悠久~version1:解放戦争

由奈(YUNA)

文字の大きさ
上 下
27 / 297
皇都脱出

2

しおりを挟む
「解放団の人に会って……助けてくれるかなぁ?」



「大丈夫ですよ」



そう言って笑ってくれるゼシカがいてくれて本当に良かったと思った。
一人だったら心細くてきっと何もできなかった。




「雨……止まないね」



ずっとカーテンの隙間から外を見ていた。
誰も人はいない真っ暗闇。

しばらく外を見ていたら見慣れた人が見えた。
あたしが見間違える訳がない。
傘もささず今にも倒れそうに歩く人は間違いなくあの人だ。



気づくと同時に部屋を飛び出して1階に行った。
おじさんとおばさん、ルイが起きていて驚かれたが構わず玄関を開けて外に飛び出した。


あたしが見掛けた人物はルイの家の近くにいた。



「アベル!!!!」



あたしは名前を叫んで駆け寄って……絶句した。


アベルは左肩を右手で押さえていたが、その右手は血で真っ赤に染まっていた。



「お………お嬢様……ご……無事でしたか……」


そう言って膝をついたアベルに慌てて駆け寄った。


顔色は真っ青で左肩から大量の出血をしていた。
肩で息をしている彼を見てお父さんから逃げ出せたのだと察した。


「アベル……あたしは大丈夫だよ?」


そう言ったら安心したのか笑って意識を失った。




「セシル!どうし……た!?」



ルイがあたしを追いかけてきたがあたしが抱えるアベルを見て言葉をなくしていた。



「すぐに家に運ぼう」



ルイはおじさんを呼んできてアベルを家に運んでくれた。


おばさんが慌てて手当てをしてくれたけど、アベルは左肩から胸にかけて切られ、その傷が原因で高熱を出していた。
意識もなく、あたしは泣きそうになるのを我慢してずっと手を握っていた。



ルイに1階にいると兵士に見つかるかもしれないと言われても、アベルを一人にさせたくはなかった。
アベルはあたしを守るために一人残って大怪我を負ったんだ。
もしものことがあったら……そう思うと絶対に傍を離れたくなかった。




一睡もしないで付き添っていたけどアベルは目を覚まさなかった。




「お嬢様……少し休んでください。私が見てますから」



ゼシカがそう申し出てくれたがあたしは首を振って断った。






昼になっても熱は下がらず目も覚まさないアベルにずっと付き添っていたけど、おじさんがお客様を連れて帰ってきた。



「セシルちゃん……昨日話した方だよ」



振り向くと30代くらいかと思われる細身の男性がいた。



「あんたがセシル・アドレイか?」


「……そうです」



解放団の人とわかってはいたが知らない人だから警戒した。


「警戒しないでいい。俺はクルー。まぁあれだ。解放団の一員だ」





あっさり解放団だと名乗る彼に拍子抜けした。

あたしが帝国側だったらあんた捕まるよ……と思ってしまった。

しおりを挟む

処理中です...