異世界転移モノの序盤でやられる悪役盗賊の頭、公爵令嬢を人質に転移勇者からトンズラかまして新天地を目指す!

ポンコツロボ太

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第41話 ドゥーイとの別れ。エルとヴィー、冒険者ギルドへ

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 ズシリと重い神剣を手に取り、ドゥーイじいさんに笑いかける。

「おう。あとで金請求しても俺はとんずらかますからな。ケケケ」

「誰がそんなけち臭いこと言うか!!あと、これはおまけじゃ」

 じいさんは一旦、作業場の奥に戻り壁に付けられた作業棚の中から大きな革袋を取り出し作業台の上に置いた。

「なんだ、これ?ゴミならいらねえぞ」

「あほたれ!こりゃ、ヴァレリーの鎧とエレオノーラ様の外套ローブじゃ。どうせ、鎧なんぞ騎士団支給の物しかなくて困っておるんじゃろ」

 ジジイが革袋を縛る紐をほどくと中から銀に輝く胸当てと赤い外套が出てきた。

「鎧のサイズはヴァレリー用に調節してある。エレオノーラ様の外套の方は、魔法によって防御力が上昇しとるから、並みの剣じゃ歯もたたんぞ」

 おそらくじいさん自ら魔法的な加護も施したのだろう、その顔には自分の仕事に対して絶対の自信を伺わせていた。

「おお、じいさん気が利くじゃねえか。それで、俺のは?」

 俺にも何かくれと手を出すと、ジジイは俺の差し出した手を叩き落とした。

「あるわけないじゃろ!剣をただでやっただけありがたいと思え!!」

「ちぇっ!ケチジジイ」

 俺の悪態は聞こえなかったのか無視しているのか分からねえが、装備一式を改めて革袋に入れ直して、俺に渡してきた。
 俺もそれを受け取ると、剣も革袋もまとめて自分のマジックバッグの中に押し込む。

 それを見届けたじいさんが改まった顔で俺に向けて手を差し出してきた。

「なんだよ?」

「握手じゃ。ほれ、はようせいっ」

 仕方なく俺はじいさんの手を取る。その手は長年の鍛冶場仕事でゴツゴツと分厚い皮で覆われていた。

「ジジイ、あっさりくたばるなよ。俺が魔界領の領主になったら、あんたにデカい仕事を頼んでやっからよ」

「はっ!お前みたいな奴が領主になれかい!もし、本当に百万分の一、いや、一億分の一の確率で領主になれたとしたら、その時はタダで働いてやるわい」

 生意気なジジィめ!マジで、タダ働きさせてやる。

 俺は気合いを入れてジジイの手を握りつぶす勢いで手を握ると、向こうも力を込めて返してきやがった。

 さすが長年鍛冶仕事で鍛えてやがるだけのことはある。俺の自慢の握力でも握りつぶすことが出来ない。

「……ギシシシ」

「……ガハハハ」

 はたから見れば熱い熱い握手を交わしている、むさ苦しい男とじいさんだ。

 ……気持ちわりっ!

 俺は手の力を緩め、じいさんの手を離す。
 もうお互い話すことは尽きているが、このままジジイと見つめ合うなんて勘弁だ。

 俺は別れを告げる。

「じゃあな、じいさん」

「ああ、マシラ。頼んだぞ」

 振り向くことなくドゥーイの家を後にする。
 さあ、ここからが正念場。カケルの神剣をいただくとするかね……



 私はエルと共に、ギルドの扉を開けた。
 すると中にいた冒険者達の目が私達を見て、わずかに色めき立つ。

「はぁ……」

 この手のやからはどこも同じだ。うんざりする。

「エル、私についてきてください」

「うん、分かったわ」

 下卑た視線に晒されながら私達はマシラに指示された席に座る。
 隣に置かれたテーブルを確認するが、今は誰も座っていない。

 どうやら、来るのが早かったみたいだな……

 マシラにカケルが座るであろうテーブルの位置を教えられている。
 そして、その席の隣に座れと指示を受けているのだが、肝心のカケルがまだギルドに顔を出していないようなのだ。

