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第67話 揺れる心に蓋をして
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廊下を歩く足音が、やけに大きく響いて聞こえる。
胸の奥でどくん、と脈が跳ねるたび、私は無意識に手を握りしめていた。
「……紫苑さんの、自室……」
凛子さん捜索任務から数日が過ぎて、私も含め皆いつもの日常に戻った。
訓練をして、任務をこなす。
私もいつも通り訓練を終えて、廊下を歩いていたら、紫苑さんに呼び止められた。
「着替えたら俺の自室に来い、聞きたい事がある」
要件を伝えた紫苑は早々に通り過ぎてしまった。
突然の事に、信じられない気持ちのほうが大きかった。
八咫烏の頭領──紫苑さん。普段から落ち着き払っていて、誰よりも冷静で隙のない人。
そんな紫苑さんが、わざわざ私を呼んでくれた。しかも、あの人の部屋へ。
(何を……話すつもりなんだろう)
扉の前に立つと、緊張で喉が渇いていく。
こんな風に心臓がうるさいほど暴れているのは、任務の前でも滅多にないことだった。
「……失礼します」
控えにノックして小さく声をかけてから、そっと扉を開ける。
目に飛び込んできたのは、整然とした室内。余計なものは何ひとつなく、凛とした空気が漂っている。
一つしかないテーブルには大量の書類が乗っている。
その中心で、彼は椅子に腰掛けていた。鋭い眼差しが、私にまっすぐ注がれる。
「来たか」
低く落ち着いた声が、胸の奥に響く。
その視線が真っ直ぐこちらに向けられた瞬間、私は思わず息を飲んだ。
「単刀直入にきく……天音。お前は“輪廻の光”について、どこまで把握してる?」
なんとなく……予想はしてた問に私は冷静を装う。
輪廻の光――。それは、陸さんの神兵化を解く為に始めて自分の意思で使った神威。
「……正直に言えば、まだよく分かりません。あの時は無我夢中でしたから、あの力で何が出来るのか……私の中でもまだはっきりしません」
口にした途端、心臓が跳ねる⸺。
心音がうるさい。
鋭い紫苑さんに私の嘘なんて、通用するのかすら怪しい。
紫苑さんの眼差しは鋭くも、どこか探るようで。
それでも追及はせず、短く頷いた。
「……そうか……分かった、戻っていい……」
その表情に、どこか期待と落胆の両方が混ざっているようで、心臓が締めつけられた。
そのまま自室に戻りドアを閉めた途端、胸の奥が苦しくなる。
(……紫苑さんははっきり言わなかったけどきっと私と天禰さんを重ねてる……紫苑さんが求めているのは“天音”じゃない。前世の――“天禰”)
私は拳をぎゅっと握りしめる。
(私は……私は、家族の死を変える⸺その為に八咫烏に入った……だから、もうこれ以上、望んじゃいけない)
熱くなりかけた想いに、そっと蓋をする。
それが、今の私にできる唯一の答えだった。
胸の奥でどくん、と脈が跳ねるたび、私は無意識に手を握りしめていた。
「……紫苑さんの、自室……」
凛子さん捜索任務から数日が過ぎて、私も含め皆いつもの日常に戻った。
訓練をして、任務をこなす。
私もいつも通り訓練を終えて、廊下を歩いていたら、紫苑さんに呼び止められた。
「着替えたら俺の自室に来い、聞きたい事がある」
要件を伝えた紫苑は早々に通り過ぎてしまった。
突然の事に、信じられない気持ちのほうが大きかった。
八咫烏の頭領──紫苑さん。普段から落ち着き払っていて、誰よりも冷静で隙のない人。
そんな紫苑さんが、わざわざ私を呼んでくれた。しかも、あの人の部屋へ。
(何を……話すつもりなんだろう)
扉の前に立つと、緊張で喉が渇いていく。
こんな風に心臓がうるさいほど暴れているのは、任務の前でも滅多にないことだった。
「……失礼します」
控えにノックして小さく声をかけてから、そっと扉を開ける。
目に飛び込んできたのは、整然とした室内。余計なものは何ひとつなく、凛とした空気が漂っている。
一つしかないテーブルには大量の書類が乗っている。
その中心で、彼は椅子に腰掛けていた。鋭い眼差しが、私にまっすぐ注がれる。
「来たか」
低く落ち着いた声が、胸の奥に響く。
その視線が真っ直ぐこちらに向けられた瞬間、私は思わず息を飲んだ。
「単刀直入にきく……天音。お前は“輪廻の光”について、どこまで把握してる?」
なんとなく……予想はしてた問に私は冷静を装う。
輪廻の光――。それは、陸さんの神兵化を解く為に始めて自分の意思で使った神威。
「……正直に言えば、まだよく分かりません。あの時は無我夢中でしたから、あの力で何が出来るのか……私の中でもまだはっきりしません」
口にした途端、心臓が跳ねる⸺。
心音がうるさい。
鋭い紫苑さんに私の嘘なんて、通用するのかすら怪しい。
紫苑さんの眼差しは鋭くも、どこか探るようで。
それでも追及はせず、短く頷いた。
「……そうか……分かった、戻っていい……」
その表情に、どこか期待と落胆の両方が混ざっているようで、心臓が締めつけられた。
そのまま自室に戻りドアを閉めた途端、胸の奥が苦しくなる。
(……紫苑さんははっきり言わなかったけどきっと私と天禰さんを重ねてる……紫苑さんが求めているのは“天音”じゃない。前世の――“天禰”)
私は拳をぎゅっと握りしめる。
(私は……私は、家族の死を変える⸺その為に八咫烏に入った……だから、もうこれ以上、望んじゃいけない)
熱くなりかけた想いに、そっと蓋をする。
それが、今の私にできる唯一の答えだった。
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