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第87話 攫われる光
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巨大な堕天使が翼を広げた瞬間、森全体が押し潰されるような重圧に包まれた。
堕天使が咆哮するたび、空気が震える。
息を吸うだけで胸が軋み、肺が焼けるように熱い。
私は刀を握りしめ、無理やり足を前へと踏み出した。
「……くっ、でかい……!」
一鉄さんの拳が大地を揺らし、桔梗さんの銃声が矢継ぎ早に闇を裂く。
千歳さんの声が響く。
「天音ちゃん、呼吸を保って。焦らずに……!」
その声が確かに届いているのに、耳の奥では心臓の音ばかりが響いていた。
(考えちゃ駄目……恐れても駄目……!)
私は無心で刀を振るう。
迫る影を斬り払い、振り向きざまにもう一体を斬り伏せる。
黒い血が飛び散っても、ただ前へ。
その一振り一振りが、自分を現実に繋ぎ止めている気がした。
「おらぁッ!」
一鉄さんの拳が堕天使の胸に叩き込まれる。
桔梗さんの銃撃が閃光のように走る。
私はただ――生きている証のように、刀を振るっていた。
(そうだ……私は今、生きてる……!)
その瞬間だった⸺。
眩しい光が視界を貫いた。
堕天使の咆哮も、仲間の声も、一瞬で遠ざかっていく。
清浄で、戦場には決して似つかわしくない光。
「……え?」
声にならない声が漏れた。
体がふっと浮かぶ。
地面が消えたように、足元から支えが失われる。
必死に刀を握り直すけれど、指先の感覚が遠のいていく。
見えない鎖で絡め取られるみたいに、抵抗できない。
「天音っ!!」
一鉄さんの叫びが、耳を震わせる。
「どこから……? 見えない!天音!!!」
桔梗さんの声が焦りを帯び、千歳さんの瞳が大きく揺れていた。
私は手を伸ばした。
届くはずのない空へ、必死に。
誰かの手に掴まれていたかった。
仲間の声を、温もりを、失いたくなかった。
(だれ?嫌だ……!)
けれど、伸ばした手は虚空を掻くだけだった。
抵抗する間もなく、私は光に呑み込まれていく。
仲間の姿が遠ざかる。
堕天使の咆哮が霞んでいく。
最後に見たのは――みんなの必死な顔だった。
そして、私は。
もう知らない場所に立たされていた。
堕天使が咆哮するたび、空気が震える。
息を吸うだけで胸が軋み、肺が焼けるように熱い。
私は刀を握りしめ、無理やり足を前へと踏み出した。
「……くっ、でかい……!」
一鉄さんの拳が大地を揺らし、桔梗さんの銃声が矢継ぎ早に闇を裂く。
千歳さんの声が響く。
「天音ちゃん、呼吸を保って。焦らずに……!」
その声が確かに届いているのに、耳の奥では心臓の音ばかりが響いていた。
(考えちゃ駄目……恐れても駄目……!)
私は無心で刀を振るう。
迫る影を斬り払い、振り向きざまにもう一体を斬り伏せる。
黒い血が飛び散っても、ただ前へ。
その一振り一振りが、自分を現実に繋ぎ止めている気がした。
「おらぁッ!」
一鉄さんの拳が堕天使の胸に叩き込まれる。
桔梗さんの銃撃が閃光のように走る。
私はただ――生きている証のように、刀を振るっていた。
(そうだ……私は今、生きてる……!)
その瞬間だった⸺。
眩しい光が視界を貫いた。
堕天使の咆哮も、仲間の声も、一瞬で遠ざかっていく。
清浄で、戦場には決して似つかわしくない光。
「……え?」
声にならない声が漏れた。
体がふっと浮かぶ。
地面が消えたように、足元から支えが失われる。
必死に刀を握り直すけれど、指先の感覚が遠のいていく。
見えない鎖で絡め取られるみたいに、抵抗できない。
「天音っ!!」
一鉄さんの叫びが、耳を震わせる。
「どこから……? 見えない!天音!!!」
桔梗さんの声が焦りを帯び、千歳さんの瞳が大きく揺れていた。
私は手を伸ばした。
届くはずのない空へ、必死に。
誰かの手に掴まれていたかった。
仲間の声を、温もりを、失いたくなかった。
(だれ?嫌だ……!)
けれど、伸ばした手は虚空を掻くだけだった。
抵抗する間もなく、私は光に呑み込まれていく。
仲間の姿が遠ざかる。
堕天使の咆哮が霞んでいく。
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そして、私は。
もう知らない場所に立たされていた。
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