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【第九話】次世代へのバトン
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元の侵攻を食い止めてから3年の月日が流れていた。
島津久経は死の床にあった。
「忠宗よ、薩摩守護職と家督はそなたに継がせる。久長にはすでに所領を分配してある故、兄弟力を合わせて島津の家を守ってくれ」
「はっ‥、ち、父上‥」
「泣くな、忠宗よ」
「はい‥」
「それと、三郎のことじゃが、あやつは薩摩一国に収まる器ではないぞ」
「はっ」
「あやつには、大将の器が備わっておる。のびのびと育てるがよい」
「畏まりました」
「元とのいくさはしんどかったが、楽しくもあったの」
「また、父上の背中を見ながら戦いとうございます」
「はっはっはっ、無理を申すな。もう身体が動かんわ」
「久長よ、兄をよく助けよ」
「はい、父上!」
傍に控えていた、弟の伊作久長も頬が濡れている。
父・島津久経は初代忠久公の嫡孫として、立派に島津の家を守り抜き、自分に跡を継がせた。
陰謀渦巻くあの鎌倉で、何事もなかったように島津家を守った。
九州に下向してからは、明るい表情が目立つようになり、鎌倉での日々がいかに重圧であったかを物語っているかのようであった。
父が息を引き取ったのは、その夜のことであった。
最後は息子たちに囲まれ、多難な人生を生き抜いた充実感に満ちた表情であった。
鎌倉の足利屋敷は騒然としていた。
当主、足利家時が自害して果てたのである。
執権・北条時宗が34歳の若さで死んでから2ヶ月後のことであった。
鎌倉中での噂では、時宗の死に殉じたものとして、なんと忠義に篤き男よ、さすが足利一族よ、と持て囃されていた。
足利貞氏は呆然としていた。まだ12歳である。当然であった。
高師氏・師重親子が貞氏を支えていた。
「貞氏さま」
師氏が重い口を開いた。
「今から言うことは、亡き殿からのご遺言とお心得ください」
「師重も心して聞くがよい」
「執権さまがお亡くなりになったその日、私は殿に呼ばれ次のように言われました」
「師氏よ、これは秘中の秘ぞ‥」
「‥足利は将軍にならねばならぬ家である。ただ、現在の鎌倉ではそれは無理であろう。」
「さきの元寇で、幕府の支配力はより強力になったと同時に、御恩を施さなければならぬ対象が増えた」
「このことの意味がわかるか?元寇は防衛戦であったが故に、勝利しても恩賞とする土地がない」
「まだ幕府の支配は針の穴も開かぬほど盤石であるが、いずれ立ち行かなくなるのは目にみえておる」
「幕府の綻びが明白になってきた時が我らの出番である。ただしそれはまだ先の話であろう。それまでは雌伏の時である。幕府にわずかでも疑われてはならぬ。」
「このことは、代々の足利家当主に秘中の秘として引き継いでほしい。わしはわしなりに、幕府への忠義を示したいと思っておる。わし共々、貞氏のこともよろしく頼むぞ」
「‥とのことでした」
「貞氏さま、つまりお父上は、執権さまに殉じることによって幕府への最大の忠義を示したのです」
「我らがお支えします故、貞氏さまは足利の当主としていかに処すべきがよくよくお考えになってください」
「‥よくわかった。師氏に師重、父上同様わしのこともよろしく頼んだぞ」
「はっ!畏まりました」
新田基氏・朝氏親子が弔問に訪れた。
「この度はご愁傷様でした」
「まさか家時さまが殉死なさるとは‥」
「新田の家は、足利一族である。父同様この貞氏のこともよろしく頼むぞ」
「はっ、畏まってございます」
「我が息子朝氏は、貞氏さまと歳も近うございます故、よくよくお支えするよう申し聞かせます」
「うむ、頼もしい限りである」
「こちらこそ、我が新田を今後ともよしなにお引き立てくだされ」
第9代執権には、時宗の嫡男・北条貞時が就任した。
