26 / 115
11~20話
理想のあなた【下】
しおりを挟む
当のディノは勝手にばらされたことが不服らしく、むっすりと口を引き結んでそっぽを向いている。
「ってことは、デリカシーが欠如してるのも何か意味があって……?」
目を丸くして問いかける私に、シフォルはにっこりと笑って言った。
「残念ながら、それについては本人の資質でしょうね」
感心して損した!!
「……あら? でもそれなら、シフォル副長は振る舞いを変えなくていいの? 反感を買っちゃうんでしょう?」
「僕の場合は、ほら――」
シフォルが優雅な動作でコクリと紅茶を飲む。
「?」
「この容姿に似合わないでしょう?」
「たしかに……!」
「っはぁーーーーー! よく働いたわ!」
両手を上げてぐーっと伸びをする。
「今日は一日ありがとうな。おかげで急ぎの書類は全部片付いた」
「まあ、私もどうせ暇だったから構わないわよ。手は痺れてるけどね!」
街灯に照らされる街並みを窓の外に見ながら、揃ってディノの屋敷へと帰る。
出勤前にディノが伝えておいてくれたこともあり、二日連続で泊まりにやってきた私を使用人たちは快く迎え入れてくれた。
本日何度目かのトイレに行って精神を根こそぎすり減らしたあとは、美味しい夕食で気分一新だ。
「んんーっ、美味しいっ!」
やっぱりここの食事は美味しい。
そもそも食材からしていいものを使っているようで、塩とオリーブ油をかけただけのサラダですら実家とは全然違う。
そこに料理人の技術が加わった『料理』ともくれば、ほっぺたが落ちそうなほど。
大きめに切り分けられた牛肉をもっぎゅもっぎゅと味わっていると、こちらを見つめるディノと目が合った。
「むぐぅ?」
「いんや、ヤマリスみてぇだなと思って」
「んむむんむぅーっ!」
人が気分よく食事しているときに、相変わらずこの男はーーーーっ!!
私は手にしたフォークでディノの皿の肉を突き刺すと、これ見よがしにばくりと頬張った。
食事を終えれば、目隠しをしたディノとともにお風呂タイムだ。
「……ねえ、昨日のアレは『遠征で溜まってた』って話じゃなかった?」
「そうだな」
「なのになぜか、今日も座り心地が悪いんだけど!?」
浴槽の中、あぐら座のディノの上で、私はまたしても巨塔とポジション争いを繰り広げていた。
分厚い筋肉を背もたれに寄りかかろうとすると、腰のあたりをぐいぐいと押し返してくるのだ。
「まあ気にすんな」
「気になるわよ! んもーっ!」
お尻でぐりぐりと押しては、ぐいぐいと押し返される。
なんという力強さだ。急所のくせに。
「とっとと慣れたほうが身のためだぞ。明日以降も確実にこうだ」
そんな……!
巨塔との共存の道しか残されていないなんて……!
「ってことは、デリカシーが欠如してるのも何か意味があって……?」
目を丸くして問いかける私に、シフォルはにっこりと笑って言った。
「残念ながら、それについては本人の資質でしょうね」
感心して損した!!
「……あら? でもそれなら、シフォル副長は振る舞いを変えなくていいの? 反感を買っちゃうんでしょう?」
「僕の場合は、ほら――」
シフォルが優雅な動作でコクリと紅茶を飲む。
「?」
「この容姿に似合わないでしょう?」
「たしかに……!」
「っはぁーーーーー! よく働いたわ!」
両手を上げてぐーっと伸びをする。
「今日は一日ありがとうな。おかげで急ぎの書類は全部片付いた」
「まあ、私もどうせ暇だったから構わないわよ。手は痺れてるけどね!」
街灯に照らされる街並みを窓の外に見ながら、揃ってディノの屋敷へと帰る。
出勤前にディノが伝えておいてくれたこともあり、二日連続で泊まりにやってきた私を使用人たちは快く迎え入れてくれた。
本日何度目かのトイレに行って精神を根こそぎすり減らしたあとは、美味しい夕食で気分一新だ。
「んんーっ、美味しいっ!」
やっぱりここの食事は美味しい。
そもそも食材からしていいものを使っているようで、塩とオリーブ油をかけただけのサラダですら実家とは全然違う。
そこに料理人の技術が加わった『料理』ともくれば、ほっぺたが落ちそうなほど。
大きめに切り分けられた牛肉をもっぎゅもっぎゅと味わっていると、こちらを見つめるディノと目が合った。
「むぐぅ?」
「いんや、ヤマリスみてぇだなと思って」
「んむむんむぅーっ!」
人が気分よく食事しているときに、相変わらずこの男はーーーーっ!!
私は手にしたフォークでディノの皿の肉を突き刺すと、これ見よがしにばくりと頬張った。
食事を終えれば、目隠しをしたディノとともにお風呂タイムだ。
「……ねえ、昨日のアレは『遠征で溜まってた』って話じゃなかった?」
「そうだな」
「なのになぜか、今日も座り心地が悪いんだけど!?」
浴槽の中、あぐら座のディノの上で、私はまたしても巨塔とポジション争いを繰り広げていた。
分厚い筋肉を背もたれに寄りかかろうとすると、腰のあたりをぐいぐいと押し返してくるのだ。
「まあ気にすんな」
「気になるわよ! んもーっ!」
お尻でぐりぐりと押しては、ぐいぐいと押し返される。
なんという力強さだ。急所のくせに。
「とっとと慣れたほうが身のためだぞ。明日以降も確実にこうだ」
そんな……!
巨塔との共存の道しか残されていないなんて……!
応援ありがとうございます!
29
お気に入りに追加
332
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる