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11~20話
助けて、助けられて【中】
しおりを挟むガチャッ
『部屋』のドアの開く音を聞いて、駆け足で玄関に向かう。
パタパタパタ……ガパッ
「クロ!」
「ヒナ、起きたか。おはよう、体調はどうだ?」
目が合ったクロは、いつも通りの険しい表情ながらも穏やかな瞳で私の体調を案じてくれる。
――ああ、ダメ。油断したら泣いてしまいそうだ。
飲み込まれそうな暗闇の中に見る、温かな家明かりのような。
何一つ見知らぬ世界の中で、自分の名前を呼び、心配してくれる相手のいることが、こんなにも安心することだなんて知らなかった。
「おはよう、ございます…………。っん、ちょっと頭が重いけど、他はなんともないですっ! それより昨日はすみませんでした! せっかくお食事に誘ってもらったのに、とんだ醜態を晒しちゃって……」
「ずいぶん可愛い『醜態』だったな。あんな醜態ならいくらでも歓迎――と言いたいところだが、足元が危うかったからな。今後酒は三杯までにしておこう」
「はーい……」
縮こまるほど恥ずかしいけれど、期待してしまう。
それはまた、一緒に食事する機会があるということだろうか。
「ヒナ、ちょっと見てくれるか?」
「?」
招くように差し出された手のひらに乗れば、ローテーブルの上へと運んで降ろされた。
クロもソファに座り、手にしていた小さな紙袋の中身をローテーブルに広げる。
「これなんだが……」
「わぁ、お洋服がたくさん!」
私サイズと思われる服が、一、二、三、四、……十三着も!
「人形用の衣装ですまない。取り急ぎ、ヒナに合いそうなサイズの既製品を揃えさせたんだ。何か着られるものがあればいいが……。きちんと採寸を済ませたら、ヒナ専用の服もオーダーしよう」
「うわぁー、うわぁー! これとかどうです? 似合いますか?」
フリルのついたチュニックや、動きやすそうなキュロット。目移りしながらも花柄のワンピースを手に取ると、肩に当ててクロを見上げた。
「ん゛ん゛っ――間違いない」
「??」
どういう種類の感想だろう?
あ、そういえばクロは目が悪いんだっけ。
「こんなにたくさん、ありがとうございます! どれもとっても可愛いです!」
「ああ、喜んでもらえたのならよかった」
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