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ちょっと止まれそこの酔っ払い
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『鮎川和樹』確かに彼はそう名乗った。
忘れはしない____いや。忘れたくても忘れられなかった。彼は私の初恋の人だ。
彼と出会ったのは高校1年生の時、一目惚れとかそういうのではなく、最初はただのクラスメートだったのだが、そこから徐々に好きになっていき高校2年生の夏の大会が終わった後に告白した。
告白した時のことは鮮明に覚えている。
彼の返事を聞くために放課後中庭へ行ったところ、先についていた彼は私の顔を見るなり泣き出してごめんねと言ったのだ。
こんなひどい振り方をするのだったら、告らなきゃよかった……とすごく後悔した苦い思い出がある彩夏は、その彼とこんなところで出会って親しげに話しかけられている現状に戸惑いを隠せなかった。
「パンッ」
乾いた音が鳴り、振り返ってみると日向先輩が手を鳴らしていた。
「決めたわ。こんな真っ昼間からだけど今から飲みましょう!今日はこの後時間あるかしら?」
「え。あっはい。今日は拓海さんと出かける以外予定入ってないから僕はこの後暇ですけど....」
「僕も空いてるっす」
2人の予定を確認した先輩はこちらを向き「彩夏もこの後の予定は無かったわよね?」と確認してきた。
彩夏はコクリと頷いた。
「私と彩夏は先に帰って準備しているから、拓海はその人連れてお酒と食材買って私の家に来なさい。たこ焼きプレート家にあるし、そうね。タコパでもしましょうか。久しぶり弟に会ったんだし、彩夏の高校時代のことも聞きたいし、色々気になることがあるから世間話でもしましょう!」
先輩はそう言って彼らと別れ、今私はリビングの片付けを手伝っている。
ソファーを動かし終わった先輩に、彩夏は作業の手を止め声を掛けた。
「日向先輩、その...いきなりの事すぎて...どんな顔で彼に会って良いのかわかりません。」
「ははは。ゴメンゴメン。急に誘ってしまったのは申し訳ないけど、あんなところで突っ立ってたってなにも始まらないでしょ?」
「いや。別にそれについては、先輩の決断はいつもいきなりなので、もう気にならないっていうか……なんと思ってないですし、たこ焼き好きなので楽しみなんですが、なんて言うか...その…彼は....」
「もう、彩夏。なに緊張してるのよ?知らない仲じゃ無いんだし、高校の同級生でしょ?同窓会with日向家みたいなものじゃない。私も、弟もいるんだし大丈夫よ」
先輩がそう言い終えた頃、丁度ガチャリとドアが開き、「お邪魔しまーす」と彼らは上がってきた。
「姉さん。こんなもんでいいっすかね?」
拓海はレジ袋を渡しながら問いかけた。
「わぁ...結構買ったね。お金は?」
「あー。別にいいっすよ。和さんと話し合って食費は僕らで割り勘することにしたっす」
「あらありがとう。よっしゃ!彩夏!!!甘えちゃいましょう!私らは食材切るから、拓海たちは生地作り頼んだわ。ボールとかはテーブルに出してるから....あっ。そうだプレートももう温めちゃおっか!洗面台はこの奥にあるから拓海、えっと...鮎川さん?よろしく!」
そうやって、先輩に促されるままたこ焼き作りが始まったのであった___。
ジューっと生地が焼ける音が聞こえる。
生地作り、食材切りが終わり、プレートが温まったため、テーブルを囲み生地を流し各々好きな食材を投入した。
たこ、天かす、ねぎ、紅生姜などが入った一般的なモノから、タコさんウインナー、キムチ、チーズ、お餅、アスパラガス、こんにゃくなど、なんか色々入ったものがある。
最初食材を見た時は驚いた。とりあえず切ったけど。ウィンナーをタコさんにしたのは日向先輩だ。へへへこの子当たりにしよう!とかなんか言ってた気がする。日向家の人たちは遊び心にまみれているのかもしれない。
そんなことを思っていたら、そういえば自己紹介をまだしていないことに気づいた。
「あの、まだ自己紹介してないので、ちょっと遅くなりましたが自己紹介始めてもいいでしょうか?塩瀬彩夏といいます。日向先輩とは同じ部署で一緒に仕事をしています。彼...えっと鮎川さんとは高1の時同じクラスでした。よろしくお願いします。」
「日向姉です。」
「日向弟っす。気軽に拓海と読んで欲しいっす。」
「!?日向家の自己紹介短くていいですね。補足します。拓海さんとは同じ社員寮で一緒に飼育員やってます。いつも僕がお世話になっています。鮎川和樹です。」
(え。補足できてなくない?)
