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第2話 森の中の逃走
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謎の男から逃れるべく、森を抜け川までやって来た。
この時期の川の水は冷たいが文句は言ってられない。
逃走の痕跡をなるべく残さないよう、川の中を行く。
「放してください」
肩に担いだ嬢ちゃんがこの時だけ俺に話しかけてきた。
「黙ってろ!お前は人質だ。俺が無事逃げ延びたら解放してやる」
そう言うと嬢ちゃんは項垂れるように力を抜き黙りこくった。
まあ、この状況で騒がれても面倒なだけだが本当に解放してほしいのかと疑問に思う諦めの早さだ。
しかし、嬢ちゃんと楽しくおしゃべりする暇はない。
俺も足には多少自信はあるが、あの男から逃げられるのかは分からない。
それほどまでに異質で異様な存在だった。
あの男が持つ謎の剣。それに対峙すれば分かる底知れぬ魔力。
バブズと俺の遁逃が無ければ今頃仲間と仲良く地獄観光真っ最中だっただろう。
どこまでも背後にこびりつくプレッシャーに息が上がる。焦る足に川の水がねちっこく絡み付き何度も転げそうになった。
一歩進むごとに背後からいつあの男の刃が、魔法が飛んでくるのかと、生きた心地がしない。
それでも、俺は走り続けた。俺には生きてやるべき事がある。
死んでいった仲間の分まで……
◇
日が傾き、森に闇が訪れるころ、やっと俺は川から上がり森の中へと戻った。
ここまで来れば、あの男も早々追い付くことは出来ないだろう。
嬢ちゃんは逃げられないよう手足を縛り、地面に転がしておいた。
どうも嬢ちゃんはうつ伏せの状態が嫌なのか芋虫のようにもぞもぞと身をよじり木にもたれかかる。
見るからに高価な服が土にまみれていく様は見ていて気分が良い。
ここにきて俺はやっと嬢ちゃんをまじまじと観察する。
暗い闇夜の中でも輝くブロンドは地面に着くほど長く色ツヤも良い。
着ている服は汚れは目立つがレースの刺繍が細かく施され、中には輝く金糸が混ざって見える。明らかに仕立てが良い。
こりゃ並みの貴族様じゃなさそうだ。
歳は15くらいか?ガキの歳なんぞ気にしたことはないが、だいたいそれくらいだ。
しかし、一番気に入らないのはその顔。綺麗な顔をしているが、どうもにも生気を感じさせない人形みたいな顔をしている。
盗賊の男に連れ去られたのなら、も少し顔に不安や恐怖を貼り付けてもいいはずなのだが、それも感じられない。
俺は嬢ちゃんの観察をいったん止めて濡れた靴を脱ぎ裸足になる。本当なら焚火の一つでも起こして濡れた靴と足を暖めてやりたいが煙一つが命取りになりかねない。
「うぃぃ、寒い寒い」
俺は、ずっと黙りこくっている嬢ちゃんに近づく。
俺の目は汚れたスカートから覗く白磁のように真っ白な太ももを捉えていた。
嬢ちゃんは不気味に近づく俺に何かをされるんじゃないかと、固く目と口を閉じた。
やっと嬢ちゃんの顔に生きた表情が表れた。
その様子を内心で笑いながら俺はゆっくりと嬢ちゃんのそばに座る。
「ひっ」
嬢ちゃんが小さな悲鳴を上げた。
何を期待していたか知らないが、俺は冷えた足をその生っ白い太ももにピタリと付けて暖をとっているだけ。
「ギシシ」
嬢ちゃんのあまりの初心な反応に俺は堪えきれず笑いが込み上げてきた。
その様子に嬢ちゃんは一瞬ムッとした表情を浮かべるが、すぐに能面のような顔に戻る。
しばらくは、そのまま暖を取る。
白い足に俺の醜く汚い足が這う様は、綺麗な花に蛾が群がるようでなんとも愉快な気分になる。
そうして、じっと自分の足を見ていると嬢ちゃんが話しかけてくる。
「な、なにもしないのですか?」
何も……それが何を指すのかは言わずもがな、だ。
「んん?俺に惚れたか?」
俺はギシシと汚い歯を見せて笑う。仲間内でも俺の笑い顔は汚いと評判だ。
しかし、嬢ちゃんは嫌悪感を浮かべることもなく何も映さない顔で「違います」とだけ呟いた。
