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【第三話】蒙古襲来
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島津三郎が生まれたその年と、さらに2年後に、モンゴル帝国は再び国書を送ってきた。
しかし、幕府はその全てを黙殺した。
クビライは、日本遠征を決める。
しかし、彼の中には一抹の不安があった。今までの大陸の国々と異なり、日本は島国であるため慣れない水軍を用いなければならないことや、得意の騎馬戦法を使えないことが彼を悩ませていた。
だからこそ、国書を何度も送り、穏便に従属させることを目指していたが、思いの外日本は強情であり、北条時宗という男が強い信念を持っていることを知った。
「北条時宗というのはどういう男なのだ?」
「まだ20歳そこそこの若者だそうで、かなり期待されて幕府の執権となったようです」
「そうか、相当な切れ物のようだな」
モンゴル帝国の主力は漢軍で、それに高麗軍も加わる形になりそうであった。
「三度も国書を黙殺したのだ。蒙古は必ず攻め込んでくるであろう」
鎌倉の御所では、北条時宗が重臣たちを集めていた。
北条政村、実時、安達泰盛は大きく頷いた。
「九州に対する備えをせねばなるまい。西国御家人を下向させ、異国警固番役としましょう」
「鎮西奉行の少弐資能と大友頼泰に指揮をとらせ筑前、筑後、肥前、肥後の西国御家人をまとめさせよ」
時宗も大いに悩んでいた。伝え聞く蒙古軍の強さは半端なものではなく、西国御家人だけで対抗できるのか。
ことここまで至ればすでに戦は避けられない。覚悟を決めるしかないのだ。
恐怖から逃げ出したくなる自分を必死に抑え込み、一座の中心に腰を据えていた。
北条時宗、若干20歳の若者がこの国の命運を握っていた。
その日も時宗は日課の遠乗りにでかけていた。
馬の呼吸を見極めながら、走らせたり、早歩きさせたり切り替えをする。
その日は快晴であり、富士の山がよく見えた。山頂にはうっすらと雪が積もっているようだ。
馬を止め、草原に仰向けになって寝転ぶ。
目を閉じると空と大地と自分の身体が一つの生き物になったような感覚になる。
クビライも同じ空を見ているのだろうか。
モンゴル帝国は名を改め、元という国になっていた。
日本よりはるかに広い大陸の大半を制し、今やその矛先は日本という小さな島国に向いているのだ。
その小さな日本のさらに小さな鎌倉という土地しか知らない時宗にとって、想像することができない規模の大きさである。
武者震いどころか、全く実感の湧かないことで、これは夢なのではないかと思う瞬間もある。
その瞬間は簡単に破られた。
「殿、直ちに御所にお戻りください」
嫌な気配だ。とっさにそう感じた。
身体を起こし馬に跨るが、自分が思うように動きがついてこない。まるで夢の中でもがいているように、急いでも急いでも馬の歩は遅い。
やっとの思いで御所にたどり着く。
馬を飛び降り、評定の間へ急ぐ。
宿老たちの表情が全てを物語っていた。
「ついにきたか」
「はっ、対馬がやられたそうにございます」
「敵の規模は?」
「およそ4万程度とのこと」
「筑・肥の御家人だけでは足りぬな‥」
「直ちに援軍を!」
「誰を遣わしますか?」
「‥」
議論は伯仲したがこれといった対策がとれたわけではなかった。
取り急ぎ、中国地方・九州地方の守護に対して、国中の御家人ならびに本所・領家一円の住人で幕府と直接御恩奉公関係にない武士層まで率いて防御体制をとるよう動員令を発した。
打てる手は全て打てたのだろうか。
見えない敵に時宗は焦りに焦った。
敵が撤退したとの報せがきたのはそれから数日後であった。
しかし、幕府はその全てを黙殺した。
クビライは、日本遠征を決める。
しかし、彼の中には一抹の不安があった。今までの大陸の国々と異なり、日本は島国であるため慣れない水軍を用いなければならないことや、得意の騎馬戦法を使えないことが彼を悩ませていた。
だからこそ、国書を何度も送り、穏便に従属させることを目指していたが、思いの外日本は強情であり、北条時宗という男が強い信念を持っていることを知った。
「北条時宗というのはどういう男なのだ?」
「まだ20歳そこそこの若者だそうで、かなり期待されて幕府の執権となったようです」
「そうか、相当な切れ物のようだな」
モンゴル帝国の主力は漢軍で、それに高麗軍も加わる形になりそうであった。
「三度も国書を黙殺したのだ。蒙古は必ず攻め込んでくるであろう」
鎌倉の御所では、北条時宗が重臣たちを集めていた。
北条政村、実時、安達泰盛は大きく頷いた。
「九州に対する備えをせねばなるまい。西国御家人を下向させ、異国警固番役としましょう」
「鎮西奉行の少弐資能と大友頼泰に指揮をとらせ筑前、筑後、肥前、肥後の西国御家人をまとめさせよ」
時宗も大いに悩んでいた。伝え聞く蒙古軍の強さは半端なものではなく、西国御家人だけで対抗できるのか。
ことここまで至ればすでに戦は避けられない。覚悟を決めるしかないのだ。
恐怖から逃げ出したくなる自分を必死に抑え込み、一座の中心に腰を据えていた。
北条時宗、若干20歳の若者がこの国の命運を握っていた。
その日も時宗は日課の遠乗りにでかけていた。
馬の呼吸を見極めながら、走らせたり、早歩きさせたり切り替えをする。
その日は快晴であり、富士の山がよく見えた。山頂にはうっすらと雪が積もっているようだ。
馬を止め、草原に仰向けになって寝転ぶ。
目を閉じると空と大地と自分の身体が一つの生き物になったような感覚になる。
クビライも同じ空を見ているのだろうか。
モンゴル帝国は名を改め、元という国になっていた。
日本よりはるかに広い大陸の大半を制し、今やその矛先は日本という小さな島国に向いているのだ。
その小さな日本のさらに小さな鎌倉という土地しか知らない時宗にとって、想像することができない規模の大きさである。
武者震いどころか、全く実感の湧かないことで、これは夢なのではないかと思う瞬間もある。
その瞬間は簡単に破られた。
「殿、直ちに御所にお戻りください」
嫌な気配だ。とっさにそう感じた。
身体を起こし馬に跨るが、自分が思うように動きがついてこない。まるで夢の中でもがいているように、急いでも急いでも馬の歩は遅い。
やっとの思いで御所にたどり着く。
馬を飛び降り、評定の間へ急ぐ。
宿老たちの表情が全てを物語っていた。
「ついにきたか」
「はっ、対馬がやられたそうにございます」
「敵の規模は?」
「およそ4万程度とのこと」
「筑・肥の御家人だけでは足りぬな‥」
「直ちに援軍を!」
「誰を遣わしますか?」
「‥」
議論は伯仲したがこれといった対策がとれたわけではなかった。
取り急ぎ、中国地方・九州地方の守護に対して、国中の御家人ならびに本所・領家一円の住人で幕府と直接御恩奉公関係にない武士層まで率いて防御体制をとるよう動員令を発した。
打てる手は全て打てたのだろうか。
見えない敵に時宗は焦りに焦った。
敵が撤退したとの報せがきたのはそれから数日後であった。
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