偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!

南田 此仁

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4b、ネモフィラの海と結界魔法

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「なるほど……。そんならこの森で命を落としたとでも思っといてもらったほうが安全ですね」

「そうね……——そうよ! 私が張った結界を解除しておかなくっちゃ!」

 特殊な魔導具で維持される王国の結界とは違い、通常は結界の発現者が死ねばその結界も解除される。
 逆に言えば、結界を解除することで私が死んだと思わせることができるかもしれないのだ。

 さっそく手を組み合わせて目を閉じる。

「————よし、全部解除できたわ!」

「そんじゃ、ここに根を張る準備をはじめますか! つっても斧は持参していないんで、剣とナイフだけで家を組むのにゃかなりかかると思いますが」

 ダーナンは笑顔で私の提案を受け入れてくれる。
 先ほどだってそうだ。魔獣の森に入ってほしいという無謀ともいえる要求を呑み、私を信じて真っ直ぐに突っ込んでくれた。
 私のすべてを信じ肯定してくれるダーナンに、今まで何度救われてきたことか。

「家のことなら心配いらないわ。ちょっと待ってね」

 ネモフィラのまばらな一角に目をつけると、座り込んで手を組み、まぶたを閉じてしっかりと祈りを捧げる。

 キッチン……、ダイニング……、それぞれの私室に、寝室……、浴室もいるわね……。

「————できた! どうかしら!?」

「はぁ……。なんかその辺が、うっすら光ってんのは見えますが」

「あっ、透明なままだったわ!」

 慌てて光を通さない結界も足しておく。
 再び目を開ければ、そこには真っ白な一軒家が建っていた。

「どう!?」

「……なんですか、こりゃあ……」

 ダーナンは驚きにあんぐりと口を開けたまま、ふらふらと一軒家に歩み寄る。

「結界魔法よ。独自に改良を重ねたの!」

 ダーナンと私の二人しか通さない結界をベースに、空間を隔てる結界で細かく部屋を区切って、すべての壁に光を通さない効力を重ねた自信作だ。

「結界魔法ってのはこんなことができるんですか……」

「私以外にやっている人を見たことはないけれどね。時間ならたっぷりあったから、結界の可能性について模索していたの。……以前、お城の周囲に『悪意のある人間を通さない結界』を張ったときには、ほとんどの貴族が入城できなくなっちゃってものすごく怒られたわ。改良して張り直したのだけど」

「そいつぁなんとも……」

「さあ、とりあえず中に入ってみましょ!」
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