異世界転移モノの序盤でやられる悪役盗賊の頭、公爵令嬢を人質に転移勇者からトンズラかまして新天地を目指す!

ポンコツロボ太

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第32話 アンスルの夕餉

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 ドゥーイに神剣モドキの製作を頼んだ俺達は、しばらくアンスルの町に滞在することとなった。

 なぜならドゥーイのじいさんが「どうせ作るのなら、神剣に負けないだけの物を打って見せる」と張り切っちまって、エセ神剣が出来るのに数日は掛かるとのことだった。
 そのため、俺達はアンスルの町にある安宿に居を構えることにしたのだった。

 安宿とは言え、二部屋借りる金など出したくない俺は、二人の反対を押し切って一番安い部屋を一部屋だけ借りた。

 さすが、安いだけあって作りは至ってシンプル。オンボロのベッドが二つに、小汚ない書き物机と足の長さが不揃いな椅子が一組があるだけの狭い客室。

 ヴィーが、部屋に一つだけある窓と雨戸を開けると西に傾きつつある日差しが部屋に入り込む。
 心地よい風が部屋の中を駆け巡り、埃を舞いあげエルが咳き込んだ。

 俺は、ベッドにどかりと座り込む。

「誰か、俺と一緒に寝るか?」

 二人は、俺の言葉を無視してもう一つのベッドに腰かけた。

 ちぇっ!つまらん奴らだな。ちょっとしたお茶目じゃねえか……

 久々のベッドに俺はごろりと寝転んで天井を見上げる。

「なぁ、本当にやるのか?」

 ヴィーが、こちらを見る事なく尋ねた。何をやるのか……言わずもがな、カケルの持つ神剣をすり替えの事だ。

「やるに決まってんだろ。大事な金がかかってんだからな」

「……そうか。ならば何も言うまい」

 そこからしばらく部屋の中を沈黙が支配した。
 誰も話すことなく、耳に入ってくるのはもっぱら外の賑やかな町の喧騒けんそうだけ。

 最初に沈黙に耐えられなくなったのはエルだった。

「あの……お腹すきません?」

 そういえば朝、卵とパンを食べたきりだったな。

「そうだな。少し早いが夕飯としゃれこむか?」

 俺はベッドから跳ねるように飛び起きると、それにならって二人ともベッドから立ち上がり一緒に部屋を出る。

 部屋が左右に八つずつ並ぶ廊下をギシギシと音を立てながら歩く。

「どこで食事をするんだ?もしかして冒険者ギルドで食べるなんて言わないよな?」

「当たり前だ。飯くらいのんびり食わせてくれ。ちょうどこの宿の真ん前に飯屋があったから、そこに行く」

 俺は二人の意見なんぞ聞く気はないので先陣切って宿屋前の飯屋ダイナーの中へと入った。

 中は外観通り狭く、床は油でぬめっていた。
 こういう店は店員が席に案内などしてくれない。

 俺は厨房に向かって「一番安くて一番うまい飯を三つ!」とだけ言うと、店の中央の席に座る。

 こういう店は初めてなのか、辺りを物珍しげにキョロキョロと見回しながらエルも俺に続いて席に着く。

「ねえ、マシラ。大コンゴウの串焼きって何かしら?」

 壁に貼られたメニューの中で一番目を引いたであろう物を俺に尋ねてきた。

「大コンゴウってのは、ばかでかい鸚鵡オウムだ。翼を広げりゃ牛ほどデカくて、あんまりデカ過ぎるもんで飛べないらしいぜ。それを南の方の島国じゃ家畜にして食ってるんだと」

「へぇ……そうなんだ。面白い」

 ただ飯の説明をしただけなのに、エルの瞳がキラキラと輝く。

 仕方ねえ……

「おおい!大コンゴウの串焼き三つ追加だ!」

「えっ!?いいの?」

「ケケケ。食ったことねえんだろ?実は俺もだ。どんな味するんだろなぁ?」

 話を聞いただけ知ってるだけじゃ、腹は膨れねぇし、俺はいつ死ぬか分からねえんだから、食ってみたいもんは食わなきゃな。

「なんだ、なかなか良いとこあるじゃないか」

 珍しくヴィーが俺を褒めた。しかし、若干含みがある言い方にひっかかりを感じる。

「珍しくとは何だ、珍しくとは?俺にゃ良いとこしかねえだろが!」

「良き所の多い人間は、お前みたいに盗賊なんてしないんだよ」

 そう言われて俺は考えてみる。俺以外の盗賊は、だいたい良いとこ無しのロクデナシばかりだった。

「ギシシシ、その通りだな。間違いねえや」

「そんな事ないよ!マシラにも良いところあるわ」

 エルが語気を強く、俺のフォローをしてくれる。
 その予想外な言動に俺とヴィーがポカンと呆気に取られていると、エルは恥ずかしくなったのかゴニョゴニョ何かを呟きながら体を小さくする。

「ケケケケ。エルにゃ、この俺の素晴らしさが伝わってるか!!何を恥ずかしがってんだ!ヴィーの分からず屋に俺の良い所を言ってやってくれ!さあ!!ほれ?」

 照れてるエルをからかってみる。

「エル。無理はしなくて良いですよ?無いなら無いとハッキリ言ってやるのも優しさです」

 俺とヴィー、二人に挟まれ、エルはさらに恐縮して身を縮めた。
 ういやつめ。

「おまちどう……」

 ちょうどそのタイミングで料理がテーブルに運ばれてきた。

 何やら芋と豆をごちゃ混ぜにした料理の上に、カリカリに揚げた魚がドンと乗っかった皿が三人の前にそれぞれ一つずつ。
 大コンゴウの串焼きは、大きな緑の葉の上に三つまとめて置かれていた。

「三十メルクね」

 店の店主なのか愛想のない店員が料理の値段だけ言って、そそくさと厨房を引っ込んでいった。

「さぁ、食うぜえ!!」

 俺は熱々の大コンゴウの串焼きに手を伸ばす。
 タレが掛かっているのか、やたらと焦げが目立つがどうでもいい。

 ガブリと噛みついて、串から肉をむしり取る。

 その様子をエルとヴィーがじっと凝視していた。

「さっさとお前達もさっさと食えよ」

 俺が促すとエルも大コンゴウの串焼きを手に取り小さく一口食べた。

「モグモグ……ん?」

 エルはモグモグと咀嚼して味を確かめると、俺と目が合う。その目は何かを訴えていた。

 言いたい事は分かる。分かるぞ、エル……

「普通に鶏肉だな?」

「……はい。鶏肉ですね」

 そう、期待していたほど特別な味はしなかった。なんなら普通に鶏肉を食べたほうが美味い気がする。

 それを聞いて、やっとヴィーも串焼きを手に取って食べ始める。

「ほんとだ……鶏肉です」

「へ、へへへ……」
「フフフ……」
「ケケケ……」

 謎の一体感を感じながら俺達の夕飯をたべつづけた。
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