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31~40話
32c、私は口付けの先をわかっていない
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「…………」
ああ、早く答えなくては。
早く。ガルが『やっぱり今のは気の迷いだった』なんて思い直してしまわないうちに、早く。
「……っ…………」
はくはくと口を開いても、あふれ出す感情が喉を塞き止め声が出てこない。
代わりにぱたぱたと、ワンピースの裾に水滴の落ちる音がした。
ゆっくりと視線を上げ私の涙を捉えたガルの表情が、ザァッと絶望に染まる。
「……マヤ……」
待って、違う。違うのに。
ガルの言葉に、苦しんでいるわけではないの。
伝えなくては。
ちゃんと、声に出して。私の気持ちを。
「っ……き、で……」
私の声に、ビクリとガルが反応する。
「すきっ、で……っ」
嗚咽に震えそうになる声を、無理矢理抑えつけて絞り出す。
「わっわたし、も……っ、ガルさまが、すきですっ……!」
滲む視界に必死にガルを映す。
「すき……、すきなんです……」
好きだから。
ガルのことが好きだから、何に換えても側にいたかった。
その腕の中にいられるのなら他には何もいらないと、そう思っていた。
そのガルが、私を愛していると言う。
結婚し、一生を共に生きたいと言う。
親にすら愛されない私のことなど、誰も愛するはずがないと思っていたのに。
温かな涙が次から次へとあふれては頬を濡らす。
ああ、早く答えなくては。
早く。ガルが『やっぱり今のは気の迷いだった』なんて思い直してしまわないうちに、早く。
「……っ…………」
はくはくと口を開いても、あふれ出す感情が喉を塞き止め声が出てこない。
代わりにぱたぱたと、ワンピースの裾に水滴の落ちる音がした。
ゆっくりと視線を上げ私の涙を捉えたガルの表情が、ザァッと絶望に染まる。
「……マヤ……」
待って、違う。違うのに。
ガルの言葉に、苦しんでいるわけではないの。
伝えなくては。
ちゃんと、声に出して。私の気持ちを。
「っ……き、で……」
私の声に、ビクリとガルが反応する。
「すきっ、で……っ」
嗚咽に震えそうになる声を、無理矢理抑えつけて絞り出す。
「わっわたし、も……っ、ガルさまが、すきですっ……!」
滲む視界に必死にガルを映す。
「すき……、すきなんです……」
好きだから。
ガルのことが好きだから、何に換えても側にいたかった。
その腕の中にいられるのなら他には何もいらないと、そう思っていた。
そのガルが、私を愛していると言う。
結婚し、一生を共に生きたいと言う。
親にすら愛されない私のことなど、誰も愛するはずがないと思っていたのに。
温かな涙が次から次へとあふれては頬を濡らす。
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