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4人目
災害
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「<隠密>」
豪熱に身を焼かれ、さらに<空中歩行>の効果も切れた俺は、1度立て直すために奴から姿を隠す。イグニッションエレファントは、俺を見失ったことに焦り、ぶんぶんと当てずっぽうにその長い鼻を振り回した。
「プォ゛ンン……!!」
避けられはするが、火炎を纏い強烈な速さと強さが加わった範囲攻撃だ。一撃でも貰えば致命傷は確実、<治癒>があるとはいえ脳をやらればそれまで、神経はすり減らされる。
そしてすり減っていたのは俺の神経だけじゃなかった。
ゴォォォオ──そんな轟音と共に踏みしめている雪が揺れる。俺よりも斜面の上に位置するイグニッションエレファントの灼熱が、雪を溶かしすり減らしているのだ。
──あ、れ?
気付けばあんなに大きかったはずのイグニッションエレファントが、随分と小さくなって……俺に足の裏を見せるように転……んだ?
── いや、違う!
俺の視界にも下から振り積もった雪の層が侵食している。そこで、ようやく俺はイグニッションエレファントも俺も滑雪に沈みつつあることに気付く。
「……っヤバい!! 」
咄嗟に<空中歩行>を発動させようと思考する。だが遅い、俺とイグニッションエレファントは完全に雪に飲み込まれていく。
──くそっ、息が!!
雪と共に体が激しく回転し、その勢いのまま時折なにか(恐らくは木や岩)にぶつかり苦痛が走る。完全に雪に埋まってしまったせいで、右も左も上も下も分からず、体も思うままに動かない。ただ気道が雪で詰まっているのは、苦しさのなかで理解した。
肋骨が折れ肺が潰されるのではないか、と思ってしまうほどの重量を持つ雪の中、どうにか俺は<火柱>を右手に発動させる。強烈な火は猛スピードで雪を溶かし、なんとか動かせるようになった右腕を、俺は口元に持っていき、焼く。
──痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!
あまりの激痛に死んだ方がマシだと一瞬思い、それでも火は絶やさない。気道が焼けても呼吸は出来ないので、火傷を負いながら雪を溶かすのと同時に<治癒>で火傷を治していく。
「はぁっ……はぁっ……」
幸いにも魔素を火に変えるだけなので酸素が無駄に減る心配は無い。呼吸が出来るようになった俺は次に、積み重なった雪を溶かしていく。一体どれほどの雪が俺に覆い被さっているのかも分からないが、真っ暗の雪のなかでひたすらに雪を溶かし続ける。
十分ぐらいそうしていただろうか、空気が薄くなってきて呼吸も浅い中、俺はようやく太陽を視界に収めた。
「はぁっ、やった……」
今までのなかで最も死を身近に感じた。ほとんど溶けきった雪にびしょ濡れになりながら俺は疲労によって意識を手放した。
豪熱に身を焼かれ、さらに<空中歩行>の効果も切れた俺は、1度立て直すために奴から姿を隠す。イグニッションエレファントは、俺を見失ったことに焦り、ぶんぶんと当てずっぽうにその長い鼻を振り回した。
「プォ゛ンン……!!」
避けられはするが、火炎を纏い強烈な速さと強さが加わった範囲攻撃だ。一撃でも貰えば致命傷は確実、<治癒>があるとはいえ脳をやらればそれまで、神経はすり減らされる。
そしてすり減っていたのは俺の神経だけじゃなかった。
ゴォォォオ──そんな轟音と共に踏みしめている雪が揺れる。俺よりも斜面の上に位置するイグニッションエレファントの灼熱が、雪を溶かしすり減らしているのだ。
──あ、れ?
気付けばあんなに大きかったはずのイグニッションエレファントが、随分と小さくなって……俺に足の裏を見せるように転……んだ?
── いや、違う!
俺の視界にも下から振り積もった雪の層が侵食している。そこで、ようやく俺はイグニッションエレファントも俺も滑雪に沈みつつあることに気付く。
「……っヤバい!! 」
咄嗟に<空中歩行>を発動させようと思考する。だが遅い、俺とイグニッションエレファントは完全に雪に飲み込まれていく。
──くそっ、息が!!
雪と共に体が激しく回転し、その勢いのまま時折なにか(恐らくは木や岩)にぶつかり苦痛が走る。完全に雪に埋まってしまったせいで、右も左も上も下も分からず、体も思うままに動かない。ただ気道が雪で詰まっているのは、苦しさのなかで理解した。
肋骨が折れ肺が潰されるのではないか、と思ってしまうほどの重量を持つ雪の中、どうにか俺は<火柱>を右手に発動させる。強烈な火は猛スピードで雪を溶かし、なんとか動かせるようになった右腕を、俺は口元に持っていき、焼く。
──痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!
あまりの激痛に死んだ方がマシだと一瞬思い、それでも火は絶やさない。気道が焼けても呼吸は出来ないので、火傷を負いながら雪を溶かすのと同時に<治癒>で火傷を治していく。
「はぁっ……はぁっ……」
幸いにも魔素を火に変えるだけなので酸素が無駄に減る心配は無い。呼吸が出来るようになった俺は次に、積み重なった雪を溶かしていく。一体どれほどの雪が俺に覆い被さっているのかも分からないが、真っ暗の雪のなかでひたすらに雪を溶かし続ける。
十分ぐらいそうしていただろうか、空気が薄くなってきて呼吸も浅い中、俺はようやく太陽を視界に収めた。
「はぁっ、やった……」
今までのなかで最も死を身近に感じた。ほとんど溶けきった雪にびしょ濡れになりながら俺は疲労によって意識を手放した。
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