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第一章
閑話.目覚めの兆し
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ルミエールが帝都を満喫していた時、離れた場所では一人の男が目覚めようとしていた。
リーン……リーン……。
優しい鈴の音が、暗闇の中で響いている。
男は懐かしさもあり、愛おしさもある気配を感じ取った。
(あぁ、懐かしい気配がする……。)
暗闇の中。一人の男が目を閉じて、大きな寝台に寝転んでいた。
この国では、珍しい黒色の髪。体つきは、女性と間違えそうなくらいに細身だが、良くみると筋肉がついており男らしい部分もある。
この男には、最愛の人が居た。
今でも、あの時の思い出やあの子の笑顔は沢山思い出せる。でも、愛していたあの子は亡くなってしまった……。
自分達は、思いが通じあっており。愛し合っていたと思っていた。だが、あの子はある日を境に自分の事をいきなり避け始めた。部屋まで会いに行っても会えず、途方に暮れていた時だった。会えない理由が分からず、原因を調べている間にあの子はどんどんと痩せ細り。亡くなってしまったと報告を受けたのだ。
あの子が亡くなった日、避けていた原因がやっと分かった。
一人の令嬢と、自分の噂が避けられていた原因だったのだ。その令嬢と自分は密会しており、本当はその令嬢が番なのではないかという噂だった。もちろんその噂は嘘だった。
その令嬢と男は密会なんてしていない。ただ、昔から知っている令嬢というだけだったのだ。
詳しく調べてみると、その令嬢やその家族が噂を流していたと言うことが分かったのだ。
令嬢は、自分に好意を寄せていたそうだ。だから、いきなり現れた番だと言うあの子の事を許せなかったらしい。
あの子にも手を出していたと言うことが、何よりも許せなかった。
あの子が噂を信じる様に、周りの者達にお金を渡して嘘の噂の事を言わせ信じ込ませ。あの子が弱って寝込んでいた時には、侍女に命令して死なない程度の量の毒を食事に入れさせていたらしい。
その毒が積もり積もって、あの子は体調を崩し。どんどんと痩せ細っていったのが原因だと報告を受けた。
それを知った途端、男は目の前が真っ暗になった。
(苦しかっただろう。辛かっただろう。早く……早く気づいてあげれば良かった……。)
あの子を苦しめていた者が、のうのうと生きている事に怒りを覚えた。目の前が真っ暗になった男は、傷つけていた者達の所に直ぐ様転移をし、問答無用で攻撃をした。
(許さない……許さない……。)
憎悪の感情しかなかった。
(殺してしまおうか……。あの子の居ないこの国を滅ぼしてしまおうか……。)
ふと、そんな事を考えた。だが、あの子が過ごしたこの国を滅ぼすことが出来ない。色々な所で、あの子と過ごした記憶がよみがえってくるのだ。
目の前に居るの者達は、怯えた様な表情をしている。だが、あの子が受けたものはこれ以上なのだ。妬みだけで何故、死ななければいけなかったのだ?
そう思うと、感情が分からなくなり涙も。攻撃も止まらない。
騎士団の者達が止めにくるまで攻撃は続いた。
気付いた時には、あの子を陥れた令嬢やその家族。毒を入れた侍女達がボロボロになった姿をしており、怯えた瞳をしながら自分を見ていた。だが、その姿を見ても何も感じなかった……。
最初にあった憎悪も何もなくなり、心にぽっかりと穴が空いて何も考えたくない気持ちだった。
番を失った者は凶暴化し、狂ってしまう。昔、凶暴化した者が暴れまわり国が一つ滅んだことがあった。
あの子が過ごしたこの国で暴れる訳にはいかない……。
あの子の魂が、生まれ変わる間まで眠りにつこうと決めた。
その後の事は、宰相に任せる事にした。
宰相もその事に賛成をした。あの忌々しい奴等は、騎士団の者達に連れていかれてしまった。
あの令嬢やその家族。侍女達がどうなったかなんて知らない。只、宰相もあの子と仲が良かったからあの者達が生きている事はないだろう。
(あれからどれだけ経ったのだろうか。ずっと眠りについていたが、先日からあの子の気配がする。あの子が近くに居る様な気がする……。)
目を閉じながらも、気配を探る。
だが、何かに遮られていてあまり分からなかった。
(あぁ、邪魔だな……。)
この国に漂っていた自分の魔力を、少しだけ強める。
ピシッ
気配を遮っていた物から、壊れた様な音がした。
遮っていた物は完全には壊れていないみたいで、はっきりとは居場所が分からない。
だが、この国の居ることは分かる。
(あの子の気配がこの国でしている……。あぁ! あの子だ! あの子が、生まれ変わったのだ!)
