ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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51~60話

54a、ご主人様は私の想いをわかっていなかった

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これは賭けだった。

そんなことをしそうには見えなくとも、愛玩奴隷から逃れたいがために口八丁俺を欺こうとしている可能性もゼロではない。
契約の首輪を外した途端、これ幸いと逃げ出すのかもしれない。

それでも賭けてみたかった。
俺と共にいたいと言ってくれたマヤの言葉に。
もし騙されることになるのだとしても、最後のその瞬間まで、幸せな嘘を信じていたかった。



とっぷりと日も暮れた頃、急く気持ちを抱えて屋敷の階段を駆け上がる。

バタンッ

「マヤっ」

「ガル様! おかえりなさい」

「ああ、ただいま」

愛しい愛しい存在を腕に抱き上げ、口付けを一つ。
ソファへと歩を進めれば、ローテーブルの上に並んだ皿が目についた。

「ん? マヤはまだ夕食を食べてないのか」

「あ、えっと、ガル様と……」

マヤがもじもじと言い淀む。

「俺を待っていてくれたのか? ああ、本当に……」

どこまで愛を募らせればいいんだ。

俺抜きで食事を終えられることなど、とうに慣れていたはずなのに。
俺の帰りを待っていてくれる相手のいることが、こんなにも嬉しいだなんて。

抑えきれない愛しさのまま再びマヤに口付けを落とす。

「マヤ、腹が空いている所悪いが、先に大事な話を聞いてくれるか?」

懐にしまった小さな革袋がそわそわと落ち着かない気持ちにさせる。
このままでは食事など手につくはずもなかった。
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