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41~50話

まだちっちゃい!?【下】

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「…………」

 部屋にクロと二人。
 変化魔法が使えないはずの城内で姿を保てていることを考えれば、たしかに私の大きさはこれで合っていたようだ。残念ながら……。

 クロは大きくなった私を見て、どう思っただろうか。
 そろりと振り返ると、クロが愕然がくぜんとした表情でこちらを見下ろしていた。

「クロ……あの、私……」

「大きくなったヒナが小さい……。可愛すぎる……」

「えっ?」

 一瞬自分に都合のいい言葉が聞こえた気がしたけれど、そんなはずはないと考えを打ち消す。
 深刻そうな顔をして何を言ったのかと聞き返せば、クロは上体を屈め、私の頬に手を添えてじっくりと顔を覗き込んだ。

 今までは大きさが違いすぎて、クロの整った顔を寄せられてもどこか美しい彫刻を間近に眺めているような気持ちだった。
 しかしこうして同じ人間サイズになってみると、格好いい男の人に鼻先が触れそうなほど顔を寄せられているという状況が、今さらながら恥ずかしくなってくる。

 クロは真剣な面持ちで熱を集めはじめた頬に手を滑らせ、摘まんだ耳をすりすりと撫で、髪に指を差し入れて地肌の頭部に触れた。

「んっ……」

 首筋に指を添え、つうと鎖骨まで撫で下ろされてぴくりと肩が跳ねる。
 私は裾を引きずるほど大きなロングジャケットにすっぽりと呑み込まれていて、頭と首元しか出ていないのだ。

 ジャケット越しの両肩を掴んだクロは、肩から腕の先まで中身が入っていることを確かめるようにきゅっきゅっと触れ下りる。
 手首まで下りて納得したように一つ頷くと、そのままひょいと私を抱き上げた。

「?」

 今の私の大きさであれば、運んでもらわなくても自力で移動できるのに。

 クロはソファに腰を下ろすと、脱ぎ散らかしたままになっていた『小さな私』の服をちょいちょいと畳んでローテーブルに置き、それをクッション代わりに丁重におじいちゃんのカプセルを乗せる。
 私はといえば、クロのももを跨ぐように向かい合わせに乗せられて、恥ずかしさに顔を上げられずにいた。

 だって手のひらの温かさだけじゃない、クロのすべてを感じるのだ。

 ローテーブルへ手を伸ばすたび抱き込まれる格好になって、クロの香りと温もりが私を包む。
 髪にかかる息遣いも、呼吸に合わせて上下する胸も、お尻の下に敷いた筋肉質な脚の硬さも、全身で、五感すべてでクロを感じる。

「ヒナ」

 落ち着いた低音が鼓膜を揺らし、隠すすべもなくゆるゆると赤い顔を上げた。
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