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41~50話

飴だったら消えてた【上】 ※

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 ささやかな膨らみが、やんわりと包み込まれる。
 胸を包んで余りある手のひらは力加減を量りかね、ことさら慎重に柔肉をねた。

「……、んぅ……」

 『揉めば大きくなる』という噂を信じて自分で試してみたときには、何も感じなかったというのに。

 手のひらから流れ込む、温かな流入。優しい指の動きに肌がサワッと粟立って、もう少しで何かに触れそうなもどかしさが広がる。

「やわらかいな……」

 感嘆するような呟き。
 やわやわと動き続ける手のひらとは対照に、視線はじっと胸へ注がれたまま微動だにしない。

 そんなに熱心に見つめられては、元々少ない胸がさらに減ってしまいそうだ。

「やっ、そんなに見ちゃ、ダメ……です」

「なぜだ? 一人占めしないでくれ」

 自分の身体を一人占めするなとはとんだ言いがかりである。
 話しながらも動かないクロの視線を追ってみれば、白くやわらかな胸を節くれ立った指がもてあそぶ、なんとも淫猥いんわいな光景があった。

「っ、胸、おっきくないのに……」

「ああ。小さくて、可愛くて、やわらかくて……何もかも俺とは違う、ヒナの身体だ。愛おしくてたまらない――」

「ひぁっ!」

 熱い吐息が胸をくすぐったかと思えば、ぱくりと先端をまれた。

 「胸も甘いな」などと呟きながら、控えめに主張しはじめた頂きを舌先でくにゅりと押し潰す。
 唾液でにゅるんっと滑り、再び舌を絡められ。

「やっ、んん、ん……っ」

 ざらついた舌の表面で撫でられるたび、腰の辺りからぞわりぞわりと甘い痺れが這い上がってくる。

 軟体動物が張りついて、その場でにゅるにゅるとうごめいているかのような。
 自分では操縦できないの動きに翻弄されて、無意識に腰が揺れる。

 押し返そうとしたのか抱きしめようとしたのか、自分でもわからないまま、両手でくしゃりとクロの髪を乱す。
 ぴちゃ、という音に知らず瞑っていた目を開けば、美味しそうに胸を頬張るクロと視線が合った。

「うぅぅ……」

 いつも険しい顔をして、人のためには自己犠牲をも厭わない、真面目で愛情深いクロが。
 今は赤子のように頂きをくわえ、熱心にちゅぱちゅぱと吸い上げている。

「ん、ふぁっ……あ、っ」

「っは、気持ちいいか?」

 話しかける呼気でさえ、充血した先端をくすぐる刺激となって熱を煽る。

 恥ずかしさに否定したくなるけれど、熱を蓄えた真剣な眼差しに見つめられると心まで裸にされてしまったような心地がして。
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