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第42話 マシラの情報
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問題は冒険者証を持たない私にギルドがマシラの情報を教えてくれるかどうかだ。
しかし、私の心配はただの杞憂にすぎなかった。
「すまないが、あの手配書の男の事を教えてもらえないだろうか?」
依然クエストボードに貼られているマシラの手配書を指差して訊ねてみる。
「ああ。山猿盗賊団のリーダー、マシラですね。分かりました」
そう言って受付はカウンターの下から綴りを取り出すと、ペラペラと用紙をめくる。
そして、比較的若いページで手を止めマシラの事、そして山猿盗賊団の事を教えてくれた。
「手配書に書かれている通り、マシラは現在公爵家の御令嬢エレオノーラ様を誘拐して逃走してます。襲ったのはダコタの森を横断して共和国へと入る街道の途中みたいですね。
その際、数名の仲間がカケルさん……えっと、最近、ウチに加入した冒険者さんに討ち取られてます。
ただ、リーダーのマシラは何らかのスキルを使って森の中へエレオノーラ様を連れて逃げてしまっているって言うのが現状ですね。
そして、公爵家では、騎士団副団長であるサイ率いるエレオノーラ捜索隊が現場周辺を調査しており、何らかの情報があれば私共の方にも情報が流れてくることになっています」
私はサイの名を聞いて胸がドキリと大きく脈打った。
彼の正義を信じる真っ直ぐな眼差し。そして誰よりも、努力を惜しまない姿勢に私はいつも励まされ、勇気づけられていた。
サイと休日があえば一緒に出掛け、些細な事で笑い合い、たまに仕事の悩みを相談することもあった。
それほど近しい人を思い出せなかった自分に腹が立つ。
顔色の変化に気づいたのかエルが私の顔を覗き込むように心配してくれる。
「大丈夫、ヴィー?」
エルの顔を見て私は平静を取り戻した。
そうだ、私には何よりも大切な守るべき人がいる。彼女のために今はサイの事は置いておこう……
「大丈夫です、エル。それよりも続きを」
私が先を促すと受付嬢が先を続ける。
「この山猿盗賊団、実は特殊な盗賊団でして……今回の事件があるまでリーダーのマシラという男の首には賞金がかかっていなかったんですよ」
弱小の盗賊ならば首に賞金がついていなくてもおかしくはないが、彼女の話し方には若干の違和感を感じた。
エルも同じように思ったのか受付嬢に疑問を投げかけた。
「それは、どういうことですか?」
「それはですね……えっと、実は山猿盗賊団で一番高い賞金首は、バブズと言う男でして。もともとバブズはエンドラ伯爵の領地で騎士をしていたんですが、気に入らない上官を殺してしまい賞金が23万メルクがかけられています。
次に高いジョニーは殺人と婦女暴行で14万メルク。あとの手下たちも、強姦や殺人でそれぞれに五から六万メルクの賞金が付いているんです。
でも、それって盗賊団としてではなくて、個人個人についていた賞金なんですよ……」
「なぜ、そんなことに?」
「さあ、詳しくは分からないんですけど、マシラがこの癖の強い手下を上手く制御していたのか……その辺は謎なんです。
しかも、マシラ自身が殺人を犯したっていう情報はほとんどなくて、あっても一件か二件。それも、盗賊同士の諍いでのものですし……
盗み自体もやり口が上手いのか、それとも少額狙いのケチな仕事しかしていないのか、大それた犯罪を犯すのは今回のものくらいなんですよ。
なので、マシラはリーダーでありながら今回初めてその首に賞金がかかっているんです」
あの不器用に笑う男が、根っからの悪人ではないと言われているようで妙に納得というかホッとしている自分がいることに驚く。
それは、エルも同じなのか胸を撫でおろす様子が見えた。
「あいつは俺が必ず捕まえて見せる」
ふいに背後から声がかかった。その瞬間受付嬢の顔に色が差す。
「カケルさん!今日は遅いんですね?」
カケルと聞いてエルの顔が見る間に青く変わる。
私はその顔が悟られないよう、エルとカケルの間に自然に体を割り込ませながら振り返る。
カケルは受付嬢と楽しげに話していて、私達の様子には気付いていなかった。
彼の後ろには、やはりイズナルディの姿もある。
マシラはまだ来ていないが、作戦開始だ。
最初に動いたのは、私達に突っかかってきた冒険者の男だ。
見るからにギクシャクした様子でイズナルディに近づき声をかける。
「おう!イズナルディ!!少し話があるんだが、ちょっと面を貸してくれよ」
「……」
声をかけられたイズナルディの方は男を訝しげに睨むだけで返事をしない。
「俺の方は受付さんとまだ話があるから出てきても大丈夫だぞ?」
カケルはイズナルディへの信頼からなのか、それとも何も考えていないのか、男に同行することを勧めた。
その態度に少し不満げではあるが「カケルがそう言うのなら……」とイズナルディは男に付いていくことを了承する。
男を先頭に嫌々ながらイズナルディはギルドの出口へと向かっていった。
それを見計らいエルは彼らの後を追うようにギルドの外へと付いていく。
エルがマシラから受けた仕事。それは、冒険者の男がイズナルディを上手く足止めできるかの監視だ。
そして私の役目……本当に嫌になってくる。
