88 / 108
第87話 攫われる光
しおりを挟む
巨大な堕天使が翼を広げた瞬間、森全体が押し潰されるような重圧に包まれた。
堕天使が咆哮するたび、空気が震える。
息を吸うだけで胸が軋み、肺が焼けるように熱い。
私は刀を握りしめ、無理やり足を前へと踏み出した。
「……くっ、でかい……!」
一鉄さんの拳が大地を揺らし、桔梗さんの銃声が矢継ぎ早に闇を裂く。
千歳さんの声が響く。
「天音ちゃん、呼吸を保って。焦らずに……!」
その声が確かに届いているのに、耳の奥では心臓の音ばかりが響いていた。
(考えちゃ駄目……恐れても駄目……!)
私は無心で刀を振るう。
迫る影を斬り払い、振り向きざまにもう一体を斬り伏せる。
黒い血が飛び散っても、ただ前へ。
その一振り一振りが、自分を現実に繋ぎ止めている気がした。
「おらぁッ!」
一鉄さんの拳が堕天使の胸に叩き込まれる。
桔梗さんの銃撃が閃光のように走る。
私はただ――生きている証のように、刀を振るっていた。
(そうだ……私は今、生きてる……!)
その瞬間だった⸺。
眩しい光が視界を貫いた。
堕天使の咆哮も、仲間の声も、一瞬で遠ざかっていく。
清浄で、戦場には決して似つかわしくない光。
「……え?」
声にならない声が漏れた。
体がふっと浮かぶ。
地面が消えたように、足元から支えが失われる。
必死に刀を握り直すけれど、指先の感覚が遠のいていく。
見えない鎖で絡め取られるみたいに、抵抗できない。
「天音っ!!」
一鉄さんの叫びが、耳を震わせる。
「どこから……? 見えない!天音!!!」
桔梗さんの声が焦りを帯び、千歳さんの瞳が大きく揺れていた。
私は手を伸ばした。
届くはずのない空へ、必死に。
誰かの手に掴まれていたかった。
仲間の声を、温もりを、失いたくなかった。
(だれ?嫌だ……!)
けれど、伸ばした手は虚空を掻くだけだった。
抵抗する間もなく、私は光に呑み込まれていく。
仲間の姿が遠ざかる。
堕天使の咆哮が霞んでいく。
最後に見たのは――みんなの必死な顔だった。
そして、私は。
もう知らない場所に立たされていた。
堕天使が咆哮するたび、空気が震える。
息を吸うだけで胸が軋み、肺が焼けるように熱い。
私は刀を握りしめ、無理やり足を前へと踏み出した。
「……くっ、でかい……!」
一鉄さんの拳が大地を揺らし、桔梗さんの銃声が矢継ぎ早に闇を裂く。
千歳さんの声が響く。
「天音ちゃん、呼吸を保って。焦らずに……!」
その声が確かに届いているのに、耳の奥では心臓の音ばかりが響いていた。
(考えちゃ駄目……恐れても駄目……!)
私は無心で刀を振るう。
迫る影を斬り払い、振り向きざまにもう一体を斬り伏せる。
黒い血が飛び散っても、ただ前へ。
その一振り一振りが、自分を現実に繋ぎ止めている気がした。
「おらぁッ!」
一鉄さんの拳が堕天使の胸に叩き込まれる。
桔梗さんの銃撃が閃光のように走る。
私はただ――生きている証のように、刀を振るっていた。
(そうだ……私は今、生きてる……!)
その瞬間だった⸺。
眩しい光が視界を貫いた。
堕天使の咆哮も、仲間の声も、一瞬で遠ざかっていく。
清浄で、戦場には決して似つかわしくない光。
「……え?」
声にならない声が漏れた。
体がふっと浮かぶ。
地面が消えたように、足元から支えが失われる。
必死に刀を握り直すけれど、指先の感覚が遠のいていく。
見えない鎖で絡め取られるみたいに、抵抗できない。
「天音っ!!」
一鉄さんの叫びが、耳を震わせる。
「どこから……? 見えない!天音!!!」
桔梗さんの声が焦りを帯び、千歳さんの瞳が大きく揺れていた。
私は手を伸ばした。
届くはずのない空へ、必死に。
誰かの手に掴まれていたかった。
仲間の声を、温もりを、失いたくなかった。
(だれ?嫌だ……!)
けれど、伸ばした手は虚空を掻くだけだった。
抵抗する間もなく、私は光に呑み込まれていく。
仲間の姿が遠ざかる。
堕天使の咆哮が霞んでいく。
最後に見たのは――みんなの必死な顔だった。
そして、私は。
もう知らない場所に立たされていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる