深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット

文字の大きさ
29 / 124
幕間

終局

しおりを挟む
 轟音と共に現れた3層の食物連鎖の頂点、誰もが程度の差はあれど一瞬、驚き対応が遅れる。
 だが魔物は待ってくれない。その巨大な体躯に似合わないスピードでイグニススコーピオンは最も近かったタカダマサトに急接近し、大きな鋏を振り上げた。

 集中の乱れはスキルの発動に悪影響をもたらす。僅かにタカダによる拘束が弛み、後ろで手を動かせることに気付いた俺は、思い付きの一手を打ってみることにした。これが成功すれば俺は暫くは誰にも追われないハズ……だ。

転移テレポート!」

 言葉と共にエレナから貰った転移石をイグニススコーピオンの攻撃を避けようとするタカダ マサトの背中に投げつける。煌々とした輝きが徐々に強まっていく転移石、俺は思わず目を瞑る。

「……っ!?」
「キュオォ゛ンン!!!!!!!!!」

 目を瞑っていても分かるほど激しい閃光を放つ転移石と、その光に目を焼かれたスコーピオンの絶叫の中、微かにタカダの驚きの声も聞こえた。

── だがもう遅い。

 もう一度瞬きした時には既にタカダと、イグニススコーピオンが姿を消していた。

「お前、何をっ」
「<隠密ハイド>」

 怒るアレスを無視して、拘束が消えた俺は最速でスキルを発動させて消える。

「面倒なことをしてくれたね」

 エレナは俺の狙いに気付いたんだろう、そう言って予想通りにもう1つ持っていた転移石を懐から取り出す。ひとつしかないなら俺にあっさり渡すはずが無いからな、やはり持っていたか。

 まあ、もう俺は関係ない。さっさと逃げよう。

 俺はさらに<疾走スプリント>と<空中歩行>によってさっき居た場所から移動する。その俺がちょうどエレナの頭上を移動している時だった、彼女は真上を見つめてこう言った。

「でも、私が<隠密ハイド>を破れると思わなかった?」

── へっ?

 がしっ、とエレナに脚を掴まれ引っ張られ地面に叩きつけられる。見えていないハズの俺の脚を、だ。俺はエレナに脚を持たれ、まるで物のように引き摺られるような形になる。

── マズいっ、転移させられる!

 転移、と今にも口にするだろうエレナの手を振りほどこうとするも、圧倒的力の差がそれを阻む。

「てr──」
「<糸絶バニッシュライン>」

 だが俺の転移をアラクネが黙って見ているわけがなく、横一線に糸の刃がエレナの胴体に向かって凄まじいスピードで襲う。これには流石のエレナも俺を離し、その糸を鎌で一瞬受け止め……ようとし、辞めて、上に飛んで避けた。<糸絶バニッシュライン>はエレナが避けた先に居た、まだ状況が呑み込めていなかったトーマスの上半身を軽々と落とす。

「<断撃ディメンションスラッシュ>!」
「<烈拳ブレイジングバラージ>!!!!」
「うーーん、時間切れね。仕方ない、今回はリューロ・グランツ、君の作戦勝ちだ」

 着地のタイミングに追撃を仕掛けたアレスの剣をエレナは軽々と白刃取りし、

転移テレポート

 再びの閃光を放ったあと、アレスとライアン共々消えた。

── よし! 作戦通りだ!

 完全に俺の思惑通りにことが進んだ。

 議会場に突如転移してきた帝国の人間と巨大で凶暴な魔物。イグニススコーピオンはところ構わず暴れ、首都で破壊の限りを尽くすだろうし、それを引連れてきた人間は転生者ときている。当然、共和国としてはエレナが無力化された上で転移石を奪われた、もしくはエレナが裏切ったと考え、魔物を使った帝国の攻撃としか思えないはずだ。魔王軍との戦いが控える中で、人間同士の戦争なんてしていられない。ならばエレナは一刻も早く戻って状況説明をしなければならない。
 三人転移が可能だったのは予想外だったが、そこは嬉しい誤算だった。

「私には見えないわ。だから、今回は諦めることにする」
「……」

 そして残ったのは<隠密ハイド>を使っている俺とアラクネのリィラ、だがアラクネは俺を感知出来ない。

「そうそう、ひとつだけ。教国には気をつけた方がいいわよ」
「……」
「じゃ、下層でまた会いましょう」

 アラクネはそれだけ言って、影に入った。
 ……か。


 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...