「やっと……。やっと、あの子とまた会える! 」と、思うと嬉しくてしょうがなかった。
(番であるあの子が、この国のどこかにいる。次は、居なくならないようにきちんと守らなければ……。最愛の番よ……。あぁ、寝ている場合ではない。早く起きて、あの子を……リゼリアを探さなければ……。)
男は魔力を強め、邪魔だった結界を壊す。
ピシッ……。ピシッ……。
男の魔力に耐えられずに、この国の者達が張った結界が少しずつ壊れていく音がする。
暗闇の中、愛する人が亡くなってからずっと眠りについていた皇帝……ブラン・ネイジュが今、目覚めようとしていた。
リーン……リーン……。
優しい鈴の音が、暗闇の中で響いている。
男は懐かしさもあり、愛おしさもある気配を感じ取った。
(あぁ、懐かしい気配がする……。)
暗闇の中。一人の男が目を閉じて、大きな寝台に寝転んでいた。
この国では、珍しい黒色の髪。体つきは、女性と間違えそうなくらいに細身だが、良くみると筋肉がついており男らしい部分もある。
この男には、最愛の人が居た。
今でも、あの時の思い出やあの子の笑顔は沢山思い出せる。でも、愛していたあの子は亡くなってしまった……。
自分達は、思いが通じあっており。愛し合っていたと思っていた。だが、あの子はある日を境に自分の事をいきなり避け始めた。部屋まで会いに行っても会えず、途方に暮れていた時だった。会えない理由が分からず、原因を調べている間にあの子はどんどんと痩せ細り。亡くなってしまったと報告を受けたのだ。
あの子が亡くなった日、避けていた原因がやっと分かった。
一人の令嬢と、自分の噂が避けられていた原因だったのだ。その令嬢と自分は密会しており、本当はその令嬢が番なのではないかという噂だった。もちろんその噂は嘘だった。
その令嬢と男は密会なんてしていない。ただ、昔から知っている令嬢というだけだったのだ。
詳しく調べてみると、その令嬢やその家族が噂を流していたと言うことが分かったのだ。
令嬢は、自分に好意を寄せていたそうだ。だから、いきなり現れた番だと言うあの子の事を許せなかったらしい。
あの子にも手を出していたと言うことが、何よりも許せなかった。
あの子が噂を信じる様に、周りの者達にお金を渡して嘘の噂の事を言わせ信じ込ませ。あの子が弱って寝込んでいた時には、侍女に命令して死なない程度の量の毒を食事に入れさせていたらしい。
その毒が積もり積もって、あの子は体調を崩し。どんどんと痩せ細っていったのが原因だと報告を受けた。
それを知った途端、男は目の前が真っ暗になった。
(苦しかっただろう。辛かっただろう。早く……早く気づいてあげれば良かった……。)
あの子を苦しめていた者が、のうのうと生きている事に怒りを覚えた。目の前が真っ暗になった男は、傷つけていた者達の所に直ぐ様転移をし、問答無用で攻撃をした。
(許さない……許さない……。)
憎悪の感情しかなかった。
(殺してしまおうか……。あの子の居ないこの国を滅ぼしてしまおうか……。)
ふと、そんな事を考えた。だが、あの子が過ごしたこの国を滅ぼすことが出来ない。色々な所で、あの子と過ごした記憶がよみがえってくるのだ。
目の前に居るの者達は、怯えた様な表情をしている。だが、あの子が受けたものはこれ以上なのだ。妬みだけで何故、死ななければいけなかったのだ?
そう思うと、感情が分からなくなり涙も。攻撃も止まらない。
騎士団の者達が止めにくるまで攻撃は続いた。
気付いた時には、あの子を陥れた令嬢やその家族。毒を入れた侍女達がボロボロになった姿をしており、怯えた瞳をしながら自分を見ていた。だが、その姿を見ても何も感じなかった……。
最初にあった憎悪も何もなくなり、心にぽっかりと穴が空いて何も考えたくない気持ちだった。
番を失った者は凶暴化し、狂ってしまう。昔、凶暴化した者が暴れまわり国が一つ滅んだことがあった。
あの子が過ごしたこの国で暴れる訳にはいかない……。
あの子の魂が、生まれ変わる間まで眠りにつこうと決めた。
その後の事は、宰相に任せる事にした。
宰相もその事に賛成をした。あの忌々しい奴等は、騎士団の者達に連れていかれてしまった。
あの令嬢やその家族。侍女達がどうなったかなんて知らない。只、宰相もあの子と仲が良かったからあの者達が生きている事はないだろう。
(あれからどれだけ経ったのだろうか。ずっと眠りについていたが、先日からあの子の気配がする。あの子が近くに居る様な気がする……。)
目を閉じながらも、気配を探る。
だが、何かに遮られていてあまり分からなかった。
(あぁ、邪魔だな……。)
この国に漂っていた自分の魔力を、少しだけ強める。
ピシッ
気配を遮っていた物から、壊れた様な音がした。
遮っていた物は完全には壊れていないみたいで、はっきりとは居場所が分からない。
だが、この国の居ることは分かる。
(あの子の気配がこの国でしている……。あぁ! あの子だ! あの子が、生まれ変わったのだ!)
「やっと……。やっと、あの子とまた会える! 」と、思うと嬉しくてしょうがなかった。
(番であるあの子が、この国のどこかにいる。次は、居なくならないようにきちんと守らなければ……。最愛の番よ……。あぁ、寝ている場合ではない。早く起きて、あの子を……リゼリアを探さなければ……。)
男は魔力を強め、邪魔だった結界を壊す。
ピシッ……。ピシッ……。
男の魔力に耐えられずに、この国の者達が張った結界が少しずつ壊れていく音がする。
暗闇の中、愛する人が亡くなってからずっと眠りについていた皇帝……ブラン・ネイジュが今、目覚めようとしていた。
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