「ヴィー、これからどうするの?」

 キョロキョロと辺りを伺い、少し居心地が悪そうなエルに声をかけられた。

「そうですね。とりあえず、待ちましょう」

 私は騎士団にいたころから、男どもの視線に晒されるのは慣れている。
 エルに安心してほしくて、私は彼女に笑いかける。

「心配しなくても大丈夫ですよ。ほとんどは、ただこちらを眺めるだけの無害な連中ですから。
 マシラあの男に比べれば可愛い者達ですよ」

 マシラの名を出した途端にエルの顔に笑顔が戻る。

「フフフ、そうよね?ここの人は、無理やり木に登らせたり、蛇の血なんて飲ませてくる人いないものね」

「ええ。あんな滅茶苦茶なヤツ、早々いないですよ」

 二人でマシラの陰口を言って笑い合う。
 普段そんな事をすれば、どこか気分が咎められるのだが、マシラについては、そんな気持ち微塵も起こらない。

「嬢ちゃん達、少し良いかぁ?」

 エルと楽しく談笑しているとそれをぶち壊しにする男が現れた。

 男は私達のテーブルに手を尽き、いやらしい視線を送ってきた。
 その視線にエルは萎縮してしまい、うつむいてしまう。

 エルの様子を見て私の心の中に怒りが芽生える。
 この場で斬り伏せてやろうかと自然に手が剣にかかるが、男の容姿を見て思いとどまる。

 男の体躯は他の冒険者より一回りほど大きく、胸には金飾の冒険者証をぶら下げ、顔にアザが出来ていた。
 その特徴がマシラから言伝をあづかっている相手と類似しているのだ。

「お前、もしかしてカケルとか言う冒険者にやられた男か?」

「あ゛ぁ?なんだと、この野郎!?」

 痛いとこを突かれたようで男は語気を荒げる。

「まあ、待て。私は、以前お前に頼み事を持ち掛けた男の仲間だ」

 男から怒りの感情が消え、わずかばかりの動揺が見て取れる。

「お?おお、あいつの仲間か?そ、それで、どうするんだ?」

「今日、決行だと伝えれば分かると言われている」

「きょ、きょ、きょ、今日だと!!?んな、急に言われても、こっちも心の準備ってもんがあるだろ?」

 男は慌てふためき、一瞬で顔から滝のような汗が吹き出した。
 私は男が渋った時の指示も受けている。

「わかった。貴方は座って見ていると良い。私達は他の手段を取らせてもらうことにする」

 意味はわからないが、それだけ言えば男は了解するとマシラから教えられている。 
 男は顔を百面相のように、ころころと変え思案していた。

「わかった!俺も男だ!奴らが来たら、イズナルディだけを外に連れ出してやる」

 男は覚悟を決めたようで、死地に赴く兵士のような表情で再び自分がいた席に戻っていった。

 どうもこの男、アンスルの冒険者達の間では良くも悪くも名が知られた男のようで、彼が去ってからは誰も私達に視線を送ってくる者はいなくなった。

「ふう。びっくりした」

 やっとエルが顔を上げてくれる。

「ヴィーは凄いね。あんな体の大きな人に一歩も引かないなんて」

「ただの慣れですよ。騎士団は男ばかりですから。それより、マシラのヤツ遅いですね?」

 入り口に目をやるが未だに来る気配がない。

「そうね……。ねえ、見て」

 エルが指差したのは、クエストボードに張られたマシラの手配書だった。

 そこに描かれた似顔絵は、今は懐かしささえ覚える髭面の顔だった。
 それを見て「クスクス」笑うエルを見て、少し暇潰しを思い付く。

「エル、来てください。マシラがどんな男だったか、受付に聞いてみましょう」

「えっ?そんなこと分かるの?」

「さぁ……ただ、手配書が出回っていますからマシラの情報も少なからず、こちらに流れていると思います」

 公的な手配書には、だいたい付随して犯人の身体的特徴や過去の事件などをギルドに提出しているはずなのだ。
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