言葉足らずの君に私はまた恋をする

reisui

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早う。名前を名乗らんか

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「あー久しぶりに運動したぁ!!!大学時代には10ゲームぐらい余裕で投げれたんだけど....やっぱもう年かね?」

そういって同じ職場で同じ部署の日向ひゅうが先輩が笑いながら声をかけてきた。

「いやぁ。先輩がそんな元気なのに年とか言ったら私はもうおばあちゃんですよ。3ゲームで選択しといて良かったです。ボーリングの玉ってこんなに重たいものでしたっけ?」

「ふふふ。オフィスワークであまり体を動かしてないのがこたえたようね彩夏さやか

周りでボールを転がす音、ピンにあたってガラガラと崩れ落ちる音が聞こえる。
もともと運動はそんな苦手なほうじゃなく、体力にも割と自信があった彩夏だが、先輩と30以上離れたスコアで負けてしまっている。それに、学生の頃よりはるかに低いスコア得点であったため、確かに。社会人になってからこう遊ぶこともなかったな。と思った。

私も、日向先輩も工場事務で働いている。
工場勤務というとブルーワークなイメージが多いが、私たち事務職はそんなことはなく毎日PCと向かい合っている。
眼がしょぼしょぼするし肩凝りひどいし腰が痛くなる~って休み時間に文句を垂れたところ、体を久々に動かしたいね、という話になり一緒にボーリングに行くことになった。
明日、確実に腕が筋肉痛だが、こんなに遊んだのは久しぶりだ。
彩夏は誘ってくれた先輩にお礼を言おうとしたが、いつの間に靴を履き替え終えていた先輩はボール先に戻してるねと言って席を立って行ってしまった。

彩夏は先輩の後を追いかけるように急いで帰る支度をした。




(やばい___落ちる。。。)
日向がボールを返却しようとしたら
「あー、おいていかないでよぉ」
と走ってきた子供と接触してしまい、きちんと返却棚へしまうことができなかった。
このままでは、足に直撃する____日向は骨折を覚悟し目を瞑ろうとしたその時、

いきなり横から大きな手が伸びてきて、その手は空中でボールを捉えた。

振り返ってみると、背の高い20代半ばぐらいの若い男性が、手が届いてよかったです。無事ですかと、声をかけてきた。

「あ。。。ありがとうございます。そちらこそお怪我はありませんか」

「はい。僕はきたー」男性が返答しようとしたとき、
「もーかずさん!ゲーム終わった瞬間に席立ったと思ったら片付けんの早くないっすか。カップも、ボールも靴もなくて、机も整ってたので、席間違えたと思ったじゃないですか!・・・ってあれそのかわいい子誰ですか?僕がお手洗い行ってる間にナンパですか?僕にもかわいい子紹介してくださ・・・うっわ。マジか。姉さん?」

いきなり現れたその男もとい私の弟日向拓海ひゅうがたくみは驚いた顔でこっちをガン見していた。

いや。違う、ガン見というかこれはフリーズしているな。瞬き一つなくこっちを見て固まっている。

「拓海さんのお姉さん?いつもお世話になっております。」

「え。あっ。はい。。。。あ。こちらこそお世話になっております。」

やばい、私も弟につられて脳がフリーズしてたかも。いきなりかけられた声に驚きつつ日向はそう返した。

「和さん。悪いことは言わないので、姉さんをナンパするのはやめといたほうが良いですよ。姉さん。マジで姉さんなんで。」

あ。弟がやっと動き出した___っておい。どういうことだ。

「大丈夫です。拓海さん。ナンパしてません。会話してます。」

おい。こっちもどういうことだ。ちょっと意味が分からんってかコイツも混乱してんのか!?
日向は心の中でツッコミを入れながら、より混乱していく脳に落ち着けと命じつつ、後ろから掛けられた声に振り向いた。

「日向先輩お待たせしました!ボール片付けてくれてありがとうございます!机周りとか片付けたので、いつでも出られますよ。ってあれ?この人たち知り合いですか?」

声をかけながら近づいてきた彩夏はまじまじと2人を見つめた。

和さんと弟から呼ばれている男性は、「塩瀬彩夏しおせさやか!?」
そうハッキリと、後輩の名前を口に出した。




どういうことよ。
先輩の後を追いかけていったら、知らない人に私の名前をフルネームで口にされた。
記憶を蘇えらせてみたが、知らない。出てこない。
1人だけ面影が似ている人は出てきたが、そんなわけないと本能的に思った。
その人は、そんな私の心情など気にもせず話し掛けてきた。

「塩瀬さん。久しぶり、すごく大人っぽくなったね」
やだ。どうしよう全く誰かわからない・・・っていうかなんでこの人は、私のことを「塩瀬さん」って断言してくるの?私ばかり思い出せないみたいで悔しいし、なんか怖い。
これは、正直にお名前聞くのがベストよね?
覚悟ができた彩夏はおそるおそる質問をすることにした。

「すみません。どなたか思い出せないのですが、お名前教えていただいてもよろしいでしょうか」

「あっ。ごめん。確かにいきなり話しかけられても困るよね」
そう言って、その人は一呼吸おいてから名乗り始めた。

「僕の名前は、鮎川和樹あゆかわかずき。もう、7年も昔のことだから流石に覚えてないかな。」
高1ぶりだね。そういって彼は笑った。



覚えていないわけないじゃないか。
忘れもしない。彼は初恋の人だ___でもどうして?
彩夏は彼の事が少し怖い__そう感じてしまった。








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