勇者に付き合いきれなくなったので、パーティーを抜けて魔王を倒したい。

シグマ

文字の大きさ
20 / 80
第1章 冒険者生活を始める。

報告と報告

しおりを挟む

 部屋に全員が入ったので、質問をしていくことにする。

「いくつか聞きたいことがあるのだが、まずは[ゴブリンの生角]の登録がどうなったか聞いてもいいですか?」

「それをデミスさんに話させると脱線して収拾がつかなくなりそうなので、まずはトロイメア商会の件がどうなったか教えて貰ってもいいですか?」

 そう言うと横やりが入ってこないように、デミスに端っこに立っておくようルインが指示をして、その指示にデミスは素直に従った。

 立場が下なのに、いつの間にかデミスをルインが指示出来るようになっているのには驚いたが、言うときには言わないと駄目だとルインも気付いたのだろう。

「そうですね……なら俺から先に報告しましょう。トロイメア商会にお金を確認しましたが特に何も問題ありませんでした。どうやらゴブリンの討伐方法を見てお金の匂いがしたから優遇してくれたみたいです」

「そうですか……でもあのトロイメア商会の人がそんなことを言うなんて、ほんとアヴラムさんって何者なんですか?」

「それは、ギルド長の話の後にしましょう」

「そうですか……でもそれなら何故こんなに遅くなったのですか?」

「ちょっと通りすがりの盗賊に捕まりまして、他の冒険者ギルドに報告してたら遅くなりした」

「そんなことがあったのですね。でも無事で良かったです。ちなみにどこのギルドか聞いても大丈夫ですか?」

「はい、確かレムベルとかいう名前だったと思います」

「それはあんまり嬉しくない報告ですね……」

「そうみたいですね。向こうのギルド長もこっちのギルドにライバル意識を持っていると聞いたのですが何かあるのですか?」

「いやただの子供の喧嘩ですよ。元は仲が良かったのに酒の席で、自分の方が凄いって張り合っちゃって、収拾がつかなくなってるだけなのよ」

「それは本当にどうでもいいですね……。なら、そろそろデミスさんの話を聞きましょうか」

「そうですね。ほらデミスさん、もうこっちに来ていいですよ」

 ということで、ようやくデミスがテーブルの席につく。

 アヴラムがここのギルドに来る前は、もっと出来る人というイメージだったらしいが今では全く想像できない。

■■■

「もう喋っていいかね?」

 俺とルイスが頷くとデミスが堰をきったかのように話始める。

「ありがとうアヴラム君、ビート君! 無事に新素材の登録が受け付けられたよ。本登録はこれから調査を進めてからになるみたいだけど、入手方法が方法だから、素材のランクについて揉めているみたい。だから正式に登録するのに時間がかかるみたいなので、報酬は先になるけど別にいいかな? その代わりにギルドとして謝礼金を先に払うから。それとさっきのトロイメア商会って何の事だい? 僕がいない間に、また何か凄いことをしてくれたんだね。うん、是非とも聞かせて欲しいな。 それと盗賊に遭遇してレムベルのギルドに関わったって言ったね。君達が無事で良かったけど、あそこのギルド長は嫌なヤツだから早めに縁を切ることをオススメするよ。そうそう、それでそちらのきれいなお嬢さんは、アヴラム君の元同僚っていったかな? そういえばどこかで見たことがある気がするけど、会ったことがあるのかな? まぁそれは置いといてもどうかな、良ければ君もうちのギルドに入らない? 今ならこのギルドは凄いことが出来る気がするんだからオススメだよ!」

 一通りギルド長が喋り終ったので、もう一言言っていいだろうか。

 ビートとイヴリースは唖然としているが、どうやらルインさんも同じ気持ちみたいだ。

 なので二人で同時にツッコミを入れる。

「「長い(です)!!」」

 もう何を言ってたか、初めの方は忘れたぐらいだ……

「ルインさんが説明してくれますか?」

「本当にすみません……流石にあれは私も聞き取り切れませんでしたしのでそうします」

■■■

 ルインから説明を受けたが、登録の方は正式にはしばらく掛かるということで、だいたい予想していた通りだった。

 あとはトロイメア商会についてあらためて説明して欲しいのと、イヴリースをこのギルドに勧誘したいということなので、それならこれを説明するのが早いだろう。

「えっとトロイメア商会のことですが、何を隠そうこちらのイヴはそのトロイメア商会のご令嬢です」

「ちょっと、何をいきなりばらしてるのよ!」

 今までアヴラムにも話していなかったのに、いきなりデミスとルインに話すものだからイヴリースが怒っているが、アヴラムはそれに気付かない。

「いや別にいいんじゃないのか? 嘘じゃないし」

「そうなんだけど、そう思われるのは嫌なのよ。トロイメアというフィルターを通してしか私を見てもらえなくなるから。だから今まで黙ってたのに、ギルス兄さんめ……」

 思わぬ飛び火がギルスに飛ぶので流石に反省する。

(ゴブリンで貸しが出来てたみたいだし、これでチャラということでいいかな……ごめんなさい)

■■■

 反応が無いのでおかしいなと思っていたら、どうやらイヴリースがトロイメアの関係者、それもご令嬢と聞いた途端に、デミスとルインはフリーズしたようだ。

 しばらくしてフリーズが溶けた後も、『えっと、トロイメアがイヴさんで、イヴさんがトロイメア!?』と謎の確認をした後、彼らの背筋がピンと伸びる。

 ルインには悪いが、デミスにはちょっとびびらせるほうが良い薬だろうと思い言ってみたのだが、思ったより効きすぎたみたいだ。

 これであんまり調子に乗らないようになってくれたらいいが……
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...