深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット

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生きていてる

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 轟音と共に溶岩の雨がそこら中に降り注ぐ。呼吸が苦しいほどの熱風の中で状況把握もままならないが、ただひとつ分かっているのはセージが俺のことを庇い、そして死んだということだ。ステータスを開けばそこには無慈悲にも彼が所持していたスキルと転生者特典が俺に移動しているのが分かってしまう。

「クソっ……」

 なんで、なんで俺はまだ生き残っている? 何度人に助けられた? 何人を死なせてしまった?

 1層、ミノタウロスに遭遇した時、俺は仲間3人に助けられどうにか生き延びた。
 戦士のエディは気のいいヤツで、いつだって自信に満ち溢れていた。報酬の少ない依頼を引き受けてもらい申し訳なさを感じていてた俺に、エディは笑って「スライム討伐も立派な仕事だ。報酬の大小じゃない、人の為になるか否か、だ」って簡単に言って、俺は彼に憧れた。
 僧侶のローザは心優しい子だった。ちょっとした怪我でも直ぐに走ってきて、直ぐに治療の魔法をかけてくれた。彼女まだ若いのにも関わらず、母が大病に罹ってしまいその治療費を稼ぐためにダンジョンに潜っていた。母の話をしてくれた彼女の笑顔のその奥にある悲しみを俺は二度と忘れないだろう。
 魔導師のアンは賢い子だった。鋭い目で真実を見極めて、人の機微を読み取ることも上手かった。彼女とは何度か同じパーティ仲間としてダンジョンを潜ったことがある。Cランクの俺を馬鹿にするパーティの奴らを、咎めてくれたことがある。彼女の注意深さで救われた命が何度もあった。

 裏迷宮2層、降りた途端に魔兎に片腕を食いちぎられた俺を救ってくれたのが転生者のシズクだった。まだ右も左も分かっていない彼女は俺を信頼してくれ、俺もまたそんなシズクを信頼した。シズクのスキルが無ければ俺が死んでいた場面は限りないほど多く、それだけでは無くシズクの発想でピンチを切り抜けたこともあった。

 裏迷宮3層、俺を殺し、そして教国に連れて帰りに来たという転生者のセージは、そんな目的とは思えないほどに優しく誠実な男だった。精神が不安定になり、逆に雫のことを傷付けていた俺の目を覚ましてくれ、そして埋葬をもしてくれた。俺なんかより聖なる言葉を真剣に唱える彼の方が雫のことを思っているのが伝わってきた。戦闘でも頼りになった。彼の分身スキルは強力で、作戦の立案も見事なものだった。彼が居なければ俺はフレイムサーペントに喰われていただろう。


 そんな俺なんかにはもったいないほどの仲間たちは、死んだ。いや、俺が殺した。そう、俺が。俺が殺したんだ! 俺のせいでみんな死んでいった! 俺が死ぬべきだった! 俺はどうして生きている!? 
 死にたかった。罪悪感と無力感で俺は死にたかった。でも死ねない、彼らの死を冒涜するようなことは決して出来ない、してはいけない。

「助けてくれ……」

 蹲りながら、振り絞るように出した声が3層の床に反響する。

「助けてあげましょうか?」

 女の声が、頭上から聞こえた。
 
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