勇者に付き合いきれなくなったので、パーティーを抜けて魔王を倒したい。

シグマ

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第2章 エルフの秘宝

二の轍

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 昨日はハンスに夜の街を連れられ(実際には昼からだったが)一日が終わってしまった。
 ショウグンガザミを倒しに行く予定なのだが、その前にガザミの仕入れ依頼を受けに行く。

■■■

 仕入れの依頼を受けるためにアヴラム達はギルド[クリフォート]にやって来た。
 しかしルインの姿が見えないので、他の受付嬢に聞いてみる。

「すみません、ルインさんはいますか?」

「いえ今日はお休みなのでいないのですが、ルインさんに急ぎのご用件でしょうか?」

「いやそう言うわけではないのですが……」

 ルインはまさかの休みだったし、ついでにデミスも所用でいないそうだ。
 簡単な依頼を受けに来ただけだから問題は無いとはいえ、こちらのことを知らない様子だし、ちょっと人見知りをして気が張る。

「えっと依頼を受けたいのですが、ガザミの仕入れの依頼はないですか?」

「依頼ですか? そうですね、ではまずはギルドカードを拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」

 ここのギルドに恩を売っているとはいっても形式上ほとんどは裏でこそこそと行ってきたので、やはりこの受付嬢はアヴラム達の事を知らないようだ。
 その為、他の冒険者と同様の通常の手続きの流れで身分確認をする必要があるのだろう。
 アヴラムとビートは二人とも言われた通りにギルドカードを提出する。

 ギルドカードの表面は常に表示されているが、裏面は本人の意思で魔力を込めなければ表示されることは無いので、ギルド員でも閲覧することは出来ない。
 なので名前とランク、称号と所属のみが表示されたギルドカードを渡したのだが、それだけでも驚かれる。

「あれ!? お二人ともこのギルドの所属なのですか?」

「ええそうですけど、何かおかしいのですか?」

「いやランクがFとGなのに……。もしかして最近ギルド長が話している、凄い人ってあなた方なのですか?」

「まぁ多分そうなんですが、所属にランクって関係あるんですか?」

「それは……」

 ということで所属とランクについて説明してもらった。

■■■□□□
 ギルドに所属するということは基本的にはそのギルドの専属になる。
 専属になると所属ギルドにとって捌ききれない依頼をこなしたり、特別な依頼を受け付ける必要がある。
 その為にはある程度高ランクの依頼を達成する必要があるので、ギルドの専属になるのは特例を除き普通はBランクからだ。

 例外としてはギルドが実力を認めるなどの場合でアヴラムとビートはこの特例措置で所属している。

 専属とは言っても他のギルドの依頼を受けられない訳ではなくて、基本的には所属ギルドから要望された依頼をこなしていれば、他の人と変わらない。
 要望された依頼を定期的にこなす必要性があるが、その代わりに依頼の達成報酬とは別に毎月給料が支払われる。

 そして冒険者カードのランクについてだが、ランクにはそれを決定付ける指標がある。

 その指標は聖騎士、冒険者、商業、市民の4つの系統それぞれにおいて定められ、星の数で評価される。

 ランクを上げるためには4つの系統の内、何れか一つでいいので星の数を増やす必要があり、複数の系統で星を獲得している場合は、最も星の数が多いものでランクを決定する。

 そして星の数とランクの関係だが、星は1星(ひとつぼし)から10星(とおつぼし)まであり、GとFランクは0星、Eランクは1と2星、Dランクは3と4星、Cランクは5と6星、Bランクは7と8星、Aランクは9星、Sランクは10星になる。

 ということで普通はギルド専属になれるランクBに到達するためには、何かしらの系統の評価を7星にする必要があるがアヴラムとビートは0星である。
■■■□□□

「全く知らなかったんですけど……」

「普通は知っている人が多いですし、まぁ説明も追加サービスですから省いたんでしょう」

「そうだったんですね……」

 普通はこういう情報を知った上で冒険者になるのだろうが、色々とすっ飛ばして聖騎士団になったアヴラムがおかしいだけなのだろう。
 なので教えてくれなかったルインを責めることは出来ない。

「それでガザミの仕入れの依頼はありますか?」

「そうでしたね、少しお待ち下さい」

 しばらくして持ってきてくれた依頼はこれだ。
―――――――――――――――――――――――――――
ギルド依頼:[ガザミの身]の仕入れ
[ランク:F][期限:無し]

水辺の近くならどこでも現れる[ガザミ]の身を仕入れて貰いたい。

その身の美味しさから常に足りない状況なので、仕入れられるだけ仕入れて貰いたい。
身の状態が良品であれば殻の状態は問わない。

[ガザミ]はFランクの魔物だが近くに[ショウグンガザミ]がいることがあるので、直接調達する場合は気を付けること。
―――――――――――――――――――――――――――

 Fランクの魔物は攻撃的でもなく、近付かない限り基本的には無害であり動物と大差は無いので、たとえ冒険者ではなくても知識さえあれば倒すことが出来、直接調達するとは討伐してくるという意味だ。

「ビートさんも依頼の達成履歴がありましたので、ランクを更新しておきましたので確認してください」

「アリガトう」

 ということで、ビートのランクもFになった。

「それでは行ってきますので、デミスさんが帰ってきたらまた来ると伝えてください」

 アヴラムとビートはさっそく出発しようとするのだが、呼び止められる。

「あっちょっと待ってください、これをお願いします」

 そう言われ何かが書かれた紙を差し出された。
―――――――――――――――――――――――――――
[サービス料]銀貨5枚。
(説明料:銀貨5枚。)

合計金額:銀貨5枚。
―――――――――――――――――――――――――――

「まさか……」

「はい。先ほどギルドへの所属とランクについて説明させて頂きましたので、その料金ですのでお支払い頂けますか?」

「……はい」

 ルインとデミスなら何を聞いてもタダで教えてくれるから、まんまとサービス料の事を忘れていたアヴラムだった。
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