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11~20話
19a、私は起こった出来事をわかっていない
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インクを付けては、ゆっくりと慎重にペンを動かす。
「……ース、バ、ド、ア……っと。出来た!」
私は書き物机の上にペンを置くと、ぐーっと伸びをした。
最近ではガルが仕事へ行って留守の間、貰った絵本を見ながら文字の読み書きを練習するのが日課になっている。……だって他にやることもないし。
この国の言葉は平仮名のように一音に一字なので、80ほどある文字さえ全て覚えれば理屈上はどんな本でも読めるようになるのだ。
特に目的があるわけでもないけれど、まあ文字が読めるようになって困ることはないだろう。
……ダダダダダ
勢いよくこちらへ向かう足音が聞こえてくる。
ぴょんと不安定な椅子から飛び下りると、釣られてトサトサと積み上げたクッションが転げ落ちた。
バタンッ
「マヤ!」
「ガル様、おかえりなさい」
駆け寄ればすぐに抱き上げられる。
「ただいま、マヤ」
ガルは抱き上げた私のこめかみにキスを一つ落とすと、そのまま期待を込めた瞳でこちらを見つめてくる。
「ぅ……」
ちゅっ
毎日のことなのでもうガルのお強請りに敵わないと知っている私は、大人しくその瞳に従って頬にキスを返した。
お返しのお返しとばかりに、今度はおでこにキスされる。
……ガルは見かけによらずキス魔だ。
「……ース、バ、ド、ア……っと。出来た!」
私は書き物机の上にペンを置くと、ぐーっと伸びをした。
最近ではガルが仕事へ行って留守の間、貰った絵本を見ながら文字の読み書きを練習するのが日課になっている。……だって他にやることもないし。
この国の言葉は平仮名のように一音に一字なので、80ほどある文字さえ全て覚えれば理屈上はどんな本でも読めるようになるのだ。
特に目的があるわけでもないけれど、まあ文字が読めるようになって困ることはないだろう。
……ダダダダダ
勢いよくこちらへ向かう足音が聞こえてくる。
ぴょんと不安定な椅子から飛び下りると、釣られてトサトサと積み上げたクッションが転げ落ちた。
バタンッ
「マヤ!」
「ガル様、おかえりなさい」
駆け寄ればすぐに抱き上げられる。
「ただいま、マヤ」
ガルは抱き上げた私のこめかみにキスを一つ落とすと、そのまま期待を込めた瞳でこちらを見つめてくる。
「ぅ……」
ちゅっ
毎日のことなのでもうガルのお強請りに敵わないと知っている私は、大人しくその瞳に従って頬にキスを返した。
お返しのお返しとばかりに、今度はおでこにキスされる。
……ガルは見かけによらずキス魔だ。
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