深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット

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「リューロ、これは凄いぞ!」

 俺が戦い疲れ、その場で座り込んでいるとリカが何やら興奮した様子で走ってきた。トタトタと軽やかに走る姿だけ見ればただの子供だな、と俺は少し笑ってしまう。

「こんな風に戦闘をじっくり解析できることなぞ無かったからの~! 良いか、聞いて驚くでないぞ! 魔人種は、魔法を発動させる際、人と同じように体内にある魔素受容器官を使用しているんじゃ! 」
「つまり……?」

 リカはこの世の真理を掴んだかのように興奮してまくし立てるが、俺にはそれが何を示すのか分からなかった。ピンと来てない俺に彼女はちょっとガッカリしてるけど、それでもテンションの熱が下がる様子は無い。

「分からんのか、魔人は魔物よりむしろ人に近い存在というわけで、これは教国が唱える『神は人のみに魔素受容器官を与えた』という教義をひっくり返すタブーだ」
「それは……確かに歴史に残る発見だな」
「うむ、全くもってそうじゃ。しっかし魔人種に人と同じ器官があるとはの~。どうして今まで知られていなかっ……」

 突然リカはそこで眉をひそめた、まるで何かに気付いたかのように。

「いや、まさか……だが、」

 リカが目を瞑り、何かに集中する。ほぼ同時に、俺の肌がピリピリとし、毛が逆だち始めた。魔法にからきしの俺ですらリカが自身の魔素を空間に行き渡らせていることが分かった

「ふむ……リューロ、少し気になることがある。これを見ろ」

 そう言って、俺の眼前に大きな半透明の地図が映し出される。

「なっ、4層の地図!? こんなことが出来るなら初めから……」
「いや、この層全体をわしの魔素で埋め尽くすがゆえ、全ての魔物がこちらの存在に気付いて活性化するから使わんようにしてたんじゃ」

 そう軽々と言うリカに、俺は目の前の彼女がなぜ大魔道士として、魔道国の王として、君臨出来ているのかを理解した。そして、逆に言えばそんな彼女がリスクを取ってまで確かめたいことがある、と言っている。ならば従う他なかった。

「ここに妙な空間があるのが分かるか?」

 リカが指さした先には、確かに妙な空洞があった。四方が壁に囲まれていて、孤島のようになっている。だがリカの魔素が検知しているということは、どこかで空間が繋がっているということだ。

「隠し部屋か」
「あぁ、わしの予想ではここにとんでもないものがあるはずじゃ」

***

 本気を出したリカとの探索は驚く程にスムーズだった。もはや彼女は重力操作を自身で唱えることすらせず、せっせとと前に前にと歩くだけで、俺もそれに着いてくだけだ。

 もちろん、さっき言っていた通り、この層全ての魔物という魔物があらゆる方向からこちらに襲いかかってくるものの、次の瞬間には無惨な姿になっていた。

「どうじゃ、少しはやるだろう?」
「少し……ってレベルじゃなくないか」

 俺たちを囲むようにリカが作った全自動魔法防御結界に触れては、絶叫しながら焼滅していく魔物に俺はドン引きしながら答える。周りで絶え間なく魔物が燃え死んでいくせいで、俺たちが通った場所が逆にくっきり浮いているぐらいだ。

 そして、目的の空洞といちばん薄い壁の前まであっという間に着いた……のだが、その前に陣どるある魔物が居た。

「嘘……だよな?」
「ふははは!!」

 その光景の絶望的かつ理解不能さに、俺は自分の目を疑い、リカは笑う。

「ヴゥゥ……」
「ふむ、ざっと500か?」

 この層に来た時に殺されかけたデッドウルフの鳴き声……それが×500。暗闇で赤く光る目は完全に俺たちを敵として認識しており、向けられた殺意に俺は思わず天を仰ぐ。

「面白いな、面白いほどに露骨に陰謀の香りがすると思わんか、リューロ」

 リカはそう不敵な笑みを浮かべた。
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