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再会、そして、決着
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「クリックは…悪くないのに……」
「彼はそういう人よ…責任感が強くて、人一倍仲間想い」
レイが天幕を開けてあたしにそう言った。
「みんなそろそろセシルを休ませてあげて。明日には出発よ」
「そうだな!セシルまた明日な!」
レイの一言にルイとゼシカとおじい様が動いた。
「アベルはセシルの傍にいてあげて。きっとセシルは私たちと離れた間は心細くて辛かったはずよ?ね、セシル」
「うん……でも…大丈夫」
「……セシルの大丈夫ほどあてにならないわ。アベルに任せていいかしら?」
サラっとあたしの言葉を流されてレイはアベルに聞いた。
アベルは了承してくれて、天幕にあたしと2人になった。
「私は先程ハーン様にお会いしました。そしてセシルとハーン様が何を話したか聞きました……だから、隠し通せない…あなたに嫌われてもおかしくないですよね」
あたしと目を合わさずにそう言った。
あたしは少し、アベルを勘違いしていたみたい。
アベルは誰よりも優しくて強くて一人でなんでもできちゃう、頼れる人だと思っていた。
本当は、誰よりも優しくて、そして繊細な人なんだ……そう思った。
俯いたままのアベルを見て、簡易ベッドから起き上がり、ゆっくり近づいた。
覚束ない足取りでアベルに近づいて抱き着いた。
そんなあたしの行動を見ていなかったアベルは驚いたようで硬直していた。
「アベルの話を聞いた……でもイヤリングは外したくない……あたしの答えはこれ。あたしの気持ちはアベルに通じない?」
顔を埋めてアベルからの答えを待った。
しばらくして、アベルの腕があたしの背中に回って強く抱きしめてくれた。
「あなたが生きていて……本当によかったです…私の気持ちはあなたに通じてますか?」
「イヤリングを外したらヤだ?」
「嫌です。あの時のあの言葉に嘘はありません」
「……ちゃんと通じてるよ。過去を知ってもあたしはイヤリング外したくないもん」
そう言って見上げたら目が合った。
目を見てやっとアベルに会えた……そう思えた。
アベルの手があたしの額に触れて、ため息をつかれた。
「まだ熱が下がらないですね…明日はどうしても動くので、少しでも早く休んで少しでも熱を下げて……明日はそんな状態じゃセシルは馬に乗れないだろうから私と一緒ですよ」
「ほんと!?」
「はい。だから足手まといにならないように早く元気になってください」
「……足手まといってひどい」
あたしがむくれながらベッドに横たわったけど、アベルは笑っていた。
「ねぇ…寝るまで手を繋いでくれる?」
「いいですよ」
アベルが手を握ってくれて安心できた。
「あたし、アベルいないとダメな人間みたい……ヤだなぁ…」
「私はその方が嬉しいですよ?」
そんな会話をしているうちにあたしは眠りについた。
「彼はそういう人よ…責任感が強くて、人一倍仲間想い」
レイが天幕を開けてあたしにそう言った。
「みんなそろそろセシルを休ませてあげて。明日には出発よ」
「そうだな!セシルまた明日な!」
レイの一言にルイとゼシカとおじい様が動いた。
「アベルはセシルの傍にいてあげて。きっとセシルは私たちと離れた間は心細くて辛かったはずよ?ね、セシル」
「うん……でも…大丈夫」
「……セシルの大丈夫ほどあてにならないわ。アベルに任せていいかしら?」
サラっとあたしの言葉を流されてレイはアベルに聞いた。
アベルは了承してくれて、天幕にあたしと2人になった。
「私は先程ハーン様にお会いしました。そしてセシルとハーン様が何を話したか聞きました……だから、隠し通せない…あなたに嫌われてもおかしくないですよね」
あたしと目を合わさずにそう言った。
あたしは少し、アベルを勘違いしていたみたい。
アベルは誰よりも優しくて強くて一人でなんでもできちゃう、頼れる人だと思っていた。
本当は、誰よりも優しくて、そして繊細な人なんだ……そう思った。
俯いたままのアベルを見て、簡易ベッドから起き上がり、ゆっくり近づいた。
覚束ない足取りでアベルに近づいて抱き着いた。
そんなあたしの行動を見ていなかったアベルは驚いたようで硬直していた。
「アベルの話を聞いた……でもイヤリングは外したくない……あたしの答えはこれ。あたしの気持ちはアベルに通じない?」
顔を埋めてアベルからの答えを待った。
しばらくして、アベルの腕があたしの背中に回って強く抱きしめてくれた。
「あなたが生きていて……本当によかったです…私の気持ちはあなたに通じてますか?」
「イヤリングを外したらヤだ?」
「嫌です。あの時のあの言葉に嘘はありません」
「……ちゃんと通じてるよ。過去を知ってもあたしはイヤリング外したくないもん」
そう言って見上げたら目が合った。
目を見てやっとアベルに会えた……そう思えた。
アベルの手があたしの額に触れて、ため息をつかれた。
「まだ熱が下がらないですね…明日はどうしても動くので、少しでも早く休んで少しでも熱を下げて……明日はそんな状態じゃセシルは馬に乗れないだろうから私と一緒ですよ」
「ほんと!?」
「はい。だから足手まといにならないように早く元気になってください」
「……足手まといってひどい」
あたしがむくれながらベッドに横たわったけど、アベルは笑っていた。
「ねぇ…寝るまで手を繋いでくれる?」
「いいですよ」
アベルが手を握ってくれて安心できた。
「あたし、アベルいないとダメな人間みたい……ヤだなぁ…」
「私はその方が嬉しいですよ?」
そんな会話をしているうちにあたしは眠りについた。
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