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第1章 冒険者生活を始める。
ギルドとアヴラムの決断
しおりを挟むどうやらギルドで何かを企んでいるみたいなので確認をする。
「えっと、どういうことかちゃんと説明してくれますか?」
「はい! 実は……」
「冒険者ギルドになるんです(だよ)!」
ルインの声に被せてデミスも身を乗り出して説明を被せてきた。
(本当に懲りないなこのオッサン……)
だが今回の一件はルインも興奮を押さえられないのか注意することなく、一緒になって説明し始める。
「そうです!」
「「ついに私たちの(俺達の)ギルドが」」
「「冒険者ギルドになるんです(だ)!」」
「は、はぁ。そうなんですか……」
二人して身を乗り出してくるので、もう何か勢いで押されるというか、たしなめる気にもならない。
冒険者ギルドになることが、よほどの念願だったのだろう。
ここまでテンションが高くなるルインさんは初めて見た。
■■■
話を聞いていくと、ギルスとルインがアヴラムに隠して何をしていたのか、そして噂の正体は、ギルド[クリフォート]を冒険者ギルドとして新たに認可させると言うことだったらしい。
(思っていたよりまともな企みで良かった……)
そして何故ここまで喜んでいるかというと、冒険者ギルドを新たに設置するには規制があるらしく、様々なハードルを越えなければいけないのだが、その内の一つである、[一ギルドとして全体の発展に著しい貢献が認められる場合]という項目がなかなかに厄介で、目に見える成果というものを長年欲していたそうだ。
更に新設が認可された後はテスト期間が設けられ、その間に確かな実績を残しギルドとして成り立つという実証をしなければいけないので、計算できる冒険者の引き抜きも必要だった。
そこにたまたま表れたのがアヴラムで、新しい素材を手に入れた(目に見える成果)だけでなく、その入手方法が他の誰も真似できないようなもの(実力者)だった。
つまりアヴラムがこのギルドに来たことによって、一度に[クリフォート]のギルドが抱えていた課題を二つもクリアさせたことになる。
■■■
「本当にありがとう! うちのギルドにスペードの称号を掲げられる日がくるなんて! これで[クラウンギルド]の称号にまた一歩近づくことができた。本当に君のお陰だよ!」
デミスがそしてルインが何度も感謝してくる。
■■■
[クラウンギルド]というのは、トップオブトップのギルドで王様により実績を認められ、クラウンの名を授けられることにより、紋章にクラウンを掲げることを許されたギルドのことだ。
ギルドにとっては[クラウンギルド]になることが最大の目標であり、栄誉である。
「まぁ喜んでくれているのはいいんですが、俺が仮契約というのを忘れていませんか? まだこのギルドに所属するとは言って無いのですが……」
「なっ! たしかにそうですけど、アヴラムさんならこのギルドに所属してくれるでしょ?」
ルインが慌てて聞いてくる。
まだアヴラムの事をまだあまり知らないはずなのに、随分と信用してくれているみたいだ。
まぁこの人達の思惑通りに進んでいるのは、どこか納得がいかないけど、既に勝手知ったるこのギルドで冒険者として登録できるのなら、一番良いことなのかも知れない。
「分かりました……ですが本当に登録するには一つ条件があります」
「それは何ですか?」
「これまでの自分の経歴を明かしますので、それを絶対に外部に漏らさないという約束をして下さい」
聖騎士団に所属していたという以上に秘密にしていることが何なのか分からないようだが、デミスはアヴラムの申し出を受け入れる。
「……分かった。君がそう望むのであれば、その秘密は私とルインで墓場まで持っていくことを誓おう。そして可能な限り君を守ることを約束する!」
ギルド長として誓ってくれるのであれば、アヴラムはもう迷う必要も無い。
いずれはどこかの冒険者ギルドに所属しなければいけないことは分かっていたのだから、こうして意図した訳では無いが縁が出来たのも、偶然では無いかもしれない。
それでも迷惑を掛ける可能性があるので、確認はしておかなければいけない。
「俺がギルドに正式に登録することで、本来なら受けるはずの無い嫌がらせを受けるかも知れないが、それでも大丈夫ですか?」
「私はうちのギルドに登録してくれる人は自分の子供と変わらないと思っているんだ。その子供が困っているなら手を貸さない親がいると思うかね? 私は何があっても大丈夫だから、アヴラム君も私を信じてくれ!」
本当に先程まで暴走していた人と同じ人とは思えない。
(いつもこうなら良いのだが……)
「分かった。俺はこのギルドに所属するよ」
「そして、俺のこれまでの事を話そうと思う。ビートそして、イヴも知っていることと知らない事があると思うから聞いてくれ」
こうしてアヴラムはこれまでの経歴と、そしてなぜこのギルドにやって来ることになったのかを話始めた。
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