その時、背後の茂みがガサガサと音を立てた。
獣が立てる音とは少し違う。俺は男が追いついたのだと素早く嬢ちゃんを盾にして、大鉈を構えた。
この時期の川の水は冷たいが文句は言ってられない。
逃走の痕跡をなるべく残さないよう、川の中を行く。
「放してください」
肩に担いだ嬢ちゃんがこの時だけ俺に話しかけてきた。
「黙ってろ!お前は人質だ。俺が無事逃げ延びたら解放してやる」
そう言うと嬢ちゃんは項垂れるように力を抜き黙りこくった。
まあ、この状況で騒がれても面倒なだけだが本当に解放してほしいのかと疑問に思う諦めの早さだ。
しかし、嬢ちゃんと楽しくおしゃべりする暇はない。
俺も足には多少自信はあるが、あの男から逃げられるのかは分からない。
それほどまでに異質で異様な存在だった。
あの男が持つ謎の剣。それに対峙すれば分かる底知れぬ魔力。
バブズと俺の遁逃が無ければ今頃仲間と仲良く地獄観光真っ最中だっただろう。
どこまでも背後にこびりつくプレッシャーに息が上がる。焦る足に川の水がねちっこく絡み付き何度も転げそうになった。
一歩進むごとに背後からいつあの男の刃が、魔法が飛んでくるのかと、生きた心地がしない。
それでも、俺は走り続けた。俺には生きてやるべき事がある。
死んでいった仲間の分まで……
◇
日が傾き、森に闇が訪れるころ、やっと俺は川から上がり森の中へと戻った。
ここまで来れば、あの男も早々追い付くことは出来ないだろう。
嬢ちゃんは逃げられないよう手足を縛り、地面に転がしておいた。
どうも嬢ちゃんはうつ伏せの状態が嫌なのか芋虫のようにもぞもぞと身をよじり木にもたれかかる。
見るからに高価な服が土にまみれていく様は見ていて気分が良い。
ここにきて俺はやっと嬢ちゃんをまじまじと観察する。
暗い闇夜の中でも輝くブロンドは地面に着くほど長く色ツヤも良い。
着ている服は汚れは目立つがレースの刺繍が細かく施され、中には輝く金糸が混ざって見える。明らかに仕立てが良い。
こりゃ並みの貴族様じゃなさそうだ。
歳は15くらいか?ガキの歳なんぞ気にしたことはないが、だいたいそれくらいだ。
しかし、一番気に入らないのはその顔。綺麗な顔をしているが、どうもにも生気を感じさせない人形みたいな顔をしている。
盗賊の男に連れ去られたのなら、も少し顔に不安や恐怖を貼り付けてもいいはずなのだが、それも感じられない。
俺は嬢ちゃんの観察をいったん止めて濡れた靴を脱ぎ裸足になる。本当なら焚火の一つでも起こして濡れた靴と足を暖めてやりたいが煙一つが命取りになりかねない。
「うぃぃ、寒い寒い」
俺は、ずっと黙りこくっている嬢ちゃんに近づく。
俺の目は汚れたスカートから覗く白磁のように真っ白な太ももを捉えていた。
嬢ちゃんは不気味に近づく俺に何かをされるんじゃないかと、固く目と口を閉じた。
やっと嬢ちゃんの顔に生きた表情が表れた。
その様子を内心で笑いながら俺はゆっくりと嬢ちゃんのそばに座る。
「ひっ」
嬢ちゃんが小さな悲鳴を上げた。
何を期待していたか知らないが、俺は冷えた足をその生っ白い太ももにピタリと付けて暖をとっているだけ。
「ギシシ」
嬢ちゃんのあまりの初心な反応に俺は堪えきれず笑いが込み上げてきた。
その様子に嬢ちゃんは一瞬ムッとした表情を浮かべるが、すぐに能面のような顔に戻る。
しばらくは、そのまま暖を取る。
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そうして、じっと自分の足を見ていると嬢ちゃんが話しかけてくる。
「な、なにもしないのですか?」
何も……それが何を指すのかは言わずもがな、だ。
「んん?俺に惚れたか?」
俺はギシシと汚い歯を見せて笑う。仲間内でも俺の笑い顔は汚いと評判だ。
しかし、嬢ちゃんは嫌悪感を浮かべることもなく何も映さない顔で「違います」とだけ呟いた。
その時、背後の茂みがガサガサと音を立てた。
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