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第1話 転移勇者との邂逅
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足元に広がる真っ赤な絨毯。もとい俺の仲間の流した血。
ジョニーもキッドもサンタナも今頃地獄で悪魔とよろしく遊んでいるだろう。
山猿盗賊団で残ったのは、頭である俺とバブズとヒョッコリの三人だけ。
俺の胸にすっぽりと納まって、さっきまで「助けてぇ」と泣き叫んでいたガキが今じゃピタリと泣き止んで安堵の息を漏らしているのが伝わってくる。
「あ、あなたは……?」
さっきまでジョニーのキカン坊に犯されそうになっていた赤毛の女騎士も、そのジョニーから吹き出した返り血で真っ赤になりながら突如現れた男に縋るような眼を送る。
「えっと……俺、助けてよかったですか?」
見たことのない変わった服を着た男は、すっ抜けたような返答で場を白けさせる。
「もっ、もちろんだ!!エル……エレオノーラ様を助けてくれ」
「わ、わかった。おい、あんた達。その人を離すんだ」
男は剣先を俺たちに向ける。その不格好な構えとは正反対に男の持つ剣はどこぞの王族が保管する聖剣のような装い。
あまりに見事な剣に俺は場違いにもこいつの剣を売っぱらったらいくらになるのかと考えていた。
「ふっざけんじゃねぇ!!仲間殺しておいて俺たちに指図するんじゃねぇ!!」
あーあ、ヒョッコリのヤツ頭に血が上ってやがる。
ヒョッコリは錆びの浮いた剣を引っ提げて男に向かっていった。
さよならだ、ヒョッコリ。俺もすぐに地獄に行く。
「火球」
男が放った初級も初級、ザ・雑魚魔法の代名詞、火球がヒョッコリに大当たり。
「うぎゃああああああ!!」
初級魔法のくせに見たこともない火力の炎がヒョッコリをこんがりと焼いた。
「む、無詠唱……魔法」
俺の腕の中の嬢ちゃんがポツリともらす。
言われてみれば男は呪文を唱えていなかった気がする。
……化物め。
男は魔法を放った手をまじまじと見つめ、嬉しそうにニヤけて何かブツブツ言っている。
「すげぇ、マジで魔法出ちゃったよ。すげぇ……」
男は目をキラキラと輝かせて、人を殺したというよりも新しいおもちゃを手にしたガキだって言った方が納得がいく顔をしている。
「なめやがって」
今にも男に飛び掛かりそうな勢いのバブズを止める。
「まぁ、待て。おい、あんた。俺と交渉しねえか?」
ここを生きて切り抜けるには話し合いしかない。
男は自分を指さして「オレ?」なんて緊張感の欠片もないとぼけた返事を返してくる。
「そう、お前だ。俺たちを見逃してくれればこいつは無傷で返してやる。それにいくらか金をやってもいい。どうだ?あんた別にこいつらの関係者ってわけじゃねぇんだろ?」
「んー、そうだけどさ……それって交渉なの?交渉ってのは力関係が対等かそれ以上だから出来るとオレは思うんだよ、ね」
ごもっとも。コイツなら一瞬で俺を殺せることが出来ると思わせる何かがあった。
男は剣を構える。
こうなりゃ俺も覚悟を決めるしかない。
左腕にお嬢ちゃんを抱えたまま右手で大鉈を構える。
気合い十分。地獄行きの片道切符を準備した俺の横に並ぶバブズがこっそりと呟く。
「頭。おれが時間を稼ぐ。そのすきにあのスキルを使って逃げてくれ」
それを聞いたガキが喚きだす。
「気を付けて!この人スキルッ――」
「このクソガキ!!」
俺は胸に抱いたガキを黙らせるために首を絞め上げた。
「ガハッ」
「やめろっ!!」
男が俺に向かって飛び出す。
「頭っ!!」
俺を庇う様にバブズが俺と男の間に身を差し入れ、男の剣撃を迎え撃つ。
激しくぶつかり合う金属音が鼓膜を焼く。
男とバブズの剣が交差し、火花を散らす。
元騎士くずれで聖道一心流の使い手のバブズは山猿盗賊団の中で一番腕が立つ。
『1』
しかし、剣の性能の差か、それともステータスの差か男の剣がバターでも切るかのようにバブズの剣をゆっくりと切断していく。
『2』
「カシラ!俺たちの夢かなえてくれよ!!」
ズバッ!
