八咫烏 〜神になるか、人として戦うか〜

秀零

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第68話 閉ざされた記憶の扉

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夜の静寂に包まれた寝室。瞼を閉じると、意識はふわりと宙に浮くように遠のいていった。

――気がつくと、そこは淡く優しいの光に満ちた空間だった。

「……天音」

柔らかな声に振り向くと、そこに立っていたのは、見覚えのある姿。淡く光をまとい、微笑むその顔は、私の前世──天禰だった。

(……天禰さん……?)

胸がぎゅっと締めつけられる。言葉を探すけれど、口から出るのは小さな声だけ。

「……天禰さん……お願いします。前世で、私たちに何があったのか……教えてください」

願うように手を合わせる。天禰は少しだけ目を伏せ、長い沈黙の後、重い口を開いた。

「天音……全てを知る事が幸せとは限らないの」

天禰さんの僅かな拒絶⸺。
それでも私は、一歩踏み出す。
「それでも、知りたいんです!八咫の神様はこれから私は沢山の選択をするだろうと言いました……私はその選択を最善なものにしたい……だから、教えてください!」


「……全部は話せない。でも、少しずつ……話してあげる」

声はかすかに震え、光の中で揺れる。その表情に、私は思わず息をのむ。

「私たちは……同じ魂。けれど、違う人……だから天音には出来れば、背負ってほしくない……全てを知れば天音はきっと苦しむ、それでもいいの?」
「……はい」
私達の間に沈黙がはしる。
私は天禰さんをじっと見据えて、天禰さんからの言葉を待つ。
やがて、細く震える吐息とともに、重い口が開かれる。

「……わたしは、かつて“最高神”と呼ばれていた……私がまだ最高神ではなく、一介の神でしかなかったとき……神界を保つ為には、人間界に住む人達の信仰心が必要不可欠
神々の中でも様々な意見があった……無理矢理にでも信仰心を供給を進言する者も居た、でも、そんな事をすれば、いずれ信仰心は減衰し神界を維持していけない、その時の最高神が備えとして私の神威で神界を維持出来るようにしたわ……今思えばあれも……」

言葉は少しずつ、しかし確かに私の胸に届く。

「……どうして、私は何も覚えてないの?」

問いかけると、天禰は目を伏せたまま、静かに答えた。

「……私が居るからなの……前世の事はあまりにも重すぎるから……私自身が記憶の封印としてここに居る……天音には笑って、今の人生を生きてほしいから」


その言葉に、胸がぎゅっと痛む。前世の記憶が、少しずつ心に染み込む感覚。

「……それでも……知りたいです。全部じゃなくても、少しでも……」

「……以前の天音だったら、私はきっと語る事はなかった……でも色んな事を経験して強くなった、だから少しづつね…… ……これ以上話すと、天音の心が壊れてしまうから」

その言葉を最後に、世界は闇に溶け、私は目を覚ました。

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