勇者に付き合いきれなくなったので、パーティーを抜けて魔王を倒したい。

第2章 エルフの秘宝

商会からの報告

　デミスにトロイメア商会から報告があるということを聞いたので、ビートと二人で向かった。
　直ぐに応接室に通してくれて、フォッシルを呼んできてくれるそうだ。

■■■

「やぁアヴラム君！ また面白いことをやっているのかい？」

　フォッシルではなくギルスが部屋に入ってきた。

「あれギルスさん？ 用事は済んだのですか？」

「ああ、そういえば一度訪ねてきてくれてたんだったね。聖都市でちょっとした用事があったんだけど。……勇者の話を聞きたいかい？」

「大規模遠征のことですか？」

「おや？ 知っているとは情報が早いね。まだ分からないことも多いけど、大規模遠征は勇者の発案みたい、それにきな臭い噂もちらほらあるみたいだね。まぁ我々としては大きな取引が出来たから良いけどあまり関わりたくないものだよ」

「そうなんですか。……既に色々と調べているのでしょうが、詳しいことが分かったら教えてもらっていいですか？」

「ああ勿論そうさせてもらうよ。それよりイヴリースに何か話したでしょ、こぴっどく叱られたんだけど……。まぁいいけどね。それとここからが大事な話だけど、それはフォッシルに話して貰うよ」

　呼ばれてフォッシルが部屋に入ってくる。気を使ってくれて部屋の外で待っていてくれたみたいだ。

「アヴラム様、ビート様、お待たせしました。エルフについての情報を集めて参りました」

「全然待ってないですよ、むしろ早すぎませんか？ 」

　エルフの情報の入手をお願いしてからまだ数日しか立っていない。レジェンダリーアイテムへの手掛かりを調べるにしては想定を遥かに上回る早さだ。

「国の様々な場所に情報網を張り巡らせていますからね。そして我々の商会の黒い噂から、普通では買い取ってもらえないようなモノを買い取れないかと打診があったりするのです。その中に普通では無視するようなエルフに関するものがあったので詳しく調べてみると、ある村がその出所のようでした」

「エルフに関するものとはなんですか？」

「身元は明かさなかったですが、男が［エルフの涙］を売りにきたのです」

「えっ！ それはどこに！？」

「いやいや落ち着いてください。エルフの情報を求めていましてので僅かな可能性に掛けて買い取り検証を行いましたが、それは本物ではありませんでした」

「……そうですよね、そんなに簡単には手に入らないですよね」

「しかしそこで出てくるのが、その偽物の出所となっている町なのです」

「どういうことですか？」

「どうも噂を検証していくと、その村の何者かがエルフを捉えているようなのです」

「なっ！ それは本当ですか？」

「ええ、恐らく村の領主が関わっていることまでは突き止めたのですが、断言することは出来ませんのでこればっかりは実際に確かめてみるしかありません」

「そうですよね、分かりました。明日、その村に向かいましょう」

「それでですね、案内のために私も随伴させていただきますが問題ありませんでしょうか？」

「ええもちろんですとも。こちらからお願いしたいと思っていた所なので、よろしくお願いします。所で今回の情報料はどうしましょうか？」

　これだけの早さで情報を集めてきたことに加えて偽物でもエルフの涙を買って検証までしてくれているので、かなりの経費がかかっているはずだ。この問いには横で話を聞いていたギルスが答える。

「それは今後の君の活躍に期待ということでいいんじゃないかな。特に何かをして欲しいとお願いしなくても、面白いことをしてくれそうだしね」

「そうですね。我々としてもエルフに関するものを仕入れることになる可能性に投資出来ていると思えば今回の経費も安いものです」

「そうですか。……別に面白いことをするつもりは無いんですけどね」

「ふふっ、まぁ楽しみにしているよ」

「さいですか……」

■■■

　次の日、善は急げということでエルフが捉えられているかも知れない［マルク］の町に行くことになったのだが、しばらくフェブラの街を開けることになるのでギルドに報告に行く。
　デミスからは『ギルドのことは何も心配ないからよろしく頼むよ』とルインからは『無茶だけはしないで下さい』と心快く送り出してくれた。

　マルクの町までの移動方法は幾つかあるが、余裕はあっても急ぎの旅でもあるので、近くの街までなら飛竜船が出ているので使用し、そこからは地竜車を乗り継いだ。
　飛竜船に乗る機会は中々無くて公務以外では初めて乗ったのだが、その利用料金の高さに驚かされた。
　防犯の都合上、前払い制なのだがそうでなければ危うくここで無一文になるところだった。
　ギルドに預けたお金を急いで取りに帰ったので、ルインに笑われたが仕方がない。

(それにしてもガザミで稼いでいて良かった……)

　地竜車での道中にちょっとしたトラブルはあったわけだが、そのお陰でお金を稼ぐことが出来、今回の旅費を回収出来たので逆に良かった。

　こうして一悶着があったのだが、アヴラム達はエルフがいる可能性が高いマルクの街にたどり着いたのであった。