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2章

15話.いざ

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 《空間転移》を皆の前で披露してみた。
ぶっつけ本番だったので成功するか半信半疑だったが上手くいって一安心だ。

 そしてそれを見た皆は驚いていた。特にミミス国王が。

「なるほどな、《空間転移》か。懐かしい魔法じゃの。妾の現役時代でも扱える者は少なかったが、今だと英雄クラスになってそうじゃな、あくまでも妾の憶測に過ぎんが」

「私の弟子君とんでもない魔法を習得してるんだけど……。バハムートさんが言ってる通り、今の時代じゃまず扱える人は居ないと思う」

「ユリア様、流石です! 」

「ワシ、とんでもないのを目にしたような。聞き間違いじゃよな? 見間違いじゃよな? 」

 バハムートさん、師匠、ミユ、ミミス国王が次々と言う。

 そんなにやばい魔法だったのだろうか、驚き方が異様である。

 今だ後から現れた僕に驚きすぎて腰を抜かしてしまっているユナに手を差し伸べる。

「ありがとうユリア君、心臓に悪いよほんと! 今でもバクバク言ってるもん! ほら」

 手を取って起き上がったユナはそう言い、そのまま僕の手を胸へとやる。

「ほ、ほんとだ、凄いスピードで心臓が動いてるね。なんというかその、ごめん」

 急に胸を触らせられてドギマギしながらも、驚かせてしまったことを謝った。


「と、このような感じで転移ができるようになったので、馬車の準備は大丈夫ですよ。直前の報告になってしまって申し訳ないです」

「それに関しては何も問題はないから心配しないでいい。それよりもその魔法だ! それも君のスキル《クリエイティブモード》が関係してるのかね? 」

「そうですね、なんか使えるようになってました。あはは」

《クリエイティブモード》は多分だがこの世の全てのスキル・魔法を扱える。
その事実を国王に伝えてもいいが、確証がない段階で伝えるのもどうかと思う。

 それに全部のスキル、魔法が使える事が他の人間や国に露見したら、大問題に発展しかねない。

 ミミス国王を信用していないわけではないが、進んで話す必要も無いはずだ。

「その《空間転移》じゃが、あまり人前では使わない方がいいだろう。わずかにワシも今見た物が信じ難いが、君の仲間が言ってたようにその魔法は喪われた古き伝説の魔法、喪失魔法だ。これを使える者が現れたとなると世界中が大騒ぎするだろう。君の命を狙う者、手中に収めようとする者が現れるだろう。君が負けるとは思えないがな、ワッハッハ」

 流石は一国の王様だ。危険性をいち早く見抜き、僕達に危害が及ばないように忠告をしてくれた。

「ありがとうございます、肝に銘じておきます」

「娘を預ける身としてはこれほどまでに心強い者はおらんだろう。娘を、ユナを頼んだぞ。」

 握手をすると、国王はユナを見る。

「ユリア君、そして仲間の方々との学園生活を楽しんでこい、めいいっぱい遊び、学んで、青春もしてこい」

「うん…! ありがとうお父さん! 行ってきます! お母さんも、アリスもメイドの皆も! 行ってきます! 」

 笑顔で手を振っている。

 あれ? アリスとユナのお母さんは見当たらないけどどこだろう。
周りをきょろきょろと探していると、ユナのお母さんらしき人物を見つけた。

 向こうも気づいたのか小さく会釈をしてくる。

 それに答えるようにお辞儀をしておいた。

 すぐ後ろには、銀髪キザ野郎ことアルスさんがこちらを申し訳なさそうに見ていた。

 勘違いで殴りかかったのを覚えているのだろう。
あの場面は誰でも勘違いするだろうし、兄なら尚更だ。

 妹がどこの馬の骨かも分からない男と抱きついていたのだ。
僕がその立場なら同じ行動をしていた。

 こちらも反撃してしまったことを謝っておくべく、頭を下げた。


「そろそろ出発しよユリア君! ずっとここに居たらいつまでも出たく無くなっちゃうから」

「よし、じゃあ出発しようか」

 改めてミミス国王やユナのお母さんーーーこの場合王妃と呼んだ方がいいのだろうか。
ここ数日世話をして頂いたメイドの皆さんや、護衛騎士さんなどにもう一度お辞儀をした。

「お世話になりました! ユナは命に変えても守り抜きます」

 すると、拍手が湧いた。

 頑張ってこい、ユナ様を任せました、頑張ってください、楽しんできてください、ユナ様を幸せにしてください、などなど色んな言葉が送られた。

 それを照れくさそうに笑いながら手を振っているユナ。

「いい最終回だったね~」

「ミユは感動しました! 」

「いやお主ら何を言うておるんじゃ。これからが始まりじゃろて。そうであろう? 」

「そうだね、王女様であるユナを命に代えてでも守らないといけない。もちろん、学園生活も楽しみたいけど」

 呆れたように肩を竦めながら、僕を見るバハムートさんにそう返した。

 さて、そろそろ行こうか。

「では、行きますね」

 声をかけ、辺りを見渡す。
右手の掌を前に向けて、呟く。

「《空間転移》」


 そして次の瞬間には景色が変わっており、薄暗い路地裏に立っていた。

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