深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット

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海底

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「前方、デカい! 屈め!!」

 こちらに向かってゆらゆらと泳いでくる巨大な、人間の10倍はあるだろう魚影を捉え、俺がそう叫ぶ。
 それが後ろにいるタカダとリカに届き、二人は考えるよりも早くしゃがみこむ。

 ── ザバァンっ!! 

 俺たちがしゃがんで、数コンマもしない内に、さっきまで俺たちの頭があった場所を飛び出してきたウィンドシャークの牙が掠める。

 数瞬だけ遅れて、そのウィンドシャークの尋常でない大きさと速度を受け継いだ、水しぶきというにはあまりにも大きすぎる水の塊が網のように広がって俺たちを襲う。巨人に思いっきり平手打ちでも食らったような、そんな衝撃に身体中が打ちつけられた。

「っ危なかった……」
「げほっ……げほっ」

 俺もタカダもリカも等しく濡れ鼠のように仰向けに倒れる。リカは海水を飲み込んでしまったんだろう、涙目になりながら四つん這いで咳き込んでいた。

「やれやれ、迂闊にスキルや魔法を使えないのは厄介だな」


 第7層『海空うみぞらの深野』、この層は上に海がある。海空なんて言っているが精々高さ20メートルぐらい上だ。だから常に閉鎖的だし、常に海から魔物がこちらを見ている。魔物はほとんどが魚の形で、飛び出して人間にかぶりつき海に引きずり込んで殺す。
 何より厄介なのが、ここの層の魔物は探知力に秀でていて、かつ群れで行動する種が多いという点。さっきはたまたま大きい単独で行動するタイプだったが、その前は何百匹の小さな魔物に襲われた。少しでもスキルや魔法を使えば、それの十数倍の魔物が集まってくるだろう。


 ── そんな場所に、もう半日か。

 6層から逃げるように降りた7層、息付く暇もなく上から襲って来る魔物に俺たちが取れる行動は『セーフゾーン』を探す、それだけだった。

「なあ、シズクはどうするんだ?」

 今度はタカダが先頭になり、俺とリカはその数歩後ろを並んで歩きながら左右と後ろを警戒する。とは言え、3人とも<探知サーチ>があるため、首を動かして周りを見渡す必要は無い。
 俺は何となく小声でリカにそう聞いたが、タカダにも聞こえているようだ。少しだけこちらに首を傾けた。

「シズクなら大丈夫じゃろう。あの現象は恐らく『世界図書』の効果であろう? ならば」
「<奪力ステータススティール>で、シズクがあの少年から奪った……か。彼は、殺されることが目的だとか言っていたからな」
「そうじゃな。わしらが『世界図書』の暴走を止めることなんて出来んし、それどころか死にかねない。それは当のシズクも望むことではあるまい」

 リカの言葉に俺はそれもそうかと納得する。実は自分でも同じ結論に達していたが、不安だったから。だから聞いたに過ぎなかった。

「『セーフゾーン』……あと少しか?」

 タカダが前を向いたままそう聞く。未だに彼は口数が少ないし何を考えているのかあまり分からないが、それでも蘇生をして、ここまで半日間行動を共にしたからか、少なくとも今は敵対するようなことにはなっていない。

「あぁ、『代償成就』は絶対だ。あと50メートルほど行ったところにある」

 それでも、タカダに何があったか聞かなければならない。俺たちは海の底のさらに底を歩くのだった。
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