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第一章
怪しい二人組
しおりを挟むブランは、民や他国に誰が婚約者なのかは言わず。皇帝から婚約の発表がされ、数日が立った。
ブランは、今度こそルミエールを守りたかった。婚約者を発表をして、また番を失うのが嫌だったのだ。今度こそ、永遠に会えないかもしれないという不安が過っていた。
婚約を発表してからと言うもの、ブランは溜まっていた仕事で忙しく。ルミエールと会う機会が少なくなっていた。
「最近、ブラン様来てないな……」
「おいっ!」
ボヌルに来ていた男性がそう言ったのを、隣に座っていた男性が止めに入る。
「忙しいみたいですね……。」
「まぁ。ブラン様が目覚めて、溜まっていた仕事が沢山あるんだろうな!」
「ブラン様が居なくても、俺達が守ってやるから心配するなよ!」
ルミエールを励まそうと、周りに居た人達は口々にそう言う。
ボヌルに来ていた人達は、ルミエールとブランが婚約をした事が自分の事の様に喜び。優しいルミエールを守ろうと、皆が心の中で誓っていた。
「皆さん、ありがとうございます。」
ルミエールは、ブランが会いに来れなくても寂しいと言う気持ちは無かった。
周りの人達にも支えられ、ブランはルミエールと早く一緒になるために頑張ってくれているのだから。
「……今入っても大丈夫かな?」
ルミエールが喋っていると、お店にフードを目深に被った長身の人と小柄な人が二人入ってきた。
(初めて見る人達。今日は、初めて来店される方が多いわね……)
「いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ」
「あぁ、ありがとう。」
長身の人は声が低く、男の人だと分かった。もう一人の小柄な人は、女の人なのだろう。ハニーブロンドの長い髪が、フードから出ていた。
ルミエールは、男の人の声を何処かで聞いた事がある様な気がした。
(聞いたことがある声……何処だっただろう? リゼリアだった頃かしら? ……思い出せないわ。)
「ねぇ、お姉さん。ちょっと聞きたいんだが、ここに皇帝が来るって本当かい?」
「えっ!?」
「いや、僕も噂で聞いたんだけどね? 皇帝が、街の料理屋に通っていて、そこには皇帝の婚約者が居るかもって……」
(何故!? 何故バレたの? ボヌルに新規のお客さんが来ることなんて珍しいのに! よく来てくれている人達は、誰にも言わないと言ってくれていたわ……)
ボヌルは分かりにくい所にあるからか、あまり知られておらず。殆どが、昔から来ている人達ばかり。
だから、この二人組や。その前に来た、男性三人組は珍しい。
ルミエールが働き初めて少し経つ。よく来てくれる人達の顔は、ルミエールは覚えていた。
「フフッ、そんなに身構えないでおくれ。只、噂で聞いて気になっただけだから」
「……そうなんですね。ですが、ここによくブラン……様は来られますが婚約者の人なんていませんよ?」
ルミエールは、バレまいと長身の男に微笑む。
「へぇ~……そうなんだ」
男の表情は分からないが、声は何処か楽しそうだ。
(ブランが、私の事を知らせていないのは何か理由があるはず。それを、私が軽々しく言ってはいけないわ)
ルミエールがそんな事を思っていると、男の隣に居た小柄な女性が男のマントを引っ張る。
男が女性の方を向く。二人が見つめあった後、男は何か諦めた様な表情をした。
「はいはい。苛めませんよ。」
そんな声が聞こえ、ルミエールは早くその場を離れようとした。
「あっ、これは忠告だ。……その耳飾り、魔法が付与されているみたいだけれど。魔具というのは、何処かに綻びはある。あまり頼りすぎないことをオススメするよ。」
「……忠告ありがとうございます」
ルミエールは男に頭を下げると、そそくさとその場を離れた。
ルミエールが立ち去った後。二人は小声で何かを話していたが、ルミエールは早くその場を立ち去りたくてしょうがなかった。
(民達に知られていない事を知っていたのも可笑しいけらど、何故この耳飾りに魔法が付与されていると分かったの? それに、あの忠告……。)
魔具は、完璧とは言い難い。身に付けなければ効果は出ない。例え、防御魔法を付与していても破られる時だって、魔法を無効化する魔具だってあるのだ。
「ルミ……ル……ルミエール!」
「はい!!」
ルミエールは考え事に集中しすぎて、リゼが呼んでいることに気づかなかった。
怒られると思い。急いでリゼの方を向くと、リゼや周りに居た者達はルミエールを見ながら心配そうな表情をしている。
「ボーッとして、どうしたんだい? 」
「ごめんなさい。」
「今日はもう休むかい?」
「いえ、大丈夫です。注文聞いてきますね!」
ルミエールはそう言うと、リゼから離れ。男性三人組の方へと向かった。
(ダメよ。今は仕事中なのだから、集中しないと……)
「あそこは私が行くからから、向こうのお客さんのお会計してあげな」
リゼが指差した方を見ると、先程の二人組が帰ろうと準備している所だった。
ルミエールは仕事だからと思い、二人に近づいていく。
「あぁ、お姉さん。お会計お願い出来るかな?」
「……はい。」
「ハハッ。そんなに警戒しないでおくれ。」
(あんな事言われて、警戒しない方が可笑しいわ……)
ルミエールが男に警戒していると、隣に居た女の人がルミエールに近づいて来て、何故かルミエールを抱きしめた。
ルミエールが唖然としていると、女の人はルミエールから離れ。店を出ていってしまった。
「フフッ。じゃぁね、お姉さん。」
男も後を追うように、店を出て行った。
……数日後、ルミエールが着けていた耳飾りが道端で見つかり。
ルミエールが居なくなったと、言う知らせがブランに届いたのだった。
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