バブズの背中越しに見える大量の血飛沫が致命傷だと俺に告げる。
バブズの後ろ姿しか見えなかったが、きっと笑って逝っただろう。
『3』
男はそのまま俺の元へ突っ込んでくる。
死の間際、世界が時を緩めると聞いたことがある。
それは神の最後の計らい。この世界をよく見られるようにと……
いつも俺達を無視するクソッタレの神がこの時ばかりは、と嫌がらせのように俺に「神の計らい」とやらを見せつける。
それは、俺を中心にゆっくりと流れる時間。
男が俺に向かって剣を振り下ろすのがしっかり見える。それは空気を引き裂き真っ直ぐ俺に向かってきた。
それなのに体はついていかない。
どうにも出来ない現実なんぞ神の嫌がらせ以外の何者でもねえ!
男の輝く刀身に惨めな盗賊一匹の顔が映る。誰だこりゃ?ボサボサの髪に同じくボサボサの髭。みっともねぇったらありゃしない。
だけど、どこか愛嬌がある顔じゃねえか……
そこで、俺はふと気付く。
ああ、こりゃ俺か!
刃が俺に触れる、その時。
――俺は嗤った。
「遁逃《とんずら》だ」
男の動きがピタリと止まる。
しかし、これは俺に死が迫り神様が粋なプレゼントをしてくれたからではない。
俺のユニークスキルが発動したのだ。
俺のスキル『遁逃』、それは敵と相対してから三秒後に確実な逃走を可能にしてくれる便利なスキルだ。
邪魔な大鉈をさっさと腰にしまうと俺は嬢ちゃんを抱えたまま、森の中へ逃げ込む。
自慢じゃないが逃げ足だけは誰にも負けない自信がある。
森の木々を、泥濘を、高く茂った草を避け走り抜ける。
途中スキルで偽装の足跡を残すことも忘れない。
そのまま嬢ちゃんを担ぎ走り続けると川に出た。
ジョニーもキッドもサンタナも今頃地獄で悪魔とよろしく遊んでいるだろう。
山猿盗賊団で残ったのは、頭である俺とバブズとヒョッコリの三人だけ。
俺の胸にすっぽりと納まって、さっきまで「助けてぇ」と泣き叫んでいたガキが今じゃピタリと泣き止んで安堵の息を漏らしているのが伝わってくる。
「あ、あなたは……?」
さっきまでジョニーのキカン坊に犯されそうになっていた赤毛の女騎士も、そのジョニーから吹き出した返り血で真っ赤になりながら突如現れた男に縋るような眼を送る。
「えっと……俺、助けてよかったですか?」
見たことのない変わった服を着た男は、すっ抜けたような返答で場を白けさせる。
「もっ、もちろんだ!!エル……エレオノーラ様を助けてくれ」
「わ、わかった。おい、あんた達。その人を離すんだ」
男は剣先を俺たちに向ける。その不格好な構えとは正反対に男の持つ剣はどこぞの王族が保管する聖剣のような装い。
あまりに見事な剣に俺は場違いにもこいつの剣を売っぱらったらいくらになるのかと考えていた。
「ふっざけんじゃねぇ!!仲間殺しておいて俺たちに指図するんじゃねぇ!!」
あーあ、ヒョッコリのヤツ頭に血が上ってやがる。
ヒョッコリは錆びの浮いた剣を引っ提げて男に向かっていった。
さよならだ、ヒョッコリ。俺もすぐに地獄に行く。
「火球」
男が放った初級も初級、ザ・雑魚魔法の代名詞、火球がヒョッコリに大当たり。
「うぎゃああああああ!!」
初級魔法のくせに見たこともない火力の炎がヒョッコリをこんがりと焼いた。
「む、無詠唱……魔法」
俺の腕の中の嬢ちゃんがポツリともらす。
言われてみれば男は呪文を唱えていなかった気がする。
……化物め。
男は魔法を放った手をまじまじと見つめ、嬉しそうにニヤけて何かブツブツ言っている。
「すげぇ、マジで魔法出ちゃったよ。すげぇ……」
男は目をキラキラと輝かせて、人を殺したというよりも新しいおもちゃを手にしたガキだって言った方が納得がいく顔をしている。
