勇者に付き合いきれなくなったので、パーティーを抜けて魔王を倒したい。

シグマ

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第2章 エルフの秘宝

ウワサ

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 ショウグンガザミの一件で、冒険者ギルドになったばかりの[クリフォート]にも連絡が届いているから、ルインも心配しているとのことなので、報告をするために急いで向かう。

■■■

 ギルドに到着すると、先ほどネフィリムと同じようにビンタされ怒られ『いくら強くても、まだ未成年なんだから無茶はしないで!』と泣きながら言われ反省する。

 子供扱いされて嬉しいのはなぜだろうか。

 そしてレムベルでしたことと同じ報告をルインとデミスにもした。

■■■

「古龍に謎の[…]ですか……。人かどうかも分からない[…]はおいといて、古龍については龍人なら何かを知っているんではないではないでしょうか?」

「確かに龍人のレラ様なら何かを知っているかもしれないですね。後でイヴに連絡を入れて聞いてもらえませんか?」

 アヴラムが連絡を直接入れたいところではあるが、聖騎士団への連絡は検閲されて無事に手紙が届く保証が出来ないのでお願いすることにした。

「そうですね後で連絡してみましょう。ギルド本部にも問い合わせてみますので、何かわかったらまたお伝えします」

「お願いします。とそういえばデミスさん、[エルフの涙]について何か分かりましたか?」

 しばらくの間、ギルドを留守にして調べていたようなので尋ねる。

「そのことなんだが……。すまん、君に黙ってビヴロストで色々と探ってきた」

「何をですか?」

「君が辞めてから聖騎士団にどのような動きがあったかについてだよ」

「なっ! 何のためにそんなことを……」

「今回のギルド本部の異常ともいえる決定。その真意を確かめておかなければ、今後も何をされるか分からないからね。今回のような想定外でただ座して死するつもりはさらさらないから、先手先手で行動を起こすためには知っておかなければいけなかったんだよ」

「そうだったんですね……。それでどうでしたか?」

 聞きたいが別に聞きたくもない不思議な面持ちで尋ねる。

「結論から言うと外部から進言がされたことは間違いない。だけど、ギルド本部は君の実績を知っていたからこその決定をしたみたいだよ」

「そうですか……」

 ギルドに登録出来た時点である程度は予想していた所もあるが、もっと徹底的に嫌がらせに動いてくることも考えていたのでとりあえずは安堵する。

「ギルド本部として、教会への体裁を保つためにも無理難題を用意したけど、アヴラム君が[救国の聖騎士]と呼ばれるくらい様々な貢献をしてくれていたことも理解していてるから、相当悩んだみたいだよ」

「でも入手不可能とも言える依頼を準備したということは、結局はギルドも教会に頭を垂れているということですか……」

「いや必ずしもそうではないみたいだよ。決して口外はしないだろうけど、実は無理難題だけど不可能ではないという確信がギルドにはあったみたい」

「それは本当ですか!? それにしてもそんな情報をどうやって手に入れたんですか?」

「はっは! コネとお金は使い用だよ。思わぬところに繋がりはあるってことさ」

「そうなんですね……」

 今までただの調子に乗ったオッサンの認識だったが、本当にデミスを見直さなければいけないなと思う。

■■■

 もう少しデミスの話を聞いていくと、教会は確かに圧力を掛けてきたが、基本的にはアヴラムの存在を消さんとするような動きを見せていて、嫌がらせをするというよりはどちらかというと静観しているそうだ。
 そして勇者一向からアヴラムが抜けたということは隠して、最初から別のメンバーがいたことになっているらしい。
 そして大々的な世間へのお披露目と、初の大規模遠征を検討しているらしい。

「まさかもう[ネームド]を倒しに行くのか? 幾らなんでも早すぎるだろ?」

「そうなのかい? たしかに話に聞く限りではクズだし頼りにしたくはないけど、腐っても勇者で大聖剣まで持っているんだから何とかなるんじゃないのかい?」

「まぁ誰が後任に就いたのか気になるところだけど、俺がいたときの勇者の実力では無謀も良いところだ」

 ルインも正論を言う。

「そんなことになったらそれこそ教会の威信なんて崩壊してしまいそうなのに、功を焦っているのでしょうか?」

「まぁ内部も色々とごたついていたからありえるのかな。それとも何か勇者に劇的な変化があったのかな……」

 勇者が強くなっているならそれはそれでいいのだが、嫌な予感もする。
 神官が持ってきた大聖剣を手にした後の勇者の変化は普通ではない気がする。
 イヴリースが無事に合流出来たなら聞くことにしよう。

■■■

 一通り聞きたいことを聞けたので、ついでに聞きたかった事を聞く。

「それはそうとギルドカードの称号なんとかなりませんか?」

 そう言ってアヴラムとビートのギルドカードをデミスに見せる。

――――――――――――――――――――
名前:[アヴラム]
ランク:[E]
称号:[ゴブリンコレクター]
所属:[クリフォート]
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
名前:[ビート]
ランク:[E]
称号:[ゴブリンスレイヤー]
所属:[クリフォート]
――――――――――――――――――――

「称号が不本意過ぎるのですが……」

「それは仕方ないよ、ギルド員の称号はギルドで達成した依頼内容で決定されるからね。仕入れの依頼しかやってなかったアヴラム君はコレクター、生角を回収したことになってるビート君はスレイヤーになってるんだよ。称号の決定には時間差があるからガザミの依頼もこなしたみたいだし、これからまた変わるから気にしないでいいよ」

「そんなものなのですね……」

(もっと良い称号を貰えるように頑張らなければ)

「そうそう、そう言えばトロイメア商会から君達宛に連絡があって、報告したいことがあるから一度来て欲しいそうだよ」

「報告って、まさかもう何か情報を掴んだのでしょうか?」

「そうかもしれないね。直接報告したいそうだから例の件に間違いないと思うよ」

「分かりました、ならちょっと行ってきます」

 随分早かったが、もうエルフの情報を手に入れてくれたのだろう。
 日が暮れてきたが今後の事を考えると少しでも早く知りたいので、この日の内に聞きに行くことにした。
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