまった死。あ、俺死ぬんだ。死のイメージが具体性を持った途端、俺は頭の中で謝罪をしていた。

 教王様、申し訳ありません。任務を遂行することは出来なそうです、なぜなら俺は地面に落下した時点で爆発するからです。神父様、今まで育てて頂いて有難うございました。ご恩を返せずに申し訳ありません。

 もう地面が近い。仰向けに風で流されているけど、さっき見た地面との距離的にもう数秒もすれば俺は地に叩き付けられる。一応スキルで衝撃吸収は出来るけど、した所でどうせ爆発で死ぬ。
 
「あーあ、せっかく転生したのになあ」

 諦めを口にして目を瞑った。短いけど、悪くない人生だった。

 いや、嘘だな。もっと生きたかった。やり残したことなんて沢山ある。教会の隣の、雑貨屋のあの子に思いを伝えてないのに。友と他国でこっそり酒を飲むという約束も果たせてないのに。教会の下の子たちだって放ってはおけないし、神父様に恩返しも出来てない。前世で言えば俺はまだ高校生程度の年齢で、まだまだ未来はあったのに。

「死にたくねえな……」

 今更になって涙が溢れ出す。だが現実は甘くは無い。地面はもうそこまで迫って来ている。その瞬間、バンっ── という衝撃が突如横から襲い、俺の落下地点を大幅にずらす。が、やはり落ちることには変わりはなかった。

 ── ぼふっ!!

 落下により、背中を思いっきり殴られたような衝撃。
 逆に、その程度の衝撃だった。

「えっ?」

 柔らかいもふもふが全身を包む。想定していたよりもずっと柔らかい地の感触に俺は驚く。

「は? え、」

 違う、これは地面じゃない。
 目を開けて真っ先に飛び込んでくる白い毛の塊、所々赤い血が付着している。目の前だけじゃない、背中も腕も脚も、俺の身体に密着している全てが……

「魔兎……」

 尋常じゃない量の、俺はそこに突っ込んだんだ。
 
「生きてる! ……生きてryっ」

 腹が熱い、コレは……。

 アレスは俺を穴に落とす前に、ご丁寧に爆弾の説明をしてくれた。

 まず腹の奥が熱を持ち始める。皮膚を透かして赤く光る球体は膨張を開始し、接触している内臓は溶ける。そのあと5秒も経てば爆破魔法が作動する。瞬間、強烈な衝撃によってお前の全身の骨は折れ、目は飛び出し、鼓膜は破れ、腹がビリビリに裂ける。内臓はそこら辺に散らばるだろうし、強烈な痛みがお前を襲う。痛みによって失神した方が楽だろうが、それが出来なかった場合、上半身と下半身が別れても2秒ほどは意識があるだろうな。で、まぁ死ぬ。

 説明通りだ。急激に腹の中が熱を持ち始める。

「熱ッ……痛い痛い痛い痛い!!!!!!!」

 腹の中が溶けるのが分かる。死ぬほど痛い。冗談じゃない! せめて早く爆発してくれ!

「う゛ぁぁぁっ……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!」

 あまりの苦痛にのたうち回る。息が出来ないほどに痛い、早く!  早く殺してくれ!

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い、あ゛ぁ゛ぁ゛……痛い痛い痛い痛い痛い!!!」

 殺してくれ……早く、早く爆発しろ!

 ── カチっ。

「あっ」

 膨張と熱、真っ白になった視界。
 訳の分からないまま、俺は爆発に呑まれた。


 
 耳鳴りが酷い、水中に居るみたいだ。深海かな。もはや思考もままならないそんな中、誰かが俺の元に駆け寄ってくるような幻聴が聴こえたような気がする。

「流石に……いや、俺なら……スキル<治癒ヒール>」

 誰かのよく分からない声を最後に、俺は意識を手放した。

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