「なめやがって」
今にも男に飛び掛かりそうな勢いのバブズを止める。
「まぁ、待て。おい、あんた。俺と交渉しねえか?」
ここを生きて切り抜けるには話し合いしかない。
男は自分を指さして「オレ?」なんて緊張感の欠片もないとぼけた返事を返してくる。
「そう、お前だ。俺たちを見逃してくれればこいつは無傷で返してやる。それにいくらか金をやってもいい。どうだ?あんた別にこいつらの関係者ってわけじゃねぇんだろ?」
「んー、そうだけどさ……それって交渉なの?交渉ってのは力関係が対等かそれ以上だから出来るとオレは思うんだよ、ね」
ごもっとも。コイツなら一瞬で俺を殺せることが出来ると思わせる何かがあった。
男は剣を構える。
こうなりゃ俺も覚悟を決めるしかない。
左腕にお嬢ちゃんを抱えたまま右手で大鉈を構える。
気合い十分。地獄行きの片道切符を準備した俺の横に並ぶバブズがこっそりと呟く。
「頭。おれが時間を稼ぐ。そのすきにあのスキルを使って逃げてくれ」
それを聞いたガキが喚きだす。
「気を付けて!この人スキルッ――」
「このクソガキ!!」
俺は胸に抱いたガキを黙らせるために首を絞め上げた。
「ガハッ」
「やめろっ!!」
男が俺に向かって飛び出す。
「頭っ!!」
俺を庇う様にバブズが俺と男の間に身を差し入れ、男の剣撃を迎え撃つ。
激しくぶつかり合う金属音が鼓膜を焼く。
男とバブズの剣が交差し、火花を散らす。
元騎士くずれで聖道一心流の使い手のバブズは山猿盗賊団の中で一番腕が立つ。
『1』
しかし、剣の性能の差か、それともステータスの差か男の剣がバターでも切るかのようにバブズの剣をゆっくりと切断していく。
『2』
「カシラ!俺たちの夢かなえてくれよ!!」
ズバッ!
バブズの背中越しに見える大量の血飛沫が致命傷だと俺に告げる。
バブズの後ろ姿しか見えなかったが、きっと笑って逝っただろう。
『3』
男はそのまま俺の元へ突っ込んでくる。
死の間際、世界が時を緩めると聞いたことがある。
それは神の最後の計らい。この世界をよく見られるようにと……
いつも俺達を無視するクソッタレの神がこの時ばかりは、と嫌がらせのように俺に「神の計らい」とやらを見せつける。
それは、俺を中心にゆっくりと流れる時間。
男が俺に向かって剣を振り下ろすのがしっかり見える。それは空気を引き裂き真っ直ぐ俺に向かってきた。
それなのに体はついていかない。
どうにも出来ない現実なんぞ神の嫌がらせ以外の何者でもねえ!
男の輝く刀身に惨めな盗賊一匹の顔が映る。誰だこりゃ?ボサボサの髪に同じくボサボサの髭。みっともねぇったらありゃしない。
だけど、どこか愛嬌がある顔じゃねえか……
そこで、俺はふと気付く。
ああ、こりゃ俺か!
刃が俺に触れる、その時。
――俺は嗤った。
「遁逃《とんずら》だ」
男の動きがピタリと止まる。
しかし、これは俺に死が迫り神様が粋なプレゼントをしてくれたからではない。
俺のユニークスキルが発動したのだ。
俺のスキル『遁逃』、それは敵と相対してから三秒後に確実な逃走を可能にしてくれる便利なスキルだ。
邪魔な大鉈をさっさと腰にしまうと俺は嬢ちゃんを抱えたまま、森の中へ逃げ込む。
自慢じゃないが逃げ足だけは誰にも負けない自信がある。
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そのまま嬢ちゃんを担ぎ走り続けると川に出た。
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