次世代に残された課題は山積みである。
新たな世代の船出が始まった。
島津久経は死の床にあった。
「忠宗よ、薩摩守護職と家督はそなたに継がせる。久長にはすでに所領を分配してある故、兄弟力を合わせて島津の家を守ってくれ」
「はっ‥、ち、父上‥」
「泣くな、忠宗よ」
「はい‥」
「それと、三郎のことじゃが、あやつは薩摩一国に収まる器ではないぞ」
「はっ」
「あやつには、大将の器が備わっておる。のびのびと育てるがよい」
「畏まりました」
「元とのいくさはしんどかったが、楽しくもあったの」
「また、父上の背中を見ながら戦いとうございます」
「はっはっはっ、無理を申すな。もう身体が動かんわ」
「久長よ、兄をよく助けよ」
「はい、父上!」
傍に控えていた、弟の伊作久長も頬が濡れている。
父・島津久経は初代忠久公の嫡孫として、立派に島津の家を守り抜き、自分に跡を継がせた。
陰謀渦巻くあの鎌倉で、何事もなかったように島津家を守った。
九州に下向してからは、明るい表情が目立つようになり、鎌倉での日々がいかに重圧であったかを物語っているかのようであった。
父が息を引き取ったのは、その夜のことであった。
最後は息子たちに囲まれ、多難な人生を生き抜いた充実感に満ちた表情であった。
鎌倉の足利屋敷は騒然としていた。
当主、足利家時が自害して果てたのである。
執権・北条時宗が34歳の若さで死んでから2ヶ月後のことであった。
鎌倉中での噂では、時宗の死に殉じたものとして、なんと忠義に篤き男よ、さすが足利一族よ、と持て囃されていた。
足利貞氏は呆然としていた。まだ12歳である。当然であった。
高師氏・師重親子が貞氏を支えていた。
「貞氏さま」
師氏が重い口を開いた。
「今から言うことは、亡き殿からのご遺言とお心得ください」
「師重も心して聞くがよい」
「執権さまがお亡くなりになったその日、私は殿に呼ばれ次のように言われました」
「師氏よ、これは秘中の秘ぞ‥」
「‥足利は将軍にならねばならぬ家である。ただ、現在の鎌倉ではそれは無理であろう。」
「さきの元寇で、幕府の支配力はより強力になったと同時に、御恩を施さなければならぬ対象が増えた」
「このことの意味がわかるか?元寇は防衛戦であったが故に、勝利しても恩賞とする土地がない」
「まだ幕府の支配は針の穴も開かぬほど盤石であるが、いずれ立ち行かなくなるのは目にみえておる」
「幕府の綻びが明白になってきた時が我らの出番である。ただしそれはまだ先の話であろう。それまでは雌伏の時である。幕府にわずかでも疑われてはならぬ。」
「このことは、代々の足利家当主に秘中の秘として引き継いでほしい。わしはわしなりに、幕府への忠義を示したいと思っておる。わし共々、貞氏のこともよろしく頼むぞ」
「‥とのことでした」
「貞氏さま、つまりお父上は、執権さまに殉じることによって幕府への最大の忠義を示したのです」
「我らがお支えします故、貞氏さまは足利の当主としていかに処すべきがよくよくお考えになってください」
「‥よくわかった。師氏に師重、父上同様わしのこともよろしく頼んだぞ」
「はっ!畏まりました」
新田基氏・朝氏親子が弔問に訪れた。
「この度はご愁傷様でした」
「まさか家時さまが殉死なさるとは‥」
「新田の家は、足利一族である。父同様この貞氏のこともよろしく頼むぞ」
「はっ、畏まってございます」
「我が息子朝氏は、貞氏さまと歳も近うございます故、よくよくお支えするよう申し聞かせます」
「うむ、頼もしい限りである」
「こちらこそ、我が新田を今後ともよしなにお引き立てくだされ」
第9代執権には、時宗の嫡男・北条貞時が就任した。
次世代に残された課題は山積みである。
新たな世代の船出が始まった。
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