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波間
通信
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シズクに俺が今まで7層で起こったことをちょうど話し終えた頃に、新たな体となったリカは転移してきた。
「ふぅ……出来るだけ急いで来たんじゃが、待ったかの?」
「いや、ちょうど良かった所だ、おかえり。……それは?」
「ね、私も気になってた」
リカの手には片手から少し零れるぐらいの大きさの正立方体の銀箱が載っていて、初めて見るその機械を指して俺は聞く。マサトも興味深そうにその箱を見つめている為、帝国の物だったり、転生前の世界の物だったりはしないのだろう。
「通信装置じゃよ、魔道国と帝国が秘密裏に協力して作ったものじゃ」
「帝国だと?」
自分の国の名前が魔道国と並んで出てきたことに対して、マサトは眉をひそめた。
帝国はウォーカーの命を受けて、マサト含むアレス達を俺に差し向けた完全な敵のはずだ。
今だって一時的にダンジョンを出る為にただ同盟を結んでいるだけに過ぎない。そこに命を救ってくれた借りを返すとか、そういう理由があるにしても脱出の糸口さえ掴めば、マサトはいつでも俺たちを帝国に差し出すだろう。それほどの忠心が彼にはあると、3層で既に俺は知っていた。
リカが裏切るというのは想像し難いが、それでもウォーカーの手先である帝国と魔道国が秘密裏に手を組んでいたとするならば、リカへの信用は落ちる。
「裏切らんよ。マサトも聞きたいことがあるじゃろうが、まずはこれを見てくれ」
が、そんな俺の気持ちなどお見通しかのようにリカはこちらを見て微笑む。
そのまま彼女は目を落として、手に持つ箱のボタンをカシャッと、心地良い音を立てて押した。それを地面に慎重に設置した上で少し離れたので、俺達もわけも分からぬままに、それに習ってリカの左右に並び何かが起こるのを待つ。
と、直ぐに「ジーー……」という電子音が箱から鳴って、そのまま上部の面が開いた。光が上に向かってそこから溢れ出した、と思えばいつの間にかその光は人間の形となり、宙に浮かぶ。
一言で表すならば、その人物には華があった。
艶のある金髪が、綺麗にオールバック風に纏められており、さらにその切れ長の目も相まって高潔な雰囲気を醸し出している。年齢は俺やマサトと同じくらいだろうか、高身長で青い瞳は息を飲むほど美しかった。
「ユリウス殿下……!?」
その人物を見て、真っ先にマサトがそう叫んだ。目を白黒させながらも頭を下げる。殿下、という呼び名にもう一度現れた彼の姿を見れば、その服装は確かに一般市民が身に付けるようなそれでは無い。
「久しいな、マサト。よく生きていた」
「はっ……ありがとうございます!」
「それと、私のことはこれから陛下と呼んでくれ。王位を父から継いだのだ」
「……っ! 承知致しました殿……いえ、ユリウス陛下」
とんとん拍子に会話を進める二人、敬称や敬語から分かるように圧倒的に身分の差が間にある筈なのに、それを感じさせないほどに二人の間には信頼があると見て取れた。
──というか、王位を継いだ?
話を聞いている感じ彼は現帝国の王、帝王なんだろう。
もっと言えば、つい最近まで、具体的にはマサトが俺を追いかけてダンジョンに入った頃の時点では王子だった。彼も王になった時点でウォーカーから接触を受けているはずだが、それなのにわざわざリカを通じて交渉してきたということは、前王とは別の思惑があると考えていいのだろうか。
「へぇ、君たちがウォーカーに追われているという篝火か……」
ユリウス陛下はマサトとの会話を切り上げてこちらを見る。値踏みするかのようなその視線に俺は少し居心地が悪い気がしたが、だがそれは出さないようにする。舐められるのは良くない気がした。
「さて……私は君たちの復讐を援助したいと思っている」
帝国の王は、こともなげにそう言った。
「ふぅ……出来るだけ急いで来たんじゃが、待ったかの?」
「いや、ちょうど良かった所だ、おかえり。……それは?」
「ね、私も気になってた」
リカの手には片手から少し零れるぐらいの大きさの正立方体の銀箱が載っていて、初めて見るその機械を指して俺は聞く。マサトも興味深そうにその箱を見つめている為、帝国の物だったり、転生前の世界の物だったりはしないのだろう。
「通信装置じゃよ、魔道国と帝国が秘密裏に協力して作ったものじゃ」
「帝国だと?」
自分の国の名前が魔道国と並んで出てきたことに対して、マサトは眉をひそめた。
帝国はウォーカーの命を受けて、マサト含むアレス達を俺に差し向けた完全な敵のはずだ。
今だって一時的にダンジョンを出る為にただ同盟を結んでいるだけに過ぎない。そこに命を救ってくれた借りを返すとか、そういう理由があるにしても脱出の糸口さえ掴めば、マサトはいつでも俺たちを帝国に差し出すだろう。それほどの忠心が彼にはあると、3層で既に俺は知っていた。
リカが裏切るというのは想像し難いが、それでもウォーカーの手先である帝国と魔道国が秘密裏に手を組んでいたとするならば、リカへの信用は落ちる。
「裏切らんよ。マサトも聞きたいことがあるじゃろうが、まずはこれを見てくれ」
が、そんな俺の気持ちなどお見通しかのようにリカはこちらを見て微笑む。
そのまま彼女は目を落として、手に持つ箱のボタンをカシャッと、心地良い音を立てて押した。それを地面に慎重に設置した上で少し離れたので、俺達もわけも分からぬままに、それに習ってリカの左右に並び何かが起こるのを待つ。
と、直ぐに「ジーー……」という電子音が箱から鳴って、そのまま上部の面が開いた。光が上に向かってそこから溢れ出した、と思えばいつの間にかその光は人間の形となり、宙に浮かぶ。
一言で表すならば、その人物には華があった。
艶のある金髪が、綺麗にオールバック風に纏められており、さらにその切れ長の目も相まって高潔な雰囲気を醸し出している。年齢は俺やマサトと同じくらいだろうか、高身長で青い瞳は息を飲むほど美しかった。
「ユリウス殿下……!?」
その人物を見て、真っ先にマサトがそう叫んだ。目を白黒させながらも頭を下げる。殿下、という呼び名にもう一度現れた彼の姿を見れば、その服装は確かに一般市民が身に付けるようなそれでは無い。
「久しいな、マサト。よく生きていた」
「はっ……ありがとうございます!」
「それと、私のことはこれから陛下と呼んでくれ。王位を父から継いだのだ」
「……っ! 承知致しました殿……いえ、ユリウス陛下」
とんとん拍子に会話を進める二人、敬称や敬語から分かるように圧倒的に身分の差が間にある筈なのに、それを感じさせないほどに二人の間には信頼があると見て取れた。
──というか、王位を継いだ?
話を聞いている感じ彼は現帝国の王、帝王なんだろう。
もっと言えば、つい最近まで、具体的にはマサトが俺を追いかけてダンジョンに入った頃の時点では王子だった。彼も王になった時点でウォーカーから接触を受けているはずだが、それなのにわざわざリカを通じて交渉してきたということは、前王とは別の思惑があると考えていいのだろうか。
「へぇ、君たちがウォーカーに追われているという篝火か……」
ユリウス陛下はマサトとの会話を切り上げてこちらを見る。値踏みするかのようなその視線に俺は少し居心地が悪い気がしたが、だがそれは出さないようにする。舐められるのは良くない気がした。
「さて……私は君たちの復讐を援助したいと思っている」
帝国の王は、こともなげにそう言った。
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