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【第二十九話】討幕軍誕生
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帝にまんまと逃げられてしまった隠岐守護の佐々木清高は怒り狂っていた。
しかし、起きてしまったことは仕方がない。
帝が伯耆国の船上山という場所で挙兵したという情報を得ると、自ら出陣し、伯耆国の小鴨元之・糟屋重行らとともに船上山に攻め寄せた。
「今度こそ失敗は許されぬぞ。帝をなんとしても捕らえて隠岐島へ連れ帰るのじゃ!」
一族の、佐々木昌綱・定宗らに宣言した。
佐々木方の兵は3千ほどである。
それに対して、船上山に翻る旗印を見ると、4~5百程度の兵がいるようであった。
船上山は大山の北東の麓に位置し、四方を山に囲まれた天然の要害であった。
佐々木勢は、攻勢を仕掛けたが、佐々木昌綱は右目に矢を受け戦死。搦手側の佐々木定宗は降伏。それらの状況を知らずに、佐々木清高率いる本軍は船上山を攻め上がるも、夕方から降ってきた暴風雨に乗じた帝方の名和軍の襲撃に混乱し船上山の断崖絶壁から多数の兵が落ちるなどの被害をだし、佐々木清高は命からがら逃げ帰っていった。
船上山の実兵力は150人程度であった。
名和長年の策略で、旗を大量に設置し、なんとか数百の兵がいるように見せかけていたのだ。
「長年よ、よくやったぞ!我が方の大勝利じゃ」
尊治はさすがに興奮が抑えきれなかった。
「お上、隠岐守護の佐々木一族は出雲にもおります。それらが攻めてくることも考えられます故まだまだ油断は禁物 にございますぞ」
しかし、名和長年の懸念は杞憂に終わった。
帝方勝利の報は近隣を駆け巡り、近隣の諸将が徐々に尊治のもとに馳せ参じてきたからである。
尊治は、船上山に行宮を設置し、ここから日の本各地に討幕の綸旨を発し始めた。
「ついにきたぞ」
足利高氏は、幕府からの御教書を持って叫んだ。
幕府は、船上山討伐のため、山陽道から名越高家、山陰道から足利高氏を派遣することを決定したのである。
すぐに準備を整え、出陣の運びとなった。
東海道を下っていた高氏は、三河国までくると軍を止め、腹心を集めた。
高師直、師秋、足利直義、足利高経、今川範国、吉良貞義、吉良貞家、上杉憲房、仁木頼章、畠山国清、山名時氏、大高重成ら腹心たちは神妙な面持ちで高氏の前に参集した。
「よいか、皆のもの、心して聞け。
わしは、幕府に反旗を翻す。そこには3つ理由がある。
一つは、現在の幕府では将軍はお飾りであり得宗家が権力を握っている状態である。足利の家は将軍になるに相応しい家柄であるが今の幕府ではそれは叶わない。足利こそ将軍たるべき家であること。
今一つは、元との戦以降、幕府は御家人との約束である御恩を施すことが出来ていない。これには多くの御家人が不満を持っているところである。約束の果たせない幕府は倒すべき存在であること。
そして、一番大切な理由、それは、既述の理由から幕府は日の本を治める力をすでに失っており、世の中は新たな柱を求めている。そのためには現行の幕府は潰さなくてはならない存在に成り下がってしまったことである。
わしは、この日のためにあらゆる打てる限りの手を打ってきた。全ての歯車が上手く噛み合えば必ず幕府は倒すことができる。皆には我が手足となってそれぞれの役割を全うしてもらいたい。
ここまでの話を聞いて、納得できぬものはこのわしを切って捨てよ。私利私欲ではないわしの精一杯の覚悟である」
話を聞いていた腹心たちは、言葉が出てこなかった。
暫時の沈黙を破って口を開いたのは高師直であった。
「殿、我らは常に殿の背中を見て殿に精一杯ついて参りました。それはこれまでもこの先も変わりませぬ。どうか我らをお信じください」
「師直、ありがたき言葉ぞ」
今川範国も口を開いた。
「高氏どの、われら皆足利の血が流れる一族衆でござる。得宗家が権力を握る幕府には我らも愛想が尽きておりました。よくぞ、我らに討幕の意思を打ち明けてくださいました。我らは運命共同体。地獄の果てまでお供しますぞ」
「範国よ、よう申してくれた。頼りにしておるぞ」
「我ら、皆、高氏どのに馳走いたします」
腹心たちは口々に叫び出した。
高氏は、自分たちの勝利を確信した。
山陽道を進んでいた名越高家の前には、楠木正成と同様に、討幕方として挙兵していた赤松則村が立ちはだかっていた。そしてあろうことか、高家は則村に討たれてしまった。
三河を発した高氏軍は、山陰道を進み、帝の腹心千種忠顕が軍を展開している、丹波国の篠村八幡宮に到着した。
そこでついに反幕府の旗を掲げたのである。
しかし、起きてしまったことは仕方がない。
帝が伯耆国の船上山という場所で挙兵したという情報を得ると、自ら出陣し、伯耆国の小鴨元之・糟屋重行らとともに船上山に攻め寄せた。
「今度こそ失敗は許されぬぞ。帝をなんとしても捕らえて隠岐島へ連れ帰るのじゃ!」
一族の、佐々木昌綱・定宗らに宣言した。
佐々木方の兵は3千ほどである。
それに対して、船上山に翻る旗印を見ると、4~5百程度の兵がいるようであった。
船上山は大山の北東の麓に位置し、四方を山に囲まれた天然の要害であった。
佐々木勢は、攻勢を仕掛けたが、佐々木昌綱は右目に矢を受け戦死。搦手側の佐々木定宗は降伏。それらの状況を知らずに、佐々木清高率いる本軍は船上山を攻め上がるも、夕方から降ってきた暴風雨に乗じた帝方の名和軍の襲撃に混乱し船上山の断崖絶壁から多数の兵が落ちるなどの被害をだし、佐々木清高は命からがら逃げ帰っていった。
船上山の実兵力は150人程度であった。
名和長年の策略で、旗を大量に設置し、なんとか数百の兵がいるように見せかけていたのだ。
「長年よ、よくやったぞ!我が方の大勝利じゃ」
尊治はさすがに興奮が抑えきれなかった。
「お上、隠岐守護の佐々木一族は出雲にもおります。それらが攻めてくることも考えられます故まだまだ油断は禁物 にございますぞ」
しかし、名和長年の懸念は杞憂に終わった。
帝方勝利の報は近隣を駆け巡り、近隣の諸将が徐々に尊治のもとに馳せ参じてきたからである。
尊治は、船上山に行宮を設置し、ここから日の本各地に討幕の綸旨を発し始めた。
「ついにきたぞ」
足利高氏は、幕府からの御教書を持って叫んだ。
幕府は、船上山討伐のため、山陽道から名越高家、山陰道から足利高氏を派遣することを決定したのである。
すぐに準備を整え、出陣の運びとなった。
東海道を下っていた高氏は、三河国までくると軍を止め、腹心を集めた。
高師直、師秋、足利直義、足利高経、今川範国、吉良貞義、吉良貞家、上杉憲房、仁木頼章、畠山国清、山名時氏、大高重成ら腹心たちは神妙な面持ちで高氏の前に参集した。
「よいか、皆のもの、心して聞け。
わしは、幕府に反旗を翻す。そこには3つ理由がある。
一つは、現在の幕府では将軍はお飾りであり得宗家が権力を握っている状態である。足利の家は将軍になるに相応しい家柄であるが今の幕府ではそれは叶わない。足利こそ将軍たるべき家であること。
今一つは、元との戦以降、幕府は御家人との約束である御恩を施すことが出来ていない。これには多くの御家人が不満を持っているところである。約束の果たせない幕府は倒すべき存在であること。
そして、一番大切な理由、それは、既述の理由から幕府は日の本を治める力をすでに失っており、世の中は新たな柱を求めている。そのためには現行の幕府は潰さなくてはならない存在に成り下がってしまったことである。
わしは、この日のためにあらゆる打てる限りの手を打ってきた。全ての歯車が上手く噛み合えば必ず幕府は倒すことができる。皆には我が手足となってそれぞれの役割を全うしてもらいたい。
ここまでの話を聞いて、納得できぬものはこのわしを切って捨てよ。私利私欲ではないわしの精一杯の覚悟である」
話を聞いていた腹心たちは、言葉が出てこなかった。
暫時の沈黙を破って口を開いたのは高師直であった。
「殿、我らは常に殿の背中を見て殿に精一杯ついて参りました。それはこれまでもこの先も変わりませぬ。どうか我らをお信じください」
「師直、ありがたき言葉ぞ」
今川範国も口を開いた。
「高氏どの、われら皆足利の血が流れる一族衆でござる。得宗家が権力を握る幕府には我らも愛想が尽きておりました。よくぞ、我らに討幕の意思を打ち明けてくださいました。我らは運命共同体。地獄の果てまでお供しますぞ」
「範国よ、よう申してくれた。頼りにしておるぞ」
「我ら、皆、高氏どのに馳走いたします」
腹心たちは口々に叫び出した。
高氏は、自分たちの勝利を確信した。
山陽道を進んでいた名越高家の前には、楠木正成と同様に、討幕方として挙兵していた赤松則村が立ちはだかっていた。そしてあろうことか、高家は則村に討たれてしまった。
三河を発した高氏軍は、山陰道を進み、帝の腹心千種忠顕が軍を展開している、丹波国の篠村八幡宮に到着した。
そこでついに反幕府の旗を掲げたのである。
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