そんな彩夏の心の声に先輩は気づいたのか、
「マジか。鮎川さんも拓海と動物園で働いているのか」と、話を広げてくれた。
「そうなんすよ。動物の扱いとかはまだまだなんすけど和さんマジすごくて主任や皆から一目おかれてるっす。何がすごいって記憶力が化け物なんすよ。厚さ10cmぐらいあるマニュアル本を読破し、覚えちゃったんで最近はその記憶力を生かして団体客の案内役とかやってるっすね。あっ。そうだ!機会があったら遊びに来てくださいよ。和さん案内役に駆り出してやるんで」
「ああ。それは良いですね拓海さん。そんな僕の業務を率先的に増やそうとしてくる拓海さんにこのたこ焼きあげます。」
そう言って鮎川はたこ焼きが乗ったお皿を差し出した。
先程まで生地だったたこ焼きはいつの間にか丸くなっていた。
「えっと。日向さんはタコさんウインナーとキムチチーズと、普通のたこ焼きの具材が入ったものをここら辺一帯に囲うように入れてましたね?」
そう言って彼はたこ焼きを取ろうとしたが、
「待って、どうせならロシアンルーレット方式で食べない?取るんだったらこの大皿へ移して!……っていうか本当記憶力化け物なのね!」
「........さすが拓海さんのお姉さん、遊び心がすごいですね。そして姉弟して化け物呼びはひどくないですか。」
どうやら鮎川も彩夏と同じことを思ってしまったようだ。
鮎川が、大皿へたこ焼きを移し終え各々が好きな飲み物を手にしたことを確認した日向先輩は乾杯の音頭をとった。
嬉しいことにピーチ味の缶チューハイがある。彼は私が桃好きなの覚えててくれたのかなと思いつつ、4人で乾杯した。
そこからは、飲んで、話して、食べて、焼いて、また飲んでを繰り返して___
騒いで、笑って、驚いて、いろいろなことを話した。鮎川は昔と全く変わらなくて、仕草とか笑い方とか、言葉足らずで少し天然なところとか、とても懐かしく感じた。
そんな楽しさと懐かしさを感じる居心地が良い空間の中、私はいつの間にか寝てしまっていた______。
忘れはしない____いや。忘れたくても忘れられなかった。彼は私の初恋の人だ。
彼と出会ったのは高校1年生の時、一目惚れとかそういうのではなく、最初はただのクラスメートだったのだが、そこから徐々に好きになっていき高校2年生の夏の大会が終わった後に告白した。
告白した時のことは鮮明に覚えている。
彼の返事を聞くために放課後中庭へ行ったところ、先についていた彼は私の顔を見るなり泣き出してごめんねと言ったのだ。
こんなひどい振り方をするのだったら、告らなきゃよかった……とすごく後悔した苦い思い出がある彩夏は、その彼とこんなところで出会って親しげに話しかけられている現状に戸惑いを隠せなかった。
「パンッ」
乾いた音が鳴り、振り返ってみると日向先輩が手を鳴らしていた。
「決めたわ。こんな真っ昼間からだけど今から飲みましょう!今日はこの後時間あるかしら?」
「え。あっはい。今日は拓海さんと出かける以外予定入ってないから僕はこの後暇ですけど....」
「僕も空いてるっす」
2人の予定を確認した先輩はこちらを向き「彩夏もこの後の予定は無かったわよね?」と確認してきた。
彩夏はコクリと頷いた。
「私と彩夏は先に帰って準備しているから、拓海はその人連れてお酒と食材買って私の家に来なさい。たこ焼きプレート家にあるし、そうね。タコパでもしましょうか。久しぶり弟に会ったんだし、彩夏の高校時代のことも聞きたいし、色々気になることがあるから世間話でもしましょう!」
先輩はそう言って彼らと別れ、今私はリビングの片付けを手伝っている。
ソファーを動かし終わった先輩に、彩夏は作業の手を止め声を掛けた。
「日向先輩、その...いきなりの事すぎて...どんな顔で彼に会って良いのかわかりません。」
「ははは。ゴメンゴメン。急に誘ってしまったのは申し訳ないけど、あんなところで突っ立ってたってなにも始まらないでしょ?」
「いや。別にそれについては、先輩の決断はいつもいきなりなので、もう気にならないっていうか……なんと思ってないですし、たこ焼き好きなので楽しみなんですが、なんて言うか...その…彼は....」
「もう、彩夏。なに緊張してるのよ?知らない仲じゃ無いんだし、高校の同級生でしょ?同窓会with日向家みたいなものじゃない。私も、弟もいるんだし大丈夫よ」
先輩がそう言い終えた頃、丁度ガチャリとドアが開き、「お邪魔しまーす」と彼らは上がってきた。
「姉さん。こんなもんでいいっすかね?」
拓海はレジ袋を渡しながら問いかけた。
「わぁ...結構買ったね。お金は?」
「あー。別にいいっすよ。和さんと話し合って食費は僕らで割り勘することにしたっす」
「あらありがとう。よっしゃ!彩夏!!!甘えちゃいましょう!私らは食材切るから、拓海たちは生地作り頼んだわ。ボールとかはテーブルに出してるから....あっ。そうだプレートももう温めちゃおっか!洗面台はこの奥にあるから拓海、えっと...鮎川さん?よろしく!」
そうやって、先輩に促されるままたこ焼き作りが始まったのであった___。
ジューっと生地が焼ける音が聞こえる。
生地作り、食材切りが終わり、プレートが温まったため、テーブルを囲み生地を流し各々好きな食材を投入した。
たこ、天かす、ねぎ、紅生姜などが入った一般的なモノから、タコさんウインナー、キムチ、チーズ、お餅、アスパラガス、こんにゃくなど、なんか色々入ったものがある。
最初食材を見た時は驚いた。とりあえず切ったけど。ウィンナーをタコさんにしたのは日向先輩だ。へへへこの子当たりにしよう!とかなんか言ってた気がする。日向家の人たちは遊び心にまみれているのかもしれない。
そんなことを思っていたら、そういえば自己紹介をまだしていないことに気づいた。
「あの、まだ自己紹介してないので、ちょっと遅くなりましたが自己紹介始めてもいいでしょうか?塩瀬彩夏といいます。日向先輩とは同じ部署で一緒に仕事をしています。彼...えっと鮎川さんとは高1の時同じクラスでした。よろしくお願いします。」
「日向姉です。」
「日向弟っす。気軽に拓海と読んで欲しいっす。」
「!?日向家の自己紹介短くていいですね。補足します。拓海さんとは同じ社員寮で一緒に飼育員やってます。いつも僕がお世話になっています。鮎川和樹です。」
(え。補足できてなくない?)
そんな彩夏の心の声に先輩は気づいたのか、
「マジか。鮎川さんも拓海と動物園で働いているのか」と、話を広げてくれた。
「そうなんすよ。動物の扱いとかはまだまだなんすけど和さんマジすごくて主任や皆から一目おかれてるっす。何がすごいって記憶力が化け物なんすよ。厚さ10cmぐらいあるマニュアル本を読破し、覚えちゃったんで最近はその記憶力を生かして団体客の案内役とかやってるっすね。あっ。そうだ!機会があったら遊びに来てくださいよ。和さん案内役に駆り出してやるんで」
「ああ。それは良いですね拓海さん。そんな僕の業務を率先的に増やそうとしてくる拓海さんにこのたこ焼きあげます。」
そう言って鮎川はたこ焼きが乗ったお皿を差し出した。
先程まで生地だったたこ焼きはいつの間にか丸くなっていた。
「えっと。日向さんはタコさんウインナーとキムチチーズと、普通のたこ焼きの具材が入ったものをここら辺一帯に囲うように入れてましたね?」
そう言って彼はたこ焼きを取ろうとしたが、
「待って、どうせならロシアンルーレット方式で食べない?取るんだったらこの大皿へ移して!……っていうか本当記憶力化け物なのね!」
「........さすが拓海さんのお姉さん、遊び心がすごいですね。そして姉弟して化け物呼びはひどくないですか。」
どうやら鮎川も彩夏と同じことを思ってしまったようだ。
鮎川が、大皿へたこ焼きを移し終え各々が好きな飲み物を手にしたことを確認した日向先輩は乾杯の音頭をとった。
嬉しいことにピーチ味の缶チューハイがある。彼は私が桃好きなの覚えててくれたのかなと思いつつ、4人で乾杯した。
そこからは、飲んで、話して、食べて、焼いて、また飲んでを繰り返して___
騒いで、笑って、驚いて、いろいろなことを話した。鮎川は昔と全く変わらなくて、仕草とか笑い方とか、言葉足らずで少し天然なところとか、とても懐かしく感じた。
そんな楽しさと懐かしさを感じる居心地が良い空間の中、私はいつの間にか寝てしまっていた______。
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