誰も仲間に入れてくれない補助魔導師はソロで頑張る

Akao

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第十一話

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昼食を済ませたラルズがマオのベッドの上で本を読みながらマオを待っていると、ドアからマオが入ってきて怒ったようにバダンとドアを閉めた。マオの瞳には少し涙が浮かんでいた。その様子にラルズも戸惑う。
「おお、どうしました?」
「・・・パパとケンカした。」
マオが重い足取りでベッドに腰掛ける。マオの話によると、昼食を終わらせて食堂から出た後に呼び止められてラルズにあまりわがままを言うなと言われたようだ。
ラルズには心当たりがあった。昨日の夜、こっそりマオの父のゼミザトと会っていたのだ。
自室に戻ろうとするゼミザトを探してお疲れ気味のところを話しかけたのだが、その内容は『マオを外で遊ばせてもいいのではないか。』というものだ。しかしそれは「貴族の心が育むまで庶民の空気に触れさせてはいけない。これは伝統なのだ。」と一蹴されてしまった。その後も「マオのことを信じてあげましょうよ。」などと食らいつくも取り合ってもらえなかった。
きっとゼミザトはマオが何か言ったのだと思ったんだろう。完全に余計なことをしたとラルズは後悔した。
マオの口から家族の愚痴がダラダラと溢れる。ラルズは適当に相槌を打ちながら聞いていたが、子供なのにここまで愚痴が出てくることが驚いた。
「・・・それでお父様ってばあんまりラルズに甘えるなって言うんだよ!お父様は僕に何もしないのにさ!」
「そうですか。」
「だから僕、『お父様なんかよりラルズの方がいい!』って言ったんだ!」
「・・・ところでマオ様、家族のことは好きですか?」
「嫌い!」とキッパリ言う。
「ふーん・・・。」
ラルズは勝手に嫌な予感がしていた。このままではマオは家族嫌いに育ってしまうだろう。その余計な心配は昨日から感じていて、それが動機でゼミザトに話しかけたのだった。
「それよりさ、外行かしてくれるんだよね!」
「ああ。今日は街近くの村にでも行くきますか。」
「なんで?」
「いつも見てる街と違う景色も見て欲しいし。嫌ならいいですが。」
「嫌じゃない!」
既にラルズはクテッキア村に行こうと決めていた。クテッキア村にした理由は道なりに進めばいいし街からもある程度近いからだ。この付近を知らないラルズでもなんとかなるだろう。

マオはいつの間にかバーダサルト町の門のちょっと遠くの人目のつかない木の影に移動していた。門の兵士に見つからないためだ。慣れてきたのかマオは驚く素振りを見せなかった。
「えっ?村まで瞬間移動しないの?」
「楽するつもりだったんですか?ちゃんと歩け。俺だって大変なんだ。」
「え~~~・・・。」
「わがまま言わない約束しましたよね?それにこうやってただ歩くのも楽しいですよ。」
マオは最初のうちはしぶしぶ歩いていたがだんだんと周りの空気と景色に魅了され足取りが軽くなっていた。それを見たラルズも自然と嬉しくなる。
目的地のクテッキア村は、バーダサルト街と近く他の村と比べて金が動くため街と見紛うほど綺麗な村だ。しかし外観とは裏腹に何故かどんよりとした暗い雰囲気が立ち込めていた。
「あれ?どうなってんだ?」
「なんか変だね・・・。」
不思議がっていると村の老人が話しかけた。
「お客さんかい。」
「ああ。バーダサルトの観光がてら、近くの村でも見て回ろうかと。」
「そうかい。こんなところまで来てくれたのに残念だなあ。」
「何かあったの?」とマオが聞いた。
「一昨日から強大な魔物が住み着いての。その叫び声と獲物を狩る音で村の皆が疲弊しとる。」
その時、遠くから『ギアオオオオン!!!』という魔物の大きな声が聴こえた。村人は『またか。』という表情でそれを聞く。
「あ!ロック鳥!」
「よく分かったねボウズ。」
ロック鳥とは巨体で白い鳥の魔物だ。空を飛びながら上空から獲物を見つけ、狙いを定めて急速落下し仕留める狩りの方法をする。人を襲うことは無いが狩りに成功すると広範囲に響く叫び声を上げる特徴がある。マオは魔物の勉強もしていたので知っていた。
レアな魔物だが人に恐怖を与える習性があるのでたまに討伐クエストが出る。名前と性質だけはラルズも知っていた。
「ロック鳥か。だったら今日にも冒険者が駆けつけるんじゃないか?」
「そうだといいがね。」
すると奥から冒険者パーティらしき4人がやってきた。全員強そうな装備を身につけていてしっかりしていそうだ。4人の中のリーダーらしき男の冒険者が話しかける。
「安心しろ。俺達がそのクエストを引き受けた。」
「そうかい・・・。それなら安心だ。」と言うと村人はその場から去った。
「ねーえ。この子供どっかで見た事ない?マオ様っぽい。」
4人の中の女の冒険者がマオを指さした。ラルズとマオは冷や汗をかいて目を合わせる。
「確かにマオ様に似てるなぁ。でもマオ様はメガネかけてないしなぁ。」
「顔忘れたからピンとこねえんだが、そもそもこんなとこ来れないんじゃねえのか?」
「それもそっか!」と女は納得した。
マオはふと気になったことをラルズに聞いた。
「ねえ、ラルズも冒険者でしょ?一緒に行かないの?」
「ああ、そういうのは・・・。」
「禁止されてるんだ。少年。」と4人のリーダーの男が割って入る。
「なんで?」
「報酬とか獲得レベルとか達成クエスト数とかのとこで問題があるんじゃないですか?多分。」とラルズが補足する。しかしマオはまだ納得いってないようだ。その男はそろそろ討伐に向かおうと振り返ると、男が背中に背負っていた高級そうな弓と腰に携えた矢筒が見えた。
「厄介な相手だから俺らも人手は欲しいんだがな・・・。よし、お前ら行くぞ!」
その言葉を合図にパーティはロック鳥の声のした方に向かっていった。女冒険者が「じゃあね~。」と2人に手を振った。雰囲気の良くない村だと楽しく遊べないだろうと思ったラルズも来た道を戻ろうとする。
「仕方ないからやっぱ街に戻りますか。」
「ラルズ、あの冒険者パーティ見に行こうよ。」
「はぁ?なんでですか?」
「だってロック鳥ってとっても強いんだよ!空飛べるしパワーもタフネスもあるんだ。あいつら死んじゃうかもよ!」
「・・・心配性ですね。ゼミザト様とそっくりだ。」
「なっ・・・!」
ラルズの一言がだいぶ効いたのかマオは固まった。
「あのパーティもロック鳥の危険性くらい分かった上で引き受けて・・・どうしたんですか、石みたいになって。」
「・・・・・・お父様ほどじゃないし!!!」
突然大声を出したマオ。「ちょっと・・・。」と戸惑うラルズに向かってショックを隠すように「ふん!」と言った。

押し問答の末結局ラルズが押し負けて2人でパーティの様子を見に行くことになった。あくまで加勢ではなく様子見という形だが。ロック鳥はクテッキア村の出口から歩いて40分程度の開けた草原で、自らが捉えた獲物を食べていた。ロック鳥の狩りの影響で他の動物は逃げ出しているようで、草原にはロック鳥とそこに向かうパーティのみだ。2人はその様子を遠くの木の影から見ている。
警戒心の高いロック鳥は数十メートル先の4人の冒険者パーティ気付くと飛び立ち、辺りを旋回しながら4人を睨んでいた。すると4人の中の水魔法使いの男が杖をロック鳥に向ける。
「ペニカシア・フォール!」
するとロック鳥の数メートル上の一定範囲から大量の水が勢いよく現れ滝のように降り注いだ。ロック鳥は反応が遅れその水に直撃する。その水は地面につくと消滅した。
魔法使いは大量の魔力に加えて属性を司る神から力を借りる術を持っているため、他の役職より強大な魔法を扱うことが出来る。水の魔法使いはペニッカと呼ばれる水の神の力を借りた。
ちなみに属性の魔法を使わず神に頼らない魔法使いは魔導師と呼ばれ、それは白魔導師、黒魔導師、補助魔導師の3種類が該当する。
ロック鳥は叫びながらなんとか水の範囲から脱するものの、脱した直後はよろめきながらの飛行になってしまう。その隙にリーダーの男がロック鳥目掛けて弓を引いた。
電撃矢サンダーアロー。」
すると矢は電気を帯びる。精密に狙いを定め射出された矢は見事な軌道を描いて羽毛の薄い腹に突き刺さり、ロック鳥が矢の電気で麻痺してうつ伏せに翼を広げて墜落する。
「突撃!」
「行くぜぇ!」
「おっけーい!」
魔法使い以外の3人が4メートルほどの左翼を一斉に攻撃する。まずどちらかの翼を使えなくさせることで飛ばせなくさせる作戦だ。
しかし翼の肉は発達している上に鎧のような羽毛もあって、傷は与えられるものの壊すにはまだ足りない。
攻撃を浴びせ続けるが翼の機能不全には至らずだんだんとロック鳥の身動きが取れるようになってしまった。
「退却!麻痺が切れる!飛び立つぞ!」
「追加の電撃矢サンダーアローは!?」
「駄目だ!羽毛が硬すぎるし唯一刺せる腹も隠れている!」
「クソが!硬すぎんだろ。時間かかるぜ、こりゃ・・・。」
4人が急いで離れると予想通りロック鳥は飛び立った。その勢いは凄まじいもので、離れていた4人を飛ぶ時に発生した風だけで転倒させた。このことを分かっていたため全員離れたのだがそれでも転ばされたくらいに衝撃が強い。ロック鳥は左翼のダメージをものともせずに飛行しながら、4人に獲物を見るかのような眼差しを向けた。

それを遠くから見ていたラルズとマオ。マオは大まかなことしか分からないがラルズは視力上昇魔法サイトバフで鮮明に見えていた。
「対策もしてあるし作戦も立ててる。時間はかかりそうだけど大丈夫そうだな。戻りますよ。」
「まだ分かんないよ!」と食い入るように戦いを見る。
「ああもう、好きなだけ見てればいいですよ。」
ラルズは諦めたように言った。
しばらく戦いを眺めていたマオにラルズがひとつ質問をした。
「そういえばマオ様。あの4人がピンチになったらどうするんですか?」
「もちろん助けるよ。」
「マオ様が助けられるんですか?」
「えっ?」
マオは素っ頓狂に言いラルズに顔を向けた。
「『えっ?』て・・・。ノープランですか?」
「だ、だってラルズが助けるんじゃないの!?」
「俺が?どうやって?そこまで強いと思ってます?」
「・・・。」
マオは閉口した。ラルズは背中を木に預けため息をつく。
「前にもガンガルディアで出来ないこと頼まれたことあるんだがどうして俺に頼む気になるんですか?強いなんて一言も言ってないのに。」
「だって瞬間移動とか手品とかやってて、なんでも頼れそうな感じだから・・・。」
「ふーん。」
思えばアネリにはセヴィルカーナからクエスト用紙をくすねた所を見られていた。だからドラゴンを止めて欲しいなんて無茶なこともできると思わせてしまったんだろう。実際にできたから間違ってないのだが。
「それでどうします?帰りますか?」
「・・・まだいる!」
「分かりました、付き合いますよ。」
マオはきっとパーティがピンチになったら自分だけでも助けに行くつもりなんだろう。良心に溢れた明らかに無茶で馬鹿げた考えなのだが、ラルズはこういう人間を止めることはできないのだ。
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