私はさりげなくシャツのボタンを上から三つほど開け胸の谷間をさらけ出す。
私は「貴方がカケルさんですか?お噂はかねがね聞いていますぅ」と普段することのない愛想笑いを顔に張り付けカケルと対峙するのだった。
しかし、私の心配はただの杞憂にすぎなかった。
「すまないが、あの手配書の男の事を教えてもらえないだろうか?」
依然クエストボードに貼られているマシラの手配書を指差して訊ねてみる。
「ああ。山猿盗賊団のリーダー、マシラですね。分かりました」
そう言って受付はカウンターの下から綴りを取り出すと、ペラペラと用紙をめくる。
そして、比較的若いページで手を止めマシラの事、そして山猿盗賊団の事を教えてくれた。
「手配書に書かれている通り、マシラは現在公爵家の御令嬢エレオノーラ様を誘拐して逃走してます。襲ったのはダコタの森を横断して共和国へと入る街道の途中みたいですね。
その際、数名の仲間がカケルさん……えっと、最近、ウチに加入した冒険者さんに討ち取られてます。
ただ、リーダーのマシラは何らかのスキルを使って森の中へエレオノーラ様を連れて逃げてしまっているって言うのが現状ですね。
そして、公爵家では、騎士団副団長であるサイ率いるエレオノーラ捜索隊が現場周辺を調査しており、何らかの情報があれば私共の方にも情報が流れてくることになっています」
私はサイの名を聞いて胸がドキリと大きく脈打った。
彼の正義を信じる真っ直ぐな眼差し。そして誰よりも、努力を惜しまない姿勢に私はいつも励まされ、勇気づけられていた。
サイと休日があえば一緒に出掛け、些細な事で笑い合い、たまに仕事の悩みを相談することもあった。
それほど近しい人を思い出せなかった自分に腹が立つ。
顔色の変化に気づいたのかエルが私の顔を覗き込むように心配してくれる。
「大丈夫、ヴィー?」
エルの顔を見て私は平静を取り戻した。
そうだ、私には何よりも大切な守るべき人がいる。彼女のために今はサイの事は置いておこう……
「大丈夫です、エル。それよりも続きを」
私が先を促すと受付嬢が先を続ける。
「この山猿盗賊団、実は特殊な盗賊団でして……今回の事件があるまでリーダーのマシラという男の首には賞金がかかっていなかったんですよ」
弱小の盗賊ならば首に賞金がついていなくてもおかしくはないが、彼女の話し方には若干の違和感を感じた。
エルも同じように思ったのか受付嬢に疑問を投げかけた。
「それは、どういうことですか?」
「それはですね……えっと、実は山猿盗賊団で一番高い賞金首は、バブズと言う男でして。もともとバブズはエンドラ伯爵の領地で騎士をしていたんですが、気に入らない上官を殺してしまい賞金が23万メルクがかけられています。
次に高いジョニーは殺人と婦女暴行で14万メルク。あとの手下たちも、強姦や殺人でそれぞれに五から六万メルクの賞金が付いているんです。
でも、それって盗賊団としてではなくて、個人個人についていた賞金なんですよ……」
「なぜ、そんなことに?」
「さあ、詳しくは分からないんですけど、マシラがこの癖の強い手下を上手く制御していたのか……その辺は謎なんです。
しかも、マシラ自身が殺人を犯したっていう情報はほとんどなくて、あっても一件か二件。それも、盗賊同士の諍いでのものですし……
盗み自体もやり口が上手いのか、それとも少額狙いのケチな仕事しかしていないのか、大それた犯罪を犯すのは今回のものくらいなんですよ。
なので、マシラはリーダーでありながら今回初めてその首に賞金がかかっているんです」
あの不器用に笑う男が、根っからの悪人ではないと言われているようで妙に納得というかホッとしている自分がいることに驚く。
それは、エルも同じなのか胸を撫でおろす様子が見えた。
「あいつは俺が必ず捕まえて見せる」
ふいに背後から声がかかった。その瞬間受付嬢の顔に色が差す。
「カケルさん!今日は遅いんですね?」
カケルと聞いてエルの顔が見る間に青く変わる。
私はその顔が悟られないよう、エルとカケルの間に自然に体を割り込ませながら振り返る。
カケルは受付嬢と楽しげに話していて、私達の様子には気付いていなかった。
彼の後ろには、やはりイズナルディの姿もある。
マシラはまだ来ていないが、作戦開始だ。
最初に動いたのは、私達に突っかかってきた冒険者の男だ。
見るからにギクシャクした様子でイズナルディに近づき声をかける。
「おう!イズナルディ!!少し話があるんだが、ちょっと面を貸してくれよ」
「……」
声をかけられたイズナルディの方は男を訝しげに睨むだけで返事をしない。
「俺の方は受付さんとまだ話があるから出てきても大丈夫だぞ?」
カケルはイズナルディへの信頼からなのか、それとも何も考えていないのか、男に同行することを勧めた。
その態度に少し不満げではあるが「カケルがそう言うのなら……」とイズナルディは男に付いていくことを了承する。
男を先頭に嫌々ながらイズナルディはギルドの出口へと向かっていった。
それを見計らいエルは彼らの後を追うようにギルドの外へと付いていく。
エルがマシラから受けた仕事。それは、冒険者の男がイズナルディを上手く足止めできるかの監視だ。
そして私の役目……本当に嫌になってくる。
私はさりげなくシャツのボタンを上から三つほど開け胸の谷間をさらけ出す。
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