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4章
37魔法道具職人と本物の恋
しおりを挟むグレンツェが次に目を覚ました時には見慣れたベットの上だった。なんだか長い夢を見ていたようだが思い出せない。ゆっくりと体を起こせば手を握られていたことに気づく。
(旦那様、、)
ヴァイザーの寝顔を見たのは初めてで起こすのに気が引けたがグレンツェが動いたことでヴァイザーも目が覚めたようだった。
「あ、起こしてすみません、、」
すると、ヴァイザーは何か物珍しいものを見た時のように目を見開き何も言わずにグレンツェを抱きしめる。
「あ、あの、、旦那様、」
グレンツェの腕はどうしたらいいのか分からず宙をさまよっていたがヴァイザーがあまりにも強く抱き締めてくるのでヴァイザーの背中に腕を回した。
「もう二度と目を覚まさないのかと思った」
ヴァイザーは振り絞ったような声で言う。どうやら3週間ほど眠っていたようだ。もう傷は治っているはずなのに目を覚まさないグレンツェにヴァイザーは何人もの名医を呼びつけ診察させたらしい。どの医者も詳しい原因は分からず心因性のものであると口を揃えた。ヴァイザーは仕事の時以外は常にグレンツェの部屋におり、グレンツェの手を握っていたらしい。
全てヴァイザーの側近であるカイエルに聞いた話だ。
「グレンツェ、もっとたくさん食べるといい」
「もぅ、、入らないです、、」
「いや、栄養は入れていたとはいえちゃんとしたものは食べていないのだ。せっかく最近少しいい感じに、、、いや、とりあえず遠慮せず食べろ」
ヴァイザーはより過保護になったようだ。
(もう傷も治っているし体もそんなに辛くない、、)
「ヴァイザー様、グレンツェ様は目を覚まされたばかりです。そんなに一気に食べさせては逆に体調を崩してしまいます」
お腹がいっぱいなグレンツェにまだなお食べさせようとするヴァイザーに困っていたところ、カイエルが助け舟を出してくれた。
「そうか、悪かった」
「いえ、とっても美味しかったです!ありがとうございます、、」
「っ、これからも何か食べたいものがあれば遠慮せず言え。用意させる」
「はい!ありがとうございます!」
得意そうに言ったヴァイザーはなんだか少し子供っぽく見える。
(最初は怖い人だと思っていたけれど、、本当に優しくてかっこよくてそして可愛い人なのね)
グレンツェはお茶を飲みながらずっと聞きたかったことを思い出した。
「あの、、アランはどうなったのでしょうか?殺されてしまうのですか、、?」
「それはグレンツェが決めればいい。一度会って話してもいい。ラート公爵はエルフォルク家、それに皇族への反逆罪として処刑される。3週間たった今でも新聞はその記事でもちきりだ。ラート公爵は期待の星だったからな。ゼルトザーム家は無くならないが爵位は剥奪され、留学していた息子が継ぐそうだ。」
「そうなのですね、、」
「グレンツェからしたらエティーナも加害者の1人であるだろうが一応ラート公爵に利用されたということになっている。だが、これからグレンツェに会わせるつもりもなければ関わることもない。だが、困るのはアランの処置だ。アランはグレンツェに消去魔法をかけた張本人だ。魔法道具の件も作ることを指示したのはラート公爵だが作ったのはアランだ。私でも見抜くことが出来ないほどの緻密で複雑な魔法道具だった。利用されていたとはいえやった事が大きすぎる」
ヴァイザーは急に項垂れると、グレンツェの方を見て申し訳ない、と謝る。なぜ謝られたのか分からず慌てるグレンツェにヴァイザーは言う。
「私がもっと詳しく調べておけば良かったのだ。ゼルトザーム家の魔法道具は実際にエルフォルク家でも使っていた。大丈夫だろう、と安心していた面もある。それにしっかり見てもアランの作った魔法道具を危険かどうか判断することは厳しかったかもしれない。私の力不足だ。それによりグレンツェを危険に晒したのだ。守るといいながら一度も守ることなどできていない。」
「そんな、、旦那様はいつだって私を守ってくれます。旦那様に出会ってたくさんの感情を知ったのです。それに、今まで私は人として扱われたこともありませんでした。ですがここに来てたくさんの方が私と話してくれます。それだけでどれだけ私の心が守られているか、、。本当に私は幸せ者です。」
「そうか、グレンツェが幸せならそれでいい」
グレンツェはここに来てからのことを思い出していた。ヴァイザーはグレンツェの事をいつでも考えてくれていた。だからこそ甘えてしまっている部分もあるが、それだけ居心地がいいということだ。
(そして私はまた旦那様にわがままを言おうとしている、、)
「あの、旦那様?ひとつお願いがあるのです。」
「なんだ?言ってみろ」
「アランをエルフォルク家の魔法道具職人として雇いませんか?」
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