上 下
66 / 486
11~20話

16c、私はこの国をわかっていない

しおりを挟む
 魔力が多いほど瞳の色が赤に近くなる?
 それならこの、燃え盛る炎のような瞳をしたガルは……

「ガリュースの魔力量は信じられないくらい多いよ」

 じっとガルの瞳を見つめると、大きな手の平が優しく髪を撫でてくれた。

「大抵の者はこの目を恐れる」

 そう言ったガルがどこか悲しそうに見えて、私も腕を伸ばし、そっとガルの頬を撫でた。

 こんなに綺麗なあかなのに。


「違いは……それだけ、ですか?」

「まあ性格や考え方などに多少違いもあるが、大きなものはそれくらいだな」

「その……ツノが出たり、人を食べたりは……?」

「? なんだそれは」

「マヤちゃん、それって悪魔か何かと混同してねえ? 確かに人族の中には魔族を悪魔の子孫だっつー連中もいるけどさー、眉唾もんだぜ? 魔族も人族もほとんど変わりはねえから」

「ほとんど変わりない……」

「ああ。それに例えどんな違いがあろうとも、決してマヤを傷つけることはしないと誓う」

 射抜くような真剣な眼差しに捉われる。
 そこに見えるのは、奴隷として買った私に対してさえ真摯に向き合おうとするガルの誠実さと優しさ。


 ……

 なんだ……

 なーんだ!

 なんのことはない。やっぱり、ガルはガルではないか。

 唐突にガルが人間ではないと聞かされたことで、今までが騙されていたような、寄せていた信頼が裏切られたかのような、覚束ない気持ちになってしまっていた。

 でも、変化して姿を偽っていたわけでもなければ、本性を隠し私を食らおうとしたわけでもない。
 元の世界でだって、国が変われば人種も変わるのだ。それらと何も変わりないではないか。

 私は何も、騙されてなんかいなかった。

 もちろんガル達の話が100%真実かはわからないけれど、ガルが魔族だったからといって今まで与えられた優しさが消えてなくなるわけでもない。

 むしろこの世界の人族は奴隷商人達としか関わっていないので、人族のイメージの方が悪いくらいだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

女學生のお嬢さまはヤクザに溺愛され、困惑しています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:686

足音

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:12

βの花が開くまで(オメガバース)

BL / 連載中 24h.ポイント:205pt お気に入り:1,336

異世界ライフは山あり谷あり

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:688pt お気に入り:1,554

【R18・完結】忍者です、初仕事は獣人のペットでした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:213pt お気に入り:21

【完結】一夜を共にしたからって結婚なんかしませんから!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:262pt お気に入り:3,707

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,499pt お気に入り:4,185

処理中です...