深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット

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2人目

苛まれる

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 柔らかな土の感触を背に感じる。暖かい陽光が俺を照らしていることが閉じた瞼越しにも分かる。唯一分からないのは何故俺がここに居るのか、その一点だけだった。

「起きたか、大丈夫か? 違和感があるところは?」

 仰向けのまま声がした隣を見れば、一人の男がこっちを見ていた。ここは天国で彼は神様なのだろうか。いや、そんな訳は無いか、俺は天国に来れるような人間では無い。

「ここは?」
「裏迷宮の2層。『セーフゾーン』だ」

 そうか、アイツらに落とされたんだった。徐々に記憶が鮮明に蘇ってくる。落ちたと思ったら魔兎の死体に突っ込んで、で助かったと思ったら腹の中から爆発して……って

「っ俺はどうして生きてる?」

 そうだ。俺はあの時間違いなく死ぬ運命だった。良く考えれば目が見えるのも、鼓膜が破れてないのも、下半身が有るのも全ておかしい。

「俺の治癒ヒールはちょっと特殊でね。勝手ながら治させて貰ったんだ」

 そうか、あの時死に際に聞こえた声は幻聴じゃなくてこの人だったのか。凄いな、こんな所に人が居るのも信じられないし、見ず知らずの人を助ける優しさとあの状態から完全治癒させる実力を兼ね備えていることが。

 待て、この顔、知っている。

 感謝に埋め尽くされる心の中、ふと覚えた既視感。当然だ、任務の成功の為に何度も見た顔。この人は、いやコイツは……

「お前、リューロ・グランツだな」

 瞬時に思考が切り替わる。俺が名を知っていたことに、相手は目を丸くさせた。

「俺のことを知ってるのか?」
「あぁ、[転生者の篝火]。お前のこtっ」

 念のために相手がその称号を持っているか確認しようと問うその言葉が、目の前で突然リューロ・グランツが嘔吐したことで途切れてしまう。

「う゛っぷ……っはぁ……違う。違う、違う、違う。……違う違う違う違う違う違う!!!!」
 
 [転生者の篝火]という、その単語を俺が口に出した途端、グランツは頭を抱えて奇声を発しながら蹲ったのだ。吐しゃ物は俺の脚にかかり生ぬるい。グランツは吐きながら叫ぶながら、頭を掻きむしり、意味の分からない叫び声をあげる。そんな狂気に俺は思考停止した。

「あ゛……あ゛ぁぁぁあ゛ぁぁ」
「え、おい、大丈夫か」
「……」

 俺は本当にこの人を殺さなければならないのか。苦しみ悶えている彼を見ていると、そんな疑問が頭を埋め尽くす。いや、だが与えられた任務だ。
 脳内で一人葛藤していれば、がばっ、と今度は急にグランツは顔を上げ、虚ろな目で周りを見渡す。

「……シズクが!」
「えっ、ちょっどこ行く」

 誰かの名前を叫んでグランツは『セーフゾーン』を飛び出していった。何よりも優先すべきのことかのようなその形相に、俺も気になって後を追うことにした。


***

「来るな! 来るなぁぁ!!」

 グランツは叫ぶ、魔兎やキラービーを必死に追い払いながら。ソレに寄ってくる魔物を次々と無造作に殺していく彼に、まともな精神が宿っているとは思えなかった。

「これは……」

 [転生者の篝火]リューロ・グランツがそうまでして、精神を病んでまで守っているものを見て、俺は愕然とした。

 死体だった。

 首がない女性の死体。腐って変色もしている、置かれている場所の草は黒い液体に犯され、おぞましさを助長していた。死んでから、おそらく1週間ほどだろう。

「そうか……治癒ヒールは……」

 俺は気付く、いや気付いてしまった。
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