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71~80話

72d、メイド長はご主人様の嗜好をわかっていない3

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「……『18歳』といいますと、生まれてから18年の……?」

私の礼を欠いた問いかけにマヤ様がこくりと首肯されるのを見て、血の気の引く思いで深く腰を折ります。

「申し訳ございません。とんだ思い違いで、マヤ様には大変なご無礼を」

今回の余計な口出しに限らず、今までも無意識に幼い子供に接するような態度をとってしまっていたかもしれません。
人族が魔族に比べて小柄なことは知識として知ってはいましたが、まさかマヤ様がとっくに成人されているご年齢でいらしたなんて。

ガリュース様の行いに疑念を抱いてしまったことに対しても、自責の念が込み上げます。

「えっ、いえいえ! なんにも失礼なことなんてされてないですよ! ……心配してくれて、嬉しかったです」

優しいお言葉にゆっくりと顔を上げ、温かな気遣いのこもった笑顔に釣られて小さく微笑みを返します。

「お心遣いありがとうございます。また何かございましたら、いつでもお呼びください」

静かに一礼し、部屋を辞しました。


足早に執事室へと向かいながら考えます。
本来、主人やお客様に関することなど、使用人かんであっても無闇に口にするものではありません。ですが今回の場合においては、誤解を解くためにも早急に対処した方がよいでしょう。

経緯は伏せ、マヤ様のご年齢を伺った件についてのみ執事長へと申し伝えます。
執事長にとってもやはり驚きが大きいのか、しばし逡巡のち、使用人全体へ伝えるようにとの指示が下されました。

「8も18も大して変わらんだろう!」と豪快に笑い飛ばす料理長はさておき、執事長をはじめとするほとんどの使用人が愕然とその事実を受けとめ、マヤ様への認識を改めたようでした。

しかしながらマヤ様が幼くないと知ったところで、そのお優しさや愛らしさ、朗らかな空気感は何一つ損なわれるものではありません。

そうしてその日の内にすべての使用人の誤解が解かれると、今度こそ皆、心からお二人のご婚約を喜んだのでした。
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