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1章

13話 領主の仕事? ピクニック?

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「あー暇ぁぁ……ふわぁぁ」

「大きな欠伸をしないでください。仕事中ですよ」

「そんな怒らんといて……」

「では仕事に集中してください」

「いや仕事って……」

机の上には大量の紙……なんてものは無く、俺がさっきまで寝てた証拠となるヨダレが垂れていた。

きったね。

「あの……なんか仕事ないんですか」

「今は特に何も起きてないので、ぐーたら過ごしていいですよ! 領民からも領主が直々に出るような案件はなさそうなので」

うーん、かといってまた寝ようとしたらリーナに怒られるだろうし。

「では領地の外を見て回るのはどうでしょう!? 」

「俺はいいぞ」

「レン様? ただサボりたいだけでは……」

「これはサボりでもなんでもないぞ! 外を視察して危険がないかチェックする。れっきとした仕事だ! 」

「まぁいいですけど、では支度をしてまいります。せっかくのお誘いですしね」 

「やったー! 皆さんでピクニックです! るんるんです! 」

そう言ってリーナとトメリルは領主室から退出した。

俺=領主の仕事。二人=ピクニック。
つまりちゃんと仕事してる俺えらい!

そうだ、せっかくだしトルンとトゥーンも誘ってみよう。

部屋を移動し、トルンの部屋(仮)に行ってドアをノックする。

「おーい俺だけどー」

直ぐにドアが開き、トルンとトゥーンが顔をのぞかせる。

二人とも一緒に居たのか、トゥーンを呼ぶ手間が省けてよかった。

「レン、何か用?」

「ちょっと出かけるんだが、お前らもくるか? トメリルが言うにはピクニックみたいだぞ? 俺は領主の仕事として赴く訳だが」

「いく。待ってて、五分で支度する」

「あはは、ピクニックですか! いいですね!!私も行きたいです! ご迷惑でなければですけど」

「ピクニックに迷惑なんてないぞ。気にせずトルンと支度をしておいてくれ。終わったら玄関に集合してくれな」

「あ、いやピクニックはそうなんですが、あまり大勢で行くと領主としてのお仕事を邪魔しちゃわないかなって……」

そんな真っ直ぐとした気持ちに、後ろめたくなる。 
自分は仕事として、を強調し過ぎてしまった。
ほんとは俺もピクニック気分なんだけどな、わはは。

「仕事がピクニックだ。気にせずに準備をしてくれ」

「へ? 」

「ま、まぁそういう事だから。じゃ」

「ははーそういう事ですか! 私ニブチンでしたね! いつもだらけてるようでだらけてないレン様ですけど、リーナ様の目がある手前、あくまでも俺は仕事として行くアピールってことでしたか!! 」

「バカ!!声がでけぇよ!! 」

「あっ、すいません! 私ったらつい……」

慌てて口をつむったトゥーンちゃん。

まったく……もしリーナがこれ聞いてたらどうすんだよ。ゲンコツ食らうぞ。

「! わ、わたしはぁ……これで一先ず失礼します……ね?  ほ、ほらピクニックですし? おめかししなくっちゃ。トルン様のお手伝いもしますので……すいませんっ!! 後で謝りますからー!! 」

俺の後ろ? を見て焦ったような顔をしているトゥーンちゃんは、早口でそう言うと、物凄いスピードでドアを閉めた。

はて、どうしたんだろうか、と首をかしげた瞬間、足元近くに足元があった?

幽霊、なのかな? 

逆に幽霊であってほしい。いや、幽霊に決まってる。
俺はフラグなんて立ててやいない。

「そうですよ? 幽霊です。ですからこちらを向いてください」

なんてこった、背中の幽霊は俺のメイドさんの声とそっくりだ。

怖くて後ろなんて向けたもんじゃない。後ろ向かなくても背中開眼したら見れるんだけどね。見るの怖いからね。

テ、テレポート。

俺は頭の中でスキルを発動させた。
無事トルンの部屋の前の廊下から、俺の部屋にテレポートできた。

さっきのは幽霊、さっきのは幽霊……。

少し身支度を整えてから、待ち合わせ場所である玄関に向かった。まだ誰も来ておらず、玄関近くの階段に腰掛けて皆が来るのを待っていると、トメリルがやってきた。

「あっレン様! はやいですね」

「んにゃ、はやいっつーても、そろそろ時間だぞ」

トルン達はともかく、リーナが約束の時間ギリギリになるまでやってこないなんて今までただの一度もなかった。

「おめかししてるんですよ! おめかし」

「トゥーンちゃんも言ってたけど、ピクニックくらいでおめかしするもんなのか? しかも本格的なピクニックでもないただの外回りだぞ? 」

「バカですねぇ~。リーナ様の今までの苦労が目に見えて分かります。レン様はこの方面にはからっきしですね」

「何を証拠にドンドコドーン!? 」

「いいですか? 好きな相手とお出かけする時は女の子はおめかしをするんです」

「え、じゃあトメリルも俺の事好きってこと? 」

「ひゃえぇっ!? わ、わわわわわたしはおめかししたい気分だったからしただけです!!! 急にとんでもないこと言わないでください!!!! 」

みるみる顔を赤く染まらせ、ぽかすか叩いてくる。

「ん、おまたせ」

「遅くなってごめんなさい~! 」

なるほど、観察してみると確かに普段とはちょっと違うな。花の髪飾りを二人とも付けていて、初めて見る二人の姿に新鮮な気持ちになる。
なんか双子みたい?

「お待たせしました。って私がビリですか」

「ああ! ぶっちぎりのビリ! 」

言った瞬間、無言でひっぱ叩かれた。
俺ですら捉えられない速度での高速ビンタ。神でも見逃しちゃうね。

「「「「デリカシーがない」」」」

こうしてピクニック……いや、領主としての仕事である外回りが始まったのだった! 俺、不憫!!


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