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【第八話】黒き猛獣の襲来
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対馬。
朝鮮半島と九州のちょうど中間地点にある島である。
朝鮮半島から日本を攻めるとしたら、足がかりに必ず押さえたい島である。
現に、前回の蒙古襲来時も、元軍が一番最初に押さえたのがこの島であった。
その次に襲われたのが壱岐島である。
対馬・壱岐島が占領されたとの報せが大宰府に入ったのは6月に入ってからであった。
すでに元軍の動きを察知していた、北条実政は博多湾岸の守りを固めるべく、諸将に指示を出していたところであった。
博多の防御は完全に整っていた。
元の東路軍司令官のヒンドゥ・洪茶丘は海上から博多湾岸を見てため息をついた。
「あれでは上陸できぬな」
「東側の志賀島に回るか」
「では、針路を変えよう」
博多湾から見える元軍の船団は見たこともない大きさであった。黒い巨大な猛獣のように見えた。
すると、猛獣は東へ針路を変え動き出した。
どうやら志賀島を目指しているようであった。
元軍は志賀島を占領し、船を停泊させた。
日本軍はこれに対し、海路、陸路の両面から進軍を開始した。
元軍は両面に対し対抗する。
元軍は弩兵をもって攻撃してきた。
「すごい量の矢が一斉に飛んでくるぞ。気をつけろ」
最初の一撃でかなりの人数がやられたようだ。
「怯むな!突っ込め」
日本軍は負けじと突撃を敢行する。
日本軍の凄まじい突撃に、元軍がわずかに怯んだ。
「今だ!おせ、おせぃ」
陸路側の元軍は一気に押し返される。
元軍の司令官の洪茶丘も馬を捨て、命からがら逃げ出した。
海路では、伊予の御家人、河野通有が船ごと突撃を敢行していた。
敵船に乗り込むと太刀を振るい、次々と敵兵を薙ぎ倒していく。
「我につづけ!」
通有の掛け声に、肥後御家人・竹崎季長、肥前御家人・福田兼重・兼光親子も続く。
元軍も必死の抵抗を試みるが、通有の太刀捌きは凄まじく、弓傷を受けてもその猛攻は止まらない。
「敵将とみた、尋常に勝負せい!」
目の前に現れたのは、元の将校らしき出立ちをしている。通有の威圧に動くことは出来なかった。
勝負は目に見えていた。
「生捕りにして、引っ立てい!」
疲れを知らぬ河野通有の突撃は元軍に大打撃を与えていた。
「我らが勝利ぞ!勝鬨をあげい!」
通有は叫んだ。
海路・陸路共に日本軍が制し、元の船団は撤退を余儀なくされ、壱岐島へ退却していった。
洪茶丘は、壱岐島に退却し、江南軍と合流を待つこととした。
しかし、期限の日を過ぎても江南軍は現れず、疫病も蔓延しだした。
「江南軍は何をしておるのだ」
「疫病でかなりの兵がやられたようだ」
ヒンドゥ・洪茶丘の両名は先の敗北もあり完全に戦意を喪失していた。
征日本都元帥の金方慶は黙るより他なかった。
「兵糧はまだある、さらに皇帝陛下は江南軍と合流すれば必ず勝てると仰られておる。なんとかそこまで待とうではないか」
戦略とも言えぬ期待論に、司令官二人は呆然としつつ、頷くことしか出来なかった。
壱岐島への追撃が始まった。
島津久経・忠宗親子も、追撃軍に加わった。
松浦党や、龍造寺氏、高木氏、彼杵氏などと合わせて数万の軍勢である。
島津久経は勢いにのり、弓をつがえては引き、つがえては引き次々と敵を薙ぎ倒していった。
「押せ!押せぃ」
忠宗も太刀を振るい、敵を切り捨てながら前進する。
薩摩勢の勢いは凄まじく、陣形の崩れた敵をどんどん押し込んでいく。
海上では、前の鎮西奉行・少弐資能が苦戦していた。
敵の矢を受け、負傷したのである。
「なんの、これしきの傷、我らも応戦せよ!」
「資時さま、お討死!」
「くっ、厳しくなってきたの‥」
瀬戸浦では肥前御家人・龍造寺家清が突撃を開始した。一門の龍造寺季時が戦死するなど、元軍の激しい抵抗に遭いながら、こちらも凄まじい勢いで敵を薙ぎ倒しながら進んだ。
「日本軍の勢いが強すぎる。このままではやられるぞ」
洪茶丘は絶叫した。
「申し上げます」
「なんだ!」
「江南軍はこちらに向かっておらず、平戸方面に向かって進軍中とのこと」
「なんだと!」
「仕方あるまい、壱岐島は捨て、我らも平戸に向かうぞ」
日本軍の猛攻により、東路軍は壱岐島から撤退していった。
しかし、まだ、元の脅威が去ったわけではなかった。
北条実政の元には、次々と戦況報告が入っていた。
中でも、六波羅探題から6万騎を率いて、宇都宮貞綱がこちらに向かっているとの報は大きかったが、今この戦況の中で間に合うのかは疑問があった。
それよりも、壱岐島の大勝利は非常に喜ばしいものがあったが、敵の主力が平戸方面に集結しているというのは計算外であった。そちら側にはそこまで手厚い手当をしていない。
その日は、昼間から雨が降り続いていた。次第に風も強くなり、台風が来たことを知った。
数日後、実政のもとに元軍が撤退したとの報が入ってきた。
「ついにやったぞ!」
実政は叫んだ。
朝鮮半島と九州のちょうど中間地点にある島である。
朝鮮半島から日本を攻めるとしたら、足がかりに必ず押さえたい島である。
現に、前回の蒙古襲来時も、元軍が一番最初に押さえたのがこの島であった。
その次に襲われたのが壱岐島である。
対馬・壱岐島が占領されたとの報せが大宰府に入ったのは6月に入ってからであった。
すでに元軍の動きを察知していた、北条実政は博多湾岸の守りを固めるべく、諸将に指示を出していたところであった。
博多の防御は完全に整っていた。
元の東路軍司令官のヒンドゥ・洪茶丘は海上から博多湾岸を見てため息をついた。
「あれでは上陸できぬな」
「東側の志賀島に回るか」
「では、針路を変えよう」
博多湾から見える元軍の船団は見たこともない大きさであった。黒い巨大な猛獣のように見えた。
すると、猛獣は東へ針路を変え動き出した。
どうやら志賀島を目指しているようであった。
元軍は志賀島を占領し、船を停泊させた。
日本軍はこれに対し、海路、陸路の両面から進軍を開始した。
元軍は両面に対し対抗する。
元軍は弩兵をもって攻撃してきた。
「すごい量の矢が一斉に飛んでくるぞ。気をつけろ」
最初の一撃でかなりの人数がやられたようだ。
「怯むな!突っ込め」
日本軍は負けじと突撃を敢行する。
日本軍の凄まじい突撃に、元軍がわずかに怯んだ。
「今だ!おせ、おせぃ」
陸路側の元軍は一気に押し返される。
元軍の司令官の洪茶丘も馬を捨て、命からがら逃げ出した。
海路では、伊予の御家人、河野通有が船ごと突撃を敢行していた。
敵船に乗り込むと太刀を振るい、次々と敵兵を薙ぎ倒していく。
「我につづけ!」
通有の掛け声に、肥後御家人・竹崎季長、肥前御家人・福田兼重・兼光親子も続く。
元軍も必死の抵抗を試みるが、通有の太刀捌きは凄まじく、弓傷を受けてもその猛攻は止まらない。
「敵将とみた、尋常に勝負せい!」
目の前に現れたのは、元の将校らしき出立ちをしている。通有の威圧に動くことは出来なかった。
勝負は目に見えていた。
「生捕りにして、引っ立てい!」
疲れを知らぬ河野通有の突撃は元軍に大打撃を与えていた。
「我らが勝利ぞ!勝鬨をあげい!」
通有は叫んだ。
海路・陸路共に日本軍が制し、元の船団は撤退を余儀なくされ、壱岐島へ退却していった。
洪茶丘は、壱岐島に退却し、江南軍と合流を待つこととした。
しかし、期限の日を過ぎても江南軍は現れず、疫病も蔓延しだした。
「江南軍は何をしておるのだ」
「疫病でかなりの兵がやられたようだ」
ヒンドゥ・洪茶丘の両名は先の敗北もあり完全に戦意を喪失していた。
征日本都元帥の金方慶は黙るより他なかった。
「兵糧はまだある、さらに皇帝陛下は江南軍と合流すれば必ず勝てると仰られておる。なんとかそこまで待とうではないか」
戦略とも言えぬ期待論に、司令官二人は呆然としつつ、頷くことしか出来なかった。
壱岐島への追撃が始まった。
島津久経・忠宗親子も、追撃軍に加わった。
松浦党や、龍造寺氏、高木氏、彼杵氏などと合わせて数万の軍勢である。
島津久経は勢いにのり、弓をつがえては引き、つがえては引き次々と敵を薙ぎ倒していった。
「押せ!押せぃ」
忠宗も太刀を振るい、敵を切り捨てながら前進する。
薩摩勢の勢いは凄まじく、陣形の崩れた敵をどんどん押し込んでいく。
海上では、前の鎮西奉行・少弐資能が苦戦していた。
敵の矢を受け、負傷したのである。
「なんの、これしきの傷、我らも応戦せよ!」
「資時さま、お討死!」
「くっ、厳しくなってきたの‥」
瀬戸浦では肥前御家人・龍造寺家清が突撃を開始した。一門の龍造寺季時が戦死するなど、元軍の激しい抵抗に遭いながら、こちらも凄まじい勢いで敵を薙ぎ倒しながら進んだ。
「日本軍の勢いが強すぎる。このままではやられるぞ」
洪茶丘は絶叫した。
「申し上げます」
「なんだ!」
「江南軍はこちらに向かっておらず、平戸方面に向かって進軍中とのこと」
「なんだと!」
「仕方あるまい、壱岐島は捨て、我らも平戸に向かうぞ」
日本軍の猛攻により、東路軍は壱岐島から撤退していった。
しかし、まだ、元の脅威が去ったわけではなかった。
北条実政の元には、次々と戦況報告が入っていた。
中でも、六波羅探題から6万騎を率いて、宇都宮貞綱がこちらに向かっているとの報は大きかったが、今この戦況の中で間に合うのかは疑問があった。
それよりも、壱岐島の大勝利は非常に喜ばしいものがあったが、敵の主力が平戸方面に集結しているというのは計算外であった。そちら側にはそこまで手厚い手当をしていない。
その日は、昼間から雨が降り続いていた。次第に風も強くなり、台風が来たことを知った。
数日後、実政のもとに元軍が撤退したとの報が入ってきた。
「ついにやったぞ!」
実政は叫んだ。
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