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61~70話

65c、ご主人様は人目をわかっていない2

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あてもなくぶらぶらと店先を覗いて回れば、時折顔を上げて店を眺めている気配は感じるものの、声をかければまたぐりりと顔を埋めてしまう。
これは本格的にへそを曲げさせてしまったようだ。

俺の行動に腹を立てながらもぎゅうと俺にしがみつくマヤが愛しくて愛しくてたまらないのだが、今それを指摘すれば益々機嫌を損ねるだけだろう。



屋敷で夕食を終え部屋に戻ってもまだ、マヤの下唇はむぅと突き出されていた。

「マヤ、俺が悪かった。どうか機嫌を直してはくれないか?」

ソファに座り憮然と腕の中に収まるマヤの唇をちょんと突つけば、マヤが口を開いた。

「…………ガル様は! 人目を気にしなさすぎなんですっ!」

「ああ、すまない。マヤを婚約者として連れ歩けることが嬉しくて、浮かれていたんだ」

「なっ! そっ、…………うぅ……」

二の句が継げず黙り込んでしまったマヤの熱い頬に手を添え、そっと上向かせる。
表情を窺いながらゆっくりと顔を近付けても嫌がる素振りはなかったので、そのまま愛らしい唇に口付けを落とした。

「んっ……ぅ……、っはぁ」

「っは……マヤ、覚えていてくれ。俺はいつでもマヤに触れていたくてたまらないんだ」

「……時と場所は、気にしてくださいね」


いつもにように風呂に入り、共寝する。
それですべて、赦されたと思っていたんだ。

次の日の晩、あんなことを言われるまでは。



「ガル様、今日のお風呂は一人で入りたいです」



————————————

■あとがき■

これにてガル様視点による振り